2024年09月12日

企業物価指数2024年8月~円高の急進による輸入物価の下落が国内企業物価を押し下げ~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.国内企業物価(前年比)は8ヵ月ぶりの伸び鈍化

企業物価指数の推移 日本銀行が9月12日に発表した企業物価指数によると、2024年8月の国内企業物価は、前年比2.5%と(7月:同3.0%)8ヵ月ぶりに伸びが鈍化した。

内訳をみると23類別中、21類別が上昇、2類別が低下となった。電力・都市ガス・水道は、7月に電気・都市ガス激変緩和策が一旦終了したことで、前年比10.6%(7月:同6.5%)と二桁の高い伸びとなった。一方でエネルギー価格の下落によって石油・石炭製品が前年比▲4.0%(7月:同0.4%)と14ヵ月ぶりにマイナスとなった。
8月の国内企業物価の前月比は▲0.2%(7月:同0.5%)と10ヵ月ぶりのマイナスとなった。内訳をみると23類別中、12類別が上昇、3類別が横ばい、8類別が低下となった。寄与度をみると、非鉄金属が銅、プラスチック被覆銅線、電力・通信用メタルケーブルなどの品目の低下によって前月比▲0.22%と全体を大きく押し下げた。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解

2.円高の急進で輸入物価(円ベース・前年比)は大幅に下落

輸入物価指数(契約通貨ベース) 8月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比▲0.4%(7月:同▲0.1%)と2ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、10類別中、4類別で上昇、1類別で横ばい、5類別で低下となった。寄与度をみると、金属・同製品が鉄鉱石、銅鉱、白金・銅屑などの品目の低下によって前月比▲0.43%と全体を押し上げた。

契約通貨ベースの前年比では、1.7%(7月:同1.6%)と3ヵ月連続のプラスとなった。内訳をみると、石油・石炭・天然ガスが前年比1.8%(7月:同1.3%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、金属・同製品が同3.7%(7月:同7.0%)と前月から伸びが鈍化したものの5ヵ月連続のプラスとなった。

円相場(対ドル)は前月比▲7.4%と急速に円高・ドル安が進んだことで、輸入物価は円ベースで前月比▲6.1%(7月:同0.4%)と5ヵ月ぶりのマイナスとなった。円ベースの前年比は2.6%(7月:同10.8%)と前月から伸びが大幅に鈍化した。

3.先行きは上昇率がさらに鈍化する見込み

国内企業物価指数の前年比寄与度分解 8月の国内企業物価(前年比上昇率)はエネルギー価格の下落と円高の急進を背景とした輸入物価の下落などによって伸びが鈍化した。

足もとでは原油価格が引き続き下落傾向にあり、円高も進んでいることから輸入物価の下落が継続する可能性が高い。加えて、8月使用分から開始されている政府の電気・都市ガス価格の割引策である「酷暑乗り切り緊急支援」が反映されるため、9月の国内企業物価の前年比上昇率は伸びがさらに鈍化するだろう。同政策は10月使用分で割引額が減額され、以降は終了する予定のため、国内企業物価は再び伸びを高めることが予想される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年09月12日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

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