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気候変動:死亡率シナリオの作成-気候変動の経路に応じて日本全体の将来死亡率を予測してみると…

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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第2節では、2081-2100年の死亡数について、気候変動なしからSSP1-2.6への増減率が+0.4%、SSP1-2.6からSSP5-8.への増減率が+2.0%との結果であることを示した。本節以降では、これらの増減率について、死因、年齢群団、月、地域区分のそれぞれについて、要素に分けて見ていく。
まず、死因ごとに見てみよう。気候変動なしからSSP1-2.6への増減率は、外因(熱中症含)で大きい。SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減率は、呼吸器系疾患、異常無(老衰等)、外因(熱中症含)で大きい。新生物では、2つの増減率はいずれもマイナスとなっている。新生物の減少よりも異常無(老衰等)の増加が大きく、これが全死因での増加につながっているものとみられる。男女別にみると、男性でこの傾向が顕著となっている。

5|年齢群団別 : SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減では、85歳以上のどの年齢群団も死亡数が増加
次に、年齢群団別に見ていく。気候変動なしからSSP1-2.6への増減率は、10-14歳、60-64歳、65-69歳で大きい。一方、SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減率は、10-14歳、70-74歳、95-99歳、100歳-で大きい。特に、全年齢の死亡数に占める割合が大きい85歳以上の高齢層ではどの年齢群団も死亡数が増加しており、これが全年齢での増加につながっているものとみられる。男女別に見ると、20歳代から50歳代にかけて、SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減率が男性はプラス、女性はマイナスとなる年齢群団が多い。

続いて、月別に見てみる。気候変動なしからSSP1-2.6への増減率は、3月、5月、6月に大きい。11月と12月は減少となっている。一方、SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減率は、3月、10月、11月、12月に大きい。SSP5-8.5の経路で推移すると、春先や秋から冬にかけて、死亡数が大きく増加する可能性があることを示している。なお、夏季は気候変動の影響を比較的受けないとの結果となった54。男女別に見ると、男性は夏季、女性は秋季から春季にかけて気候変動の影響を受ける傾向が見られる。

54 回帰式の学習データ(実績データ)の特性から、熱中症による死亡はあまり反映されていないことが考えられる。
7|地域区分別 : 関東甲信は、気候変動の影響が他の地域に比べて小さい
続いて、地域区分別に見てみよう。気候変動なしからSSP1-2.6への増減率は、関東甲信や東海でやや小さく、北海道、九州南部・奄美、沖縄で大きくなっている。一方、SSP1-2.6からSSP5-8.5への増減率は、関東甲信、九州南部・奄美、沖縄で小さく、東海、中国、四国で大きいとの結果であった。日本全体の死亡数に占める割合が大きい関東甲信や近畿では、気候変動の影響が他の地域に比べて小さい傾向がうかがえる。大都市に比べて地方では高齢化が進むなど、地域区分ごとに年齢分布が異なってくることが、その要因の1つとみられる。男女別に見ると、こうした傾向は男性で顕著となっている。

(2024年12月24日「基礎研レポート」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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