2024年10月01日

宿泊旅行統計調査2024年8月~日本人延べ宿泊者数は物価高の向かい風を受けて3ヵ月ぶりに2019年比マイナス~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.日本人延べ宿泊者数は弱い動き

観光庁が9月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2024年8月の延べ宿泊者数は6,611万人泊(7月:5,666万人泊)となった。前年同月比は2.7%(7月:同4.1%)、2019年比は4.5%(7月:同9.4%)となった。

2024年8月の日本人延べ宿泊者数は5,330万人泊(7月:4,196万人泊)となり、2019年同月比は▲0.8%(7月:同2.4%)と3ヵ月ぶりのマイナス、前年比は▲0.8%(7月:▲3.3%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。日本人の国内旅行は物価高の悪影響を受け弱い動きが続いている。2024年8月の外国人延べ宿泊者数は1,281万人泊(7月:1,470万人泊)、2019年同月比は35.1%(7月:同36.1%)となった。外国人延べ宿泊者数は好調を続けており、延べ宿泊者数全体を押し上げている。
延べ宿泊者数の推移/日本人延べ宿泊者数の推移
客室稼働率の推移 2024年8月の客室稼働率は全体で63.9%(7月:同61.2%)、2019年同月差▲5.5%(7月:同▲2.1%)と、コロナ禍前の水準を下回っているが、前年同月差は1.3%(7月:同3.3%)とプラスで推移している。宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は43.6%、2019年同月差▲6.8%(7月:同▲2.1%)、リゾートホテルは63.7%、2019年同月差▲7.2%(7月:同▲2.7%)、ビジネスホテルは74.8%、2019年同月差▲4.8%(7月:同▲2.2%)、シティホテルは72.3%、2019年同月差▲10.7%(7月:同▲8.2%)、簡易宿所は36.3%、2019年同月差▲8.7%(7月:同▲4.9%)であった。2019年同月差は全てのタイプの宿泊施設でマイナス圏での推移が続いている。一方、前年同月差をみると、旅館が▲0.9%とマイナスになっているが、リゾートホテルは同3.5%、ビジネスホテルは同1.4%、シティホテルは同1.0%、簡易宿所は同3.0%といずれもプラスで推移している。

2.延べ宿泊者数は大都市を中心に回復

速報より1ヵ月遅れて公表される都道府県別の延べ宿泊者数をみると、7月は東京都が2019年比35.8%、大阪府が同18.9%と大都市では回復している一方、地方では回復の遅れがみられる。
都道府県別延べ宿泊者数(2024年7月)
日本人延べ宿泊者数をみると、東京都が2019年比0.6%、大阪府が同2.6%と小幅な増加にとどまっている。一方、外国人延べ宿泊者数をみると東京都は2019年比91.0%、大阪府は同41.4%と大幅に増加した結果、三大都市圏1では同53.4%の高い伸びとなった。しかし地方では2019年7.0%と三大都市圏に比べると増加幅は小さい。延べ宿泊者数が回復している東京都や大阪府などの大都市でも日本人延べ宿泊者数は微増で、外国人延べ宿泊者数が全体を押し上げている。今後も大都市へ外国人観光客が集中する傾向は継続が見込まれ、地方への分散はますます大きな課題となる。
 
1 三大都市圏とは東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県をいう

3.引き続き旺盛なインバウンド需要が日本の旅行需要を牽引

外国人延べ宿泊者数の推移 外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2024年8月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲9.9%(7月:同▲7.0%)と、2ヵ月連続でマイナス幅が拡大しているが、3ヵ月連続で下落率は一桁にとどまっている。8月の訪日中国人数は2019年比▲25.5%だが、宿泊日数が増加したことで、延べ宿泊者数は訪日客数より早い速度で回復している。

中国国内の消費は弱い動きになっていることから、中国人延べ宿泊者数が停滞するリスクはあるが、コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって、外国人延べ宿泊者数は増加を続けることが予想される。日本人の旅行需要は横ばい圏内での推移が見込まれるため、今後の日本全体の旅行需要を左右するのはインバウンド需要となるだろう。
 
 

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(2024年10月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

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