2024年10月07日

さくらレポート(2024年10月)~景気の総括判断は2地域で引き上げられ、7地域で横ばい、先行きは非製造業で悪化を見込む~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.景気の総括判断は、全9地域中、2地域で引き上げ、7地域で据え置き

10月7日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、景気の総括判断は、全9地域のうち、2地域で引き上げ、7地域で据え置きとなった。景気の総括判断が引き上げられたのは、北陸と東海、据え置かれたのは、北海道、東北、関東甲信越、近畿、中国、四国、九州・沖縄となった。北海道、東北、四国では「持ち直し」、北陸では「回復しつつある」、中国では「回復基調」、関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄では「回復している」という表現が用いられており、景気は全体的に上向きとなっている。
各地域の景気の総括判断
各地域の判断をみると、需要項目別には、個人消費は物価上昇の影響を受けつつも、底堅く推移している地域が多い。設備投資は高水準の企業収益を背景に、省力化・デジタル投資などを中心に増加している。一方、住宅投資は住宅価格の上昇を受けて弱い動きが続いている。

他には、生産は自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止が解除されたが、横ばい圏内で推移している。雇用・所得環境は労働需給の引き締まりを背景に、緩やかに改善している。

2.業況判断は6地域で改善、3域で横ばい、先行きの警戒感も強い

「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域中、6地域で改善、3地域で横ばい、全国では+2ポイントの改善となった。前回調査からの変化幅をみると、東海、四国が+4ポイントと改善幅が最も大きい。次いで東北が+2ポイント、北海道、関東甲信越、九州・沖縄が+1ポイント、北陸、近畿、中国が横ばいとなった。

先行き(2024年12月)の景況感は、全9地域で悪化を見込んでおり、全国では▲3ポイントの悪化を見込んでいる。先行きの悪化幅は北海道が▲8ポイントと最も大きい。次いで東海、四国が▲4ポイント、北陸、関東甲信越が▲3ポイント、東北、中国が▲2ポイント、近畿、九州・沖縄が▲1ポイントとなった。先行きの警戒感が強い状態が続いている。
地域別業況判断DIと変化幅(全産業)/全産業の改善・悪化幅(前回→今回)・全産業の改善・悪化幅(今回→先行き)

3.製造業は横ばい、先行きは緩やかな改善を見込む

製造業の業況判断DIは、全9地域のうち4地域で改善、1地域で横ばい、4地域で悪化し、全国では横ばいとなった。
地域別業況判断DIと変化幅(製造業) 地域別に前回調査からの変化幅をみると、四国が+5ポイントと最も改善した。次いで東北が+4ポイント、東海が+3ポイント、近畿が+1ポイントの改善、関東甲信越が横ばいとなった。一方、北海道が▲8ポイントと最も悪化した。次いで九州・沖縄が▲2ポイント、北陸、中国が▲1ポイントの悪化となった。

前回調査から改善した四国では、人件費の価格転嫁が進んだことで紙・パルプが+25ポイントと大幅に改善したほか、電気機械が+10ポイント、輸送用機械が+5ポイントの改善となった。一方、前回調査から悪化した北海道では、輸送用機械が▲23ポイント、金属製品が▲20ポイント、はん用・生産用・業務用機械が▲14ポイントと悪化幅が大きかった。
先行きについては、全9地域中、4地域で改善、2地域で横ばい、3地域で悪化、全国では+1ポイントの改善を見込んでいる。

地域別に先行きの変化幅をみると、北海道が+7ポイントと最も改善を見込んでいる。次いで北陸が+3ポイント、東北、近畿が+2ポイント、関東甲信越、九州・沖縄が横ばいとなった。一方、悪化を見込む地域をみると、最も悪化を見込む四国が▲3ポイントなり、次いで東海、中国が▲1ポイントの悪化を見込んでいる。

先行きの改善が見込まれる北海道では、はん用・生産用・業務用機械が+14ポイント、食料品が+6ポイントの改善が見込まれる。一方、先行きの悪化幅が最も大きかった四国では、人手不足の悪影響により設備投資が遅延していることなどから化学が▲13ポイント、紙・パルプが▲10ポイント、はん用・生産用・業務用機械が▲9ポイントと大幅な悪化が見込まれる。地域別の製造業の先行きは、一部地域で悪化を見込むものの、緩やかな持ち直しを見込んでいる。

なお、日銀短観2024年9月調査では、2024年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が144.9円と、足もとの実勢(148円台)と比べて若干円高の水準を想定している。為替が現在の水準で推移すれば、利益計画の上方修正を通じて製造業の景況感は上振れることが予想されるが、為替については不透明感が強い状況が続いている。
製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)

4.非製造業は改善、先行きは悪化を見込む

地域別業況判断DIと変化幅(非製造業) 非製造業の業況判断DIは全9地域中、7地域で改善、1地域で横ばい、1地域で悪化し、全国は+1ポイントの改善となった。地域別に変化幅をみると、最も改善しているのは東海で+5ポイントとなった。次いで北海道で+4ポイント、四国が+3、東北、近畿が+2ポイント、北陸、九州・沖縄が+1ポイントの改善、中国が横ばいとなった。一方、関東甲信越は▲1ポイントの悪化となった。南海トラフ地震臨時情報の発表や台風10号の影響で外出が控えられた。

改善幅が大きかった北海道では、旺盛なインバウンド需要に加えて、アニメ映画の舞台となったことなどから宿泊・飲食サービスが+26ポイントと大幅に改善したほか、運輸・郵便が+14ポイント、情報通信が+12ポイント、卸売が+11ポイントと大幅に改善した。また、改善幅が2番目に大きかった四国では、小売、運輸・郵便が+12ポイント、卸売が+7ポイントの改善となった。
先行きについては、全9地域で悪化を見込み、全国では▲5ポイントの悪化を見込んでいる。

地域別に先行きの悪化幅をみると、最も大きいのは北海道で▲12ポイントの悪化を見込んでいる。次いで北陸で▲9ポイント、近畿が▲7ポイント、東海が▲6ポイント、関東甲信越が▲5ポイント、東北、四国が▲4ポイント、中国が▲2ポイント、九州・沖縄が▲1ポイントの悪化を見込んでいる。

悪化幅が最も大きい北海道では、人件費の増加や建築コストの増加などから物品賃貸、卸売が▲25ポイント、宿泊・飲食サービスが▲22ポイントと悪化を見込むほか、情報通信が▲18ポイント、節約志向の高まりから小売が▲13ポイントと大幅な悪化を見込んでいる。悪化幅が2番目に大きかった北陸では、能登半島地震や奥能登豪雨の悪影響が経済をどの程度下押しするか見通しづらい中で、物品賃貸が▲20ポイント、建設が▲15ポイント、不動産、対個人サービスが▲11ポイントと大幅な悪化を見込んでいる。

非製造業の先行きは、建設や不動産、物品賃貸、卸売、小売など幅広い業種で悪化が見込まれる。建築コストの高騰や物価高の継続、為替レートの不透明感の高まりなど、非製造業にとって向かい風となる要素が多く、警戒感の強い状態が継続している。ただし、見通しに比べて実際の景況感は上振れる傾向にあることには注意が必要だ。
非製造業の改善・悪化幅(前回→今回)/非製造業の改善・悪化幅(今回→先行き)
 
 

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(2024年10月07日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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