2024年11月14日

ロシアの物価状況(24年10月)-前年比伸び率は3か月連続で低下

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前年比は8.5%まで低下

10月13日、ロシア連邦統計局は消費者物価指数を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数(24年10月)】
前年同月比は8.54%、市場予想1(8.60%)より下振れ、前月(8.63%)から低下(図表1)
前月比は0.75%、市場予想(0.80%)より下振れ、前月(0.48%)から加速した

【コア指数2(24年10月)】
前年同月比は8.18%、市場予想(8.21%)より下振れ、前月(8.26%)から低下(図表2)
前月比は0.81%、市場予想(0.80%)より上振れ、前月(0.75%)から加速した

(図表1)ロシアの消費者物価上昇率/(図表2)ロシアのインフレ率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 生鮮食品など季節的要因による影響を受ける品目や管理品目を除いた指数。

2.結果の詳細:前週比、前月比からはインフレ圧力の根強さがうかがえる

10月のロシアのインフレ率は前年比で8.51%となり、7月(9.13%)をピークに3か月連続で低下した。ただし、ロシア中銀のインフレ目標(4%)は16か月連続で上回っている。ロシア中銀はインフレ抑制のため、10月に3会合連続での利上げを実施、10月は利上げ幅も引き上げた(政策金利は16%→18%(7月)→19%(9月)→21%(10月))。

インフレ率を大分類別に見ると、10月の前年比伸び率は食料品が9.03%(前月:9.15%)、財(非食料品)が5.74%(前月:5.59%)、サービスが11.32%(前月:11.62%)となり、それぞれ横ばい圏の動きと言える。また、伸び率としてはサービスインフレの高止まりが続いている。

前年比寄与度では食料品が3.4%ポイント程度、財(非食料品)が2.0%ポイント程度、サービスが3.2%ポイント程度だった(図表1)。

10月の前月比伸び率は、総合指数で0.75%、コア指数で0.81%となった。前月(総合指数0.48%、コア指数0.75%)からやや加速し、総合指数・コア指数ともにコロナ禍前の標準的な上昇率を上回った(2018年の前月比伸び率は平均で総合指数が約0.35%、コア指数が約0.30%、図表3)。なお、前月比伸び率を大分類で見ると食料品が1.23%(前月:0.34%)、財(非食料品)が0.68%(前月:0.62%)、サービスが0.21%(前月:0.51%)となった。

別途、ロシア連邦統計局が公表している週次のインフレ率(消費者物価上昇率)を見ると、前週比上昇では最新の11月11日時点の前週比で0.30%となり、ややインフレ圧力の強まりは継続している(図表4)。
(図表3)ロシアのインフレ率(前月比)/(図表4)ロシアのインフレ率(前週比)
(図表5)ロシアのインフレ率と家計のインフレ期待 ロシア中央銀行が公表する家計のインフレ期待(1年先中央値、実際のインフレ率よりも高めになる傾向がある)は、10月には13.4%となり9月(12.5%)から上昇した。これまで過去の傾向(期待インフレ率≒前年比インフレ率+6%、図表5)と比較すると、期待インフレ率が実際のインフレ率と比べて低い状況が続いていたが、その乖離を縮小する形となった。
品目別の上昇率を見ると3(図表6)、10月は前年比でその他サービス(37.30%)、バター(29.65%)の伸び率が高い。また、前月比では、バター(6.58%)の上昇率が相対的に大きい一方、海外旅行サービス(▲11.90%)は下落が目立つ。
(図表6)ロシアの品目別インフレ率
各品目の消費ウエイトも考慮して、全体のインフレ率への寄与を品目別に見ると(図表7・8)、前年比上昇率への寄与が大きい品目は住居・公益サービス(0.97%ポイント)、青果物(0.62%ポイント)、その他サービス(0.59%ポイント)、家庭サービス(0.53%ポイント)だった。

前月比上昇率の寄与では、乳製品(約0.07%ポイント)、家庭サービス(約0.07%ポイント)、青果物(約0.07%ポイント)のプラス寄与が大きく、海外旅行サービス(約▲0.09%ポイント)のマイナス寄与が大きかった。
(図表7)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度、抜粋)
(図表8)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度、抜粋)
なお、現時点において統計局ウェブサイトで公表されていない品目も含む9月の上昇率寄与を見ると、前年比では概ね10月と同様の傾向が見て取れる(図表9・10)。
(図表9)ロシアの品目別インフレ率(前年比寄与度)
(図表10)ロシアの品目別インフレ率(前月比寄与度)
 
3 大分類である食料品、財(非食料品)、サービスをそれぞれ細目別に分類したもの(中分類)のうち、統計局のウェブサイトで公表しているものを記載。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年11月14日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

     ・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
      アドバイザー(2024年4月~)

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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