2024年06月12日

企業物価指数2024年5月~再エネ賦課金の単価引き上げで、企業物価は上昇ペース加速。先行きも上昇を見込む~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.再エネ賦課金の単価上昇で国内企業物価は上昇ペース加速

企業物価指数の推移 日本銀行が6月12日に発表した企業物価指数によると、2024年5月の国内企業物価は、前年比2.4%と前月(同1.1%)から4ヵ月連続で伸びを高めた。

内訳をみると23類別中、19類別が上昇、4類別が低下となった。電力・都市ガス・水道は前年比▲7.4%(4月:同▲19.6%)と11ヵ月連続でマイナスとなったが、再生エネルギー発電促進賦課金の単価が引き上げられたことで、マイナス幅は前月から大きく縮小した。
5月の国内企業物価の前月比は0.7%(4月:同0.5%)と4ヵ月連続で伸びを高めた。内訳をみると23類別中、14類別が上昇、3類別が横ばい、6類別が低下となった。寄与度をみると、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価の引き上げにより事業用電力が上昇し、電力・都市ガス・水道が0.31%で全体を押し上げたほか、非鉄金属は、中国への輸出の回復期待が高まったことで銅、プラスチック被覆銅線、電力・通信用メタルケーブルが上昇し0.25%となった。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解

2.契約通貨ベースの輸入物価は2ヵ月連続で上昇

輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 5月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比0.9%(4月:同0.2%)と2ヵ月連続で上昇した。内訳をみると、10類別中、8類別で上昇、1類別で横ばい、1類別で低下となった。寄与度をみると、金属・同製品が銅鉱、鉄鉱石、白金・銅屑などの上昇で0.44%、石油・石炭・天然ガスが原油、液化天然ガス、ナフサなどの上昇で0.38%と全体を押し下げた。

契約通貨ベースの前年比では、▲3.0%(4月:同▲4.1%)と14ヵ月連続のマイナスとなったが、マイナス幅は8ヵ月連続で縮小している。マイナス幅縮小の主因は、石油・石炭・天然ガスが前年比▲8.2%と前月(同▲10.5%)からマイナス幅が縮小したほか、金属・同製品が同2.0%と前月(同0.4%)から伸びを高めたことである。

円相場(対ドル)は前月比1.8%と5ヵ月連続のプラスとなったことで、輸入物価は円ベースで前月比2.5%(4月:同2.0%)と2ヵ月連続のプラスとなった。円ベースの前年比は6.9%(4月:同6.6%)と4ヵ月連続でプラスとなった。

3.先行きは政策の影響を受けて上昇率が高まる見通し

国内企業物価指数の前期比寄与度分解 5月の企業物価は再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円/kWhから3.49円/kWhに引き上げられたことで上昇した。6月以降の企業物価も政府の物価抑制策終了の影響を受ける。

電気・都市ガス価格激変緩和策は、2024年5月使用分(6月請求分)で割引額が半減され、6月使用分以降は措置が終了する予定である。一方、燃料油価格激変緩和策は足もとでガソリン価格が高止まりしていることを受けて、4月までとしていた措置が延長されているが、終了すればその反動で国内企業物価の上昇率拡大は避けられない。

国内企業物価の先行きは、輸入物価が契約通貨ベース・円ベースともに上昇していることに加え、電気・都市ガス価格激変緩和策が終了することから、前年比上昇率は拡大する公算が大きい。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年06月12日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

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