コラム
2024年09月12日

外国株式ファンドが一時、売却超過に~2024年8月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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先月から外国株式ファンドへの資金流入が急減

2024年8月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、外国株式ファンドに8,500億円の資金流入があった【図表1】。8月も大規模な資金流入があったといえるが、過去最大であった7月の1兆5,300億円からは急減し、新NISAが始まった2024年からだと最小だった。
【図表1】 2024年8月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入
外国株式ファンドについてはタイプによらず資金流入が大きく減少した。8月は一般販売されてインデックス型の外国株式ファンドに5,300億円と7月の9,200億円から4割減、アクティブ型には2,500億円と7月の5,600億円から5割減となった。個別にみてもインデックス型(赤太字)、アクティブ型(青太字)問わず、8月に資金流入が大きかった外国株式ファンドは7月から軒並み資金流入が鈍化した【図表2】。
【図表2】 2024年8月の推計純流入ランキング
2024年に入ってから外国株式ファンドはインデックス型を中心に非常によく売れていた。なんといっても新NISAの影響が大きいが、それに加えて外国株式ファンドが総じて高パフォーマンスであったことも追い風になっていたと考えられる。米国株式を中心に世界的に株価は上昇し、しかも為替市場では年初1ドル140円台前半だったのが7月頭には一時160円を超えていた。そのため多くの為替ヘッジをしていない外国株式ファンドの基準価額が大きく上昇した。
 
しかし、7月中旬以降から8月上旬にかけては一転して世界的に株価が下落し、さらに為替市場では急激に円高が進んだ。この期間に多くの外国株式ファンドで基準価額が10%以上も下落した。そのような中、外国株式ファンドの購入を見送る、さらには保有しているファンドを売却する投資家も一部でいた様子である。
 
実際に外国株式ファンドは6日、7日、8日は3営業日連続でタイプによらず流出超過だった。一般販売されているものの純流出額は3日間の累積でインデックス型が1,500億円、アクティブ型が900億円にもなり、特に7日だけでそれぞれ1,000億円、700億円も純流出した。外国株式ファンドの場合、注文から2営業日タイムラグがあるため、5日は売り注文が膨らんだようだ。

国内株式では逆張り投資が健在

一方で8月は国内株式ファンドへ7月以上に資金流入があった。国内株式ファンドには8月に2,900億円の資金流入があり、7月の1,900億円から1,000億円も増えた。一般販売されている国内株式ファンドをタイプ別にみると、インデックス型で1,700億円、アクティブ型で800億円と7月の1,100億円、500億円からともに増加したが、特にインデックス型で顕著だった。
 
一般販売されている国内株式ファンドの7月以降の資金動向を日次でみると、日経平均株価が史上最高値の4万2,224円をつけた翌営業日1の7月12日までは流出基調であった【図表3】。それが7月12日以降は国内株式が急落する中、一転してインデックス型(黄棒)中心に資金流入があり、やはり積極的に逆張り投資をしていたことが分かる。
 
なお、日経平均株価が3万1,500円を下回り底値をつけた翌営業日の6日よりも、7月26日や5日の方が大きかった。底値でうまく拾えた人は少なかった様子である。
【図表3】 一般販売されている国内株式ファンドの日次資金流出入
 
1 国内株式ファンドの場合は注文・約定から1営業日タイムラグがある。

外国株式ファンド以外は?

また、バランス型ファンド(青棒)には8月に1,100億円の資金流入と7月の1,400億円から減少したが、6月並みの規模であり小幅な鈍化であった【図表4】。SMA専用ファンド全体(紺棒)にも2,000億円の資金流入があった。7月の2,200億円よりやや減少したものの、8月もそれなりにラップ口座が売れたことが推察される。それ以外の資産クラスのファンドについては、SMA専用ファンドを除外して一般販売しているものに限ると流出額は7月より減少していたが引き続き流出超過だった。
 
このように8月は内外株式や為替が大きく変動したが、これまで売れに売れていた外国株式ファンド以外はこれまで通りで驚くような変化は投信販売からは見られなかった。
【図表4】 バランス型ファンドとSMA専用ファンドの資金動向

アクティブ型の株式ファンドやレバレッジを活用したファンドに好調なものが

8月は、アクティブ型の株式ファンド(赤太字)やレバレッジを活用したファンド(青太字)の一部で高パフォーマンスをあげたものがあった【図表5】。
【図表5】 2024年7月の高パフォーマンス・ランキング
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。

(2024年09月12日「研究員の眼」)

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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

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