コラム
2024年10月07日

投信市場で尾を引く7、8月の急落~2024年9月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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外国株式ファンドへの資金流入は回復せず

2024年9月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式ファンドに8,800億円の資金流入があった【図表1】。9月も大規模な資金流入があったといえるが、2024年に入って最小だった8月の8,600億円とほぼ同規模であった。
【図表1】 2024年9月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
一般販売されている外国株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型に5,600億円、アクティブ型に2,700億円の資金流入があった。8月からともに増加したが、増加額はそれぞれ200億円にとどまった。特にアクティブ型の外国株式ファンドは「グローバル・オポチュニティ・パートナーズ・ファンド」(【図表2】赤太字)を中心に9月新設された9本に600億円の資金流入があり、既設のファンドに限ると8月から鈍化していた。
【図表2】 2024年9月の推計純流入ランキング

外国株式ファンドには8月の後遺症が?

そもそも前月の8月はインデックス型、アクティブ型問わず一般販売されている外国株式ファンドへの資金流入が大幅に減少した。だがインデックス型とアクティブ型とで流入減の仕方がやや異なっていた。
 
まず、アクティブ型の外国株式ファンドは買い控えによるところが大きかった。実際に設定額が年初から増加基調で5月以降は1兆円を超えていたが、8月に8,100億円まで減少した【図表3:左】。解約額も8月に減少して2024年に入って最小だったが、それ以上に買い控えが起きたため流入額が減少した。9月も既設のアクティブ型の外国株式ファンドへの資金流入がさらに鈍化していたことを踏まえると、8月と同等もしくはそれ以上に買い控えが起きていた可能性がありそうである。
 
それに対してインデックス型の外国株式ファンドでは8月も買付が比較的底堅かったが、売却が膨らんだ影響も大きかった【図表3:右】。設定額はアクティブ型と同様に7月と比べると急減したが、これは7月が好調過ぎた面もあり、5月や6月と比べるとそこまで落ち込んでいなかった。しかし、インデックス型の外国株式ファンドでは解約額が7月、8月と増加し、特に8月は4,600億円と1月を超え過去最大となったため、買付の減少以上に資金流入が鈍化していた。
【図表3】 アクティブ型(左)とインデックス型(右)の外国株式ファンドの設定額と解約額
なお、インデックス型の外国株式ファンドは一般販売されているものに限っても9月末の純資産総額が27兆円を超え、アクティブ型の36兆円に迫ってきている。あくまでも売却が7月、8月に膨らんだといっても5,000億円未満であり、インデックス型の外国株式ファンド全体でみると少額であったといえる。
 
ただし、外国株式ファンドの基準価額が急落した7月下旬に2,000億円、8月上旬に3,200億円と売却が集中しており、基準価額の急落に驚いて売却する個人投資家が一部でいたようだ。9月はインデックス型の外国株式ファンドの資金流入が8月から増加したとはいえ小幅であったため、9月もインデックス型の外国株式ファンドの解約がそれなりに出たのかもしれない。
 
インデックス型の外国株式ファンドは新NISAをきっかけに投資を始めた人も購入している場合が多い。投資を始めたばかりの人が7、8月の基準価額の急落を受けて、徐々に脱落してきていることも考えられるだけに、今後のインデックス型の外国株式ファンドの販売動向が注目される。

アクティブ型の国内株式ファンドの販売も黄色信号?

また、9月は国内株式ファンドに800億円の資金流入があったが、8月の2,900億円から大幅に減少した。
 
8月は国内株式が急落する中、逆張り投資によってインデックス型を中心に資金流入が膨らんでいた。一般販売されているインデックス型の国内株式ファンドは9月に入っても株価が下落した上旬に買い越されたが、持ち直した中旬以降は売却超過となった。結果的に1カ月通してみると流入額は100億円未満となり8月の1,800億円から急減した【図表4:右】。さらに一般販売されているアクティブ型の国内株式ファンドも9月に500億円の資金流入と8月の800億円から減少した【図表4:左】。
【図表4】 アクティブ型(左)とインデックス型(右)の国内株式ファンドの設定額と解約額
アクティブ型の国内株式ファンドはインデックス型より流入額の減少が小幅であったが、9月新設ファンド(【図表2】青太字)に500億円近く資金流入があり、実は既設のファンドに限るとインデックス型同様に流入額が100億円未満であった。アクティブ型の国内株式ファンドもインデックス型と同様に9月中旬以降に国内株式が持ち直すとともに利益確定売りが膨らんでいた可能性がある。ただし、設定額が年初から減少基調であることを踏まえると、外国株式と同様に販売自体が鈍化してきているのかもしれない。
 
このように9月は外国株式ファンドへの資金流入があまり回復せず、さらに国内株式ファンドへの資金流入が鈍化したこともあり、ファンド全体に1兆1,600億円の流入にとどまった。8月の1兆3,600億円から減少し、2024年に入ってから最小となった。

中国株式ファンドが好調

9月は中国の景気対策に対する期待感から中国株式が大きく上昇したことから、中国株式ファンドが総じて高パフォーマンスであった【図表5】。
【図表5】 2024年9月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

(2024年10月07日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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