2024年10月23日

円安再燃、1ドル160円に逆戻りするリスクは?~マーケット・カルテ11月号

経済研究部 主席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 月初1ドル144円台でスタートしたドル円は、足元で152円台まで円安ドル高が進行している。月初に石破新首相が日銀の利上げに慎重な発言を行ったことが円売りを誘ったほか、米雇用統計や小売売上高の良好な結果を受けて米利下げ観測が後退し、ドル高が加速した。また、足元では米大統領選でのトランプ氏再選によって、同氏の掲げるインフレ促進的な政策実現の可能性が意識されていることも、米金利上昇を通じたドル高圧力になっている。

先行きについては、FRBの段階的な利下げと日銀の緩やかな利上げを背景として円高基調となる可能性が高いと見ている。米国については、確かに最近公表された経済指標は堅調なものが多いが、持続性が不透明なうえ、FRBによる緩やかな利下げ路線を覆すほどの状況ではない。一方、日銀はしばらく内外情勢を見極めた後、来年1月には追加利上げに踏み切るだろう。この過程で日米金利差が再び縮小に向かうことで、3カ月後のドル円は146円前後になると見込んでいる。

ただし、見通しに織り込みづらいテーマに11月上旬の米大統領選がある。両候補の支持率は依然拮抗しており、選挙結果とその影響は決め打ちできない。上記の見通しをベースとして、必要に応じて情勢変化を織り込んでいく姿勢を採らざるを得ない。

なお、市場の変動率が高止まりしているため、今後さらに円が急落するリスクも否定はできない。現状ではリスクシナリオではあるが、(1)米大統領選でトランプ氏が勝利し、上下院ともに共和党が優勢を確保するトリプルレッドが成立した上で、(2)良好な米経済指標が続いてFRBによる利下げ観測が大きく後退、(3)トランプ氏への警戒から日本の通貨当局が円買い介入を躊躇するという条件が揃う場合には、再び160円突破も有り得ると見ている。

月初0.8%台半ばでスタートした長期金利は、足元で0.9%台後半まで水準を切り上げている。利下げ観測の後退を受けた米金利上昇が波及したうえ、円安を背景に日銀の利上げ観測が持ち直したためだ。

今後は、FRBによる利下げ観測が低下圧力となる一方で、日銀による追加利上げ観測・段階的な国債買入れ減額が上昇に作用する形となり、方向感が出にくいだろう。3ヵ月後の水準は1.0%前後と予想している。
 
(執筆時点:2024/10/23)

(2024年10月23日「基礎研マンスリー」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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