- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- さくらレポート(2024年7月)~景気の総括判断は4地域で「回復している」との表現が使われたが、先行きへの警戒感は強い~
さくらレポート(2024年7月)~景気の総括判断は4地域で「回復している」との表現が使われたが、先行きへの警戒感は強い~

経済研究部 安田 拓斗
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.景気の総括判断は、全9地域中、2地域で引き上げ、5地域で据え置き、2地域で引き下げ
北陸では、「持ち直しの動きがみられている」から「回復に向けた動きがみられている」へ、近畿では「持ち直している」から「回復している」へ景気の総括判断が上方修正された。これによって「回復している」との表現を用いた地域は、前回調査(2024年3月)の2地域から、関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄の4地域となった。
他には、生産は自動車メーカーの不正問題発覚に伴う生産停止が解除されたが、横ばい圏内で推移している。雇用・所得環境は労働需給の引き締まりを背景に、緩やかに改善している。
2.業況判断は4地域で改善、2地域で横ばい、3地域で悪化、先行きの警戒感も強い
先行き(2024年9月)の景況感は、全9地域中、1地域で改善、8地域で悪化を見込んでおり、全国では▲2ポイントの悪化を見込んでいる。先行きの改善幅をみると、東北が+1ポイントと改善を見込んでいる。一方、先行の悪化幅は北海道、北陸が▲6ポイントと最も大きく、次いで九州・沖縄が▲3ポイント、北海道、関東甲信越、近畿、中国が▲2ポイント、東海、四国が▲1ポイントとなった。景況感は高水準を維持しているが、先行きへの警戒感が強い状態が続いている。
3.製造業は改善し、先行きも改善を見込む

地域別に前回調査からの変化幅をみると、中国が+7ポイントと最も改善し、次いで九州・沖縄が+4ポイント、東北が+3ポイント、関東甲信越が+2ポイント、北海道、北陸が+1ポイントの改善となった。一方、東海、近畿、四国は▲2ポイントと悪化した。
前回調査から改善した中国では、木材・木製品が+53ポイントと大幅に改善した。加えて、化学が+18ポイント、繊維が+13ポイント、輸送用機械が+12ポイントと改善幅が大きかった。一方、前回調査から悪化した近畿では、金属製品が▲15ポイント、鉄鋼が▲11ポイント、窯業・土石製品が▲10ポイントと悪化幅が大きかった。四国では、電気機械が▲10ポイントと悪化幅が大きかった。
地域別の製造業の景況感は、価格転嫁の進展や高水準の企業収益を背景とした設備投資需要の高まりが追い風となり持ち直している。
先行きについては、全9地域中、5地域で改善、4地域で悪化、全国では+1ポイントの改善を見込んでいる。
先行きの改善が見込まれる東北では、特に木材・木製品(+33ポイント)、輸送用機械(+29ポイント)、鉄鋼(+15ポイント)で大幅な改善が見込まれている。一方、先行きの悪化幅が最も大きかった九州・沖縄では、特に食料品(▲17ポイント)、鉄鋼(▲10ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。
地域別の製造業の先行きは、一部地域で悪化を見込むものの、非鉄金属や輸送用機械を中心に持ち直しを見込んでいる。
なお、日銀短観2024年6月調査では、2024年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が144.33円と、足もとの実勢(161円台前半)と比べて円高の水準を想定している。為替が現在の水準で推移すれば、利益計画の上方修正を通じて製造業の景況感は上振れていくだろう。
4.非製造業は横ばい、先行きは悪化を見込む

改善幅が最も大きかった北陸では、震災被害があったものの、北陸応援割による押し上げ効果もあり、宿泊・飲食サービスが+68ポイントと大幅に悪化した前回調査(▲86ポイント)から急速に改善している。また、対個人サービスが+32ポイント、電気・ガスが+25ポイントと大幅に改善した。一方、悪化幅が大きかった四国では宿泊・飲食サービスが▲18ポイント、卸売が▲14ポイントと大幅に悪化した。また九州・沖縄では、宿泊・飲食サービスが▲12ポイント、物品賃貸が▲10ポイントと悪化した。非製造業の業況判断は地域ごとにばらつきはあるが、全体的に弱い動きとなっている。
地域別に先行きの悪化幅をみると、最も大きいのは北陸で▲10ポイントの悪化を見込んでいる。次いで北海道で▲9ポイント、近畿が▲7ポイント、関東甲信越、東海、四国が▲6ポイント、中国が▲4ポイント、東北、九州・沖縄が▲3ポイントの悪化を見込んでいる。
悪化幅が最も大きい北陸では、宿泊・飲食サービスが▲37ポイント、対個人サービスが▲22ポイント、物品賃貸が▲20ポイントと大幅な悪化を見込んでいる。また北海道では、物品賃貸が▲25ポイント、情報通信が▲22ポイント、対事業所サービスが▲22ポイントの悪化を見込んでいる。
非製造業の先行きは、人件費や仕入れコスト増、人手不足、物価高など下押し圧力が残存していることから、全ての地域で警戒感が強い状況が続いている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年07月09日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
経済研究部
安田 拓斗
安田 拓斗のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/13 | 雇用を支える外国人労働者~受入れ拡大に備え、さらなる環境整備が求められる~ | 安田 拓斗 | 基礎研レポート |
2025/03/12 | 企業物価指数2025年2月~国内企業物価は2ヵ月連続で前年比4%台~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/03 | 宿泊旅行統計調査2025年1月~早期の春節の影響などから、中国人延べ宿泊者数が急速に回復~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
2025/02/13 | 企業物価指数2025年1月~国内企業物価の前年比上昇率は2023年6月以来の4%超~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年03月26日
インバウンド市場の現状と展望~コスパ重視の旅行トレンドを背景に高まる日本の観光競争力 -
2025年03月25日
ますます拡大する日本の死亡保障不足-「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査<速報版>」より- -
2025年03月25日
米国で広がる“出社義務化”の動きと日本企業の針路~人的資本経営の視点から~ -
2025年03月25日
産業クラスターを通じた脱炭素化-クラスターは温室効果ガス排出削減の潜在力を有している -
2025年03月25日
「大阪オフィス市場」の現況と見通し(2025年)
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【さくらレポート(2024年7月)~景気の総括判断は4地域で「回復している」との表現が使われたが、先行きへの警戒感は強い~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
さくらレポート(2024年7月)~景気の総括判断は4地域で「回復している」との表現が使われたが、先行きへの警戒感は強い~のレポート Topへ