2024年05月14日

企業物価指数2024年4月~前年比上昇率は前月と変わらず。先行きは政策の影響を受けて上昇率が高まる見通し~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1.国内企業物価の前年比上昇率は前月から横ばい

企業物価指数の推移 日本銀行が5月14日に発表した企業物価指数によると、2024年4月の国内企業物価は、前年比0.9%と前月(同0.9%)から横ばいとなった。

内訳をみると23類別中、17類別が上昇、6類別が低下となった。政策による価格抑制が続く電力・都市ガス・水道は前年比▲19.7%(3月:同▲19.1%)と10ヵ月連続でマイナスとなった。政策の効果は縮小しているが、押し下げは続いている。

前年比上昇率が最も高い類別は、非鉄金属(前年比11.7%)で、次いで窯業・土石製品(同6.6%)、石油・石炭製品(同5.3%)、その他工業製品(同5.3%)となった。
4月の国内企業物価の前月比は0.3%(3月:同0.2%)と上昇した。内訳をみると23類別中、19類別が上昇、4類別が低下となった。寄与度をみると、化学製品が▲0.13%と全体を押し下げたものの、非鉄金属は銅、プラスチック被覆銅線、電力・通信用メタルケーブルが上昇し0.20%、石油・石炭製品はナフサ、B重油、C重油、ガソリンが上昇し0.06%となった。
国内企業物価指数の推移/国内企業物価指数の前月比寄与度分解

2.石油・石炭・天然ガスの前年比マイナス幅縮小が全体を押し上げ

輸入物価指数変化率の要因分解(契約通貨ベース) 輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比▲0.1%(3月:同▲0.5%)と5ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、10類別中、7類別で上昇、3類別で低下となった。寄与度をみると、金属・同製品が銅鉱、白金・銅屑、電線・ケーブルなどの上昇で0.21%となったが、石油・石炭・天然ガスが液化天然ガス、一般炭、ジェット燃料油などの低下で▲0.32%と全体を押し下げた。

契約通貨ベースの前年比では、▲4.3%(3月:同▲6.9%)と13ヵ月連続のマイナスとなったが、マイナス幅は7ヵ月連続で縮小している。マイナス幅縮小の主因は、石油・石炭・天然ガスが前年比▲10.8%と前月(同▲17.1%)からマイナス幅が縮小したことである。

円相場(対ドル)は前月比2.6%と4ヵ月連続のプラスとなったことで、輸入物価は円ベースで同1.8%(3月:同▲0.4%)と2ヵ月ぶりのプラスとなった。円ベースの前年比は6.4%(3月:同1.4%)と3ヵ月連続でプラスとなった。

3.先行きは政策の影響を受けて上昇率が高まる見通し

国内企業物価指数の前年比寄与度分解 企業物価は政策によって上昇が抑制されてきた。現在実施されている燃料油価格激変緩和策は、足元の燃料油の価格が政府の目標とする水準にまで下落しておらず、実施期間が延長されている。一方で電気・都市ガス価格激変緩和策は、2024年5月使用分(6月請求分)で割引率が半減され、以降は措置が終了する。また、2024年5月から再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が1.40円/kWhから3.49円/kWhに引き上げられる。

国内企業物価の前年比上昇率は鈍化を続けてきた。しかし5月以降、再生可能エネルギー発電促進賦課金単価が引き上げられ、6月には電気・都市ガス価格の激変緩和策の補助金が縮小し、7月以降は同政策が終了する予定である。これを受けて、電気・ガス価格が押し上げられ、国内企業物価の前年比上昇率は拡大する公算が大きい。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年05月14日「経済・金融フラッシュ」)

このレポートの関連カテゴリ

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【企業物価指数2024年4月~前年比上昇率は前月と変わらず。先行きは政策の影響を受けて上昇率が高まる見通し~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

企業物価指数2024年4月~前年比上昇率は前月と変わらず。先行きは政策の影響を受けて上昇率が高まる見通し~のレポート Topへ