- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 米雇用統計(24年9月)-非農業部門雇用者数は前月比+25.4万人と市場予想の+15.0万人を大幅に上回る
2024年10月07日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.結果の概要:雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率は市場予想を下回る
10月4日、米国労働統計局(BLS)は9月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+25.4万人の増加1(前月改定値:+15.9万人)と+14.2万人から上方修正された前月を上回ったほか、市場予想の+15.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。
失業率は4.1%(前月:4.2%、市場予想:4.2%)と前月から▲0.1%ポイント低下、横這いを見込んだ市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.7%(前月:62.7%、市場予想:62.7%)と前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
失業率は4.1%(前月:4.2%、市場予想:4.2%)と前月から▲0.1%ポイント低下、横這いを見込んだ市場予想を下回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.7%(前月:62.7%、市場予想:62.7%)と前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。
2.結果の評価:事業所調査、家計調査ともに堅調な労働市場を確認する内容
事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は9月が市場予想を大幅に上回り、24年3月以来の水準に増加したほか、後述するように過去2ヵ月分が合計+7.2万人と大幅に上方修正された結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは+18.6万人となり、24年上期の+20.7万人からは低下したものの、上方修正される前の6月~8月期の3ヵ月平均である+11.6万人からは大幅に増加するなど、足元の急激な雇用鈍化懸念を払しょくする結果となった。
家計調査も失業率が9月は4.1%と就業者数の大幅な増加を伴って2ヵ月連続で低下し、7月の雇用統計で高まっていた失業率の大幅上昇懸念も一旦後退した。
一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.5%、市場予想:+0.3%)と+0.4%から小幅上方修正された前月を下回ったものの、市場予想は上回った。
家計調査も失業率が9月は4.1%と就業者数の大幅な増加を伴って2ヵ月連続で低下し、7月の雇用統計で高まっていた失業率の大幅上昇懸念も一旦後退した。
一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.4%(前月改定値:+0.5%、市場予想:+0.3%)と+0.4%から小幅上方修正された前月を下回ったものの、市場予想は上回った。

このようにみると、9月の雇用統計は雇用者数が24年3月以来の伸びとなったほか、過去2ヵ月分が上方修正されるなど、足元の堅調な伸びが確認されたほか、失業率も2ヵ月連続で低下するなど、いずれも堅調な労働市場を確認する結果と言えよう。雇用増加数も含めて多くの雇用関連指標が軟化しており、全体として労働市場が減速していることは間違いないが、7月の雇用統計発表時に懸念されていたような急激な減速となっていないことは米経済のソフトランディング見通しを強めよう。
3.事業所調査の詳細:医療・社会扶助、娯楽・宿泊の伸びが加速

民間サービス部門の中では、運輸・倉庫が前月比▲0.9万人(前月:+0.3万人)と前月からマイナスに転じた。一方、小売業が+1.6万人(前月:▲0.9万人)、専門・ビジネスサービスが+1.7万人(前月:▲0.4万人)、情報サービスが+0.4万人(前月:▲0.7万人)と前月からプラスに転じた。さらに、医療・社会扶助サービスが+7.2万人(前月:+5.4万人)、娯楽・宿泊が+7.8万人(前月:+5.3万人)と前月から伸びが加速した。
財生産部門は前月比+2.1万人(前月:+0.5万人)と前月から伸びが加速した。建設業が+2.5万人(前月:+3.1万人)と前月から伸びが小幅鈍化した一方、製造業が▲0.7万人(前月:▲2.7万人)とマイナス幅が前月から縮小した。
政府部門は前月比+3.1万人(前月:+4.5万人)と堅調を維持したものの、前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が+0.2万人(前月:+0.1万人)と前月から小幅に伸びが加速した一方、州・地方政府が+2.9万人(前月:+4.4万人)と前月から伸びが鈍化したことが大きい。
前月(8月)と前々月(7月)の雇用増加数(改定値)は前月が+15.9万人(改定前:+14.2万人)と+1.7万人上方修正されたほか、前々月が+14.4万人(改定前:+8.9万人)と+5.5万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+7.2万人の大幅な上方修正となった(図表3)。
BLSの公表に先立って10月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+14.3万人(前月改定値:+10.3万人、市場予想:+12.5万人)と+9.9万人から上方修正された前月、市場予想を上回った。この結果、ADP社の統計は水準こそ大きく異なるものの、前月から雇用者数の伸びが加速した雇用統計と整合的な結果となった。
9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が35.36ドル(前月:35.23ドル)となり、前月から+13セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.3時間)と前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,209.31ドル(前月:1,208.39ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
BLSの公表に先立って10月2日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+14.3万人(前月改定値:+10.3万人、市場予想:+12.5万人)と+9.9万人から上方修正された前月、市場予想を上回った。この結果、ADP社の統計は水準こそ大きく異なるものの、前月から雇用者数の伸びが加速した雇用統計と整合的な結果となった。
9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が35.36ドル(前月:35.23ドル)となり、前月から+13セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.3時間)と前月から▲0.1時間減少した。この結果、週当たり賃金は1,209.31ドル(前月:1,208.39ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
4.家計調査の詳細:プライムエイジの労働参加率は2ヵ月連続で低下
家計調査のうち、9月の労働力人口は前月対比で+15.0万人(前月:+12.0万人)と前月から伸びが加速した。内訳を見ると、失業者数が▲28.1万人(前月:▲4.8万人)と前月からマイナス幅が拡大したものの、就業者数が+43.0万人(前月:+16.8万人)と失業者数の減少を上回る増加を示して労働力人口全体を押し上げた。非労働力人口は+7.5万人(前月:+9.1万人)と2ヵ月連続のプラスとなった。これらの結果、労働参加率は62.7%と前月から横這いとなった(図表5)。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は9月が83.8%(前月:83.9%)と前月から▲0.1%ポイント低下と2ヵ月連続の低下となった。男女の内訳は、男性が89.5%(前月:89.5%)と前月から横這いとなった一方、女性が78.1%(前月:78.4%)と前月から▲0.3%ポイント低下して全体を押し下げた。
失業率は9月が4.1%と2ヵ月連続で低下した(図表6)。7月に4.3%をつけて失業率の大幅な上昇が懸念されたが、その後は低下しており、7月の一時的な解雇の増加に伴う失業率の上昇がハリケーンによる特殊要因であった可能性が強まった。今後も失業率が安定するのか注目される。
一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は9月が83.8%(前月:83.9%)と前月から▲0.1%ポイント低下と2ヵ月連続の低下となった。男女の内訳は、男性が89.5%(前月:89.5%)と前月から横這いとなった一方、女性が78.1%(前月:78.4%)と前月から▲0.3%ポイント低下して全体を押し下げた。
失業率は9月が4.1%と2ヵ月連続で低下した(図表6)。7月に4.3%をつけて失業率の大幅な上昇が懸念されたが、その後は低下しており、7月の一時的な解雇の増加に伴う失業率の上昇がハリケーンによる特殊要因であった可能性が強まった。今後も失業率が安定するのか注目される。
9月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は163.0万人(前月:153.3万人)と前月から+9.7万人増加した。一方、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは23.7%(前月:21.3%)と前月から+2.4%ポイント上昇した(図表7)。平均失業期間は22.6週(前月:21.0週)とこちらは前月から+1.6週長期化した。
最後に、周辺労働力人口(160.5万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(462.4万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、9月が7.7%(前月:7.9%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.6%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
最後に、周辺労働力人口(160.5万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(462.4万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、9月が7.7%(前月:7.9%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.6%ポイント(前月:+3.7%ポイント)と前月から▲0.1%ポイント縮小した。
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年10月07日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1824
経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
新着記事
-
2025年05月01日
日本を米国車が走りまわる日-掃除機は「でかくてがさつ」から脱却- -
2025年05月01日
米個人所得・消費支出(25年3月)-個人消費(前月比)が上振れする一方、PCE価格指数(前月比)は総合、コアともに横這い -
2025年05月01日
米GDP(25年1-3月期)-前期比年率▲0.3%と22年1-3月期以来のマイナス、市場予想も下回る -
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【米雇用統計(24年9月)-非農業部門雇用者数は前月比+25.4万人と市場予想の+15.0万人を大幅に上回る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
米雇用統計(24年9月)-非農業部門雇用者数は前月比+25.4万人と市場予想の+15.0万人を大幅に上回るのレポート Topへ