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「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2024年)

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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その後も、複数の大規模開発が計画されている。鹿島建設は中央三丁目で「NANT仙台南町」(延床面積1.2万m2・地上11階建て)を開発し、2025年3月に完成する予定である16(図表-19 ④)。
また、第一生命保険は、青葉区定禅寺通の「仙台第一生命ビル」の建替えを発表した。仙台市と連携し、勾当台公園再整備や市役所新本庁舎建設と一体で計画を進捗し、2028年の竣工を目指すとしている17(図表-19 ⑤)。
大和ハウス工業は、青葉区本町1丁目の「第一日本オフィスビル」を建替えて、地上19階建てのオフィスビル(延床面積約2万m2)の開発を計画している。「せんだい都心再構築プロジェクト」の助成を活用し、2028年の竣工を目指すとしている18(図表-19 ⑥)。
また、東日本興業(東北電力系の不動産管理会社)、戸田建設、明治安田生命保険、三菱地所等は、「電力ビル」中心とした一体開発を計画しており19、2023年5月に「せんだい都心再構築プロジェクト」の「グリーンビルディング」第1号案件に認定された。同計画では、オフィスや音楽ホールが入居する高層複合ビル2棟(南棟:約180m・北棟約135m)等を開発し、2035年頃の竣工を目指すとしている20(図表-19 ⑦)
さらに、仙台市はJR仙台駅西口の青葉通の一部区間を、屋外広場に整備することを検討している。この屋外広場の整備は、青葉通沿道の「GSビル跡地」や「旧さくら野百貨店仙台店」の再開発と連動して行う計画である22。
「GSビル跡地」では、隣接する商業施設「EDEN(エデン)」との一体での再開発が検討されている(図表-20 ②)。「EDEN」は、2024年1月に閉店したが、その後の開発計画は未定とのことである23。
「旧さくら野百貨店仙台店」跡地では、「ドン・キホーテ」などを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが再開発を検討している(図表-20 ③)。当初の開発計画では、オフィスビルとホテルの計2棟(総延床面積約11万m2)を建築し、それぞれの低層階を商業施設でつなげる計画で、着工は2024年度、竣工は2027年度を目指すとのことであったが24、現時点で工事の進捗は見られない模様である25。
また、青葉区一番町の百貨店「藤崎本館」を含めた20棟程度の商業ビル(面積:約1.7ヘクタール)を建替えて、百貨店や商業施設のほか、オフィスビルやホテルなどを建設する計画26が検討されており、2023年8月に地権者でつくる推進協議会が発足した27(図表-20 ④)
12 NTT都市開発株式会社 「せんだい都心再構築プロジェクト第1号物件「アーバンネット仙台中央ビル」竣工~2024年3月中旬グランドオープン予定~」(2023年12月8日)
13 環境配慮型オフィスビルの開発を目的として、株式会社長谷工コーポレーション、株式会社日本政策投資銀行、七十七キャピタル株式会社、株式会社竹中工務店、みずほ不動産投資顧問株式会社が共同で組成した不動産私募ファンド。
14 みずほ不動産投資顧問株式会社「仙台市における木造ハイブリッドオフィスビルの開発計画について-建築物の脱炭素化・森林資源の有効活用を支援-」(2022年1月24日)
15 東京建物株式会社 「せんだい都心再構築プロジェクト活用物件「T-PLUS仙台」竣工 高水準の安全性能と環境性能を有した高機能オフィスビル」(2024年2月1日)
16 鹿島建設株式会社HP「NANT仙台南町」
17 河北新報 「仙台・定禅寺通の「黒ビル」2028年度にも建て替え 第一生命が正式表明、完成予想図8枚も公開」(2023年12月4日)
18 日本経済新聞「大和ハウス、仙台駅西口で一体再開発を検討 28年完成へ」(2024年1月30日)
19 日本経済新聞「「電力ビル」軸に一体開発へ 東北電力系など、仙台中心部で過去最大 音楽ホール・オフィス入居 高層複合ビルに」(2023年4月1日)
20 日本経済新聞「仙台・電力ビル、本館は30年解体 高さ東北一に並ぶ」(2023年4月28日)
21 株式会社ヨドバシホールディングス「ヨドバシ仙台第1ビル開業「ヨドバシカメラ マルチメディア仙台」2023年6月2日(金)あさ9:30にOPEN」(2023年5月16日)
22 河北新報「「青葉通広場化」検討着手/仙台・あす協議会発足」(2021年5月31日)
23 河北新報「惜しまれ閉店 気になる跡地/アリオ仙台泉 感謝込め最終セール/仙台駅前・エデン 一等地 出店者「残念」 JR仙台駅西口(仙台市青葉区)の商業施設「EDEN(エデン)」と、市地下鉄泉中央駅(泉区)近くの」(2024年2月1日)
24 日本経済新聞 「東北経済特集―東北、力強く前へ、仙台駅前、再開発進む。」(2021年12月24日)
25 河北新報「落書き/周辺商店街、懸念/景観の悪化 治安の悪化/仙台・旧さくら野百貨店 JR仙台駅前の旧さくら野百貨店仙台店(仙台市青葉区)のシャッターや壁面に落書きが目立ち始めている。2017年2月の閉店から7年」(2024年7月3日)
26 日本経済新聞「百貨店の藤崎など建て替え、仙台市中心部で再開発」(2020年7月8日)
27 日本経済新聞「仙台の藤崎周辺再開発 地権者の推進協発足」(2023年8月4日)
前述の新規供給見通しや経済予測、オフィスワーカー数の見通し等を前提に、2028年までの仙台のオフィス賃料を予測した(図表-22)。
仙台市では、人口の流入超過が継続しており、生産年齢人口は9年ぶりに増加した。また、東北地方の「企業の経営環境」はコロナ禍で受けたダメージから回復に向かっており、「雇用環境」は人手不足感が強まっている。以上のことを鑑みると、仙台市のビジネスエリアの「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さいと考えられる。
また、テレワークの普及が更に進んだ場合、テレワークを前提としたワークプレイスの見直しや、サテライトオフィスの開設等が増えることが想定される。行政の支援策に後押され、スタートアップ企業が増加し、オフィス需要の新たな担い手となることも期待される。
新規供給に関して、昨年は複数の大規模ビルが竣工し約1.5万坪に達したが、今後3年間は一段落する見通しである。以上を踏まえると、空室率が大きく上昇する懸念は小さいと予想する。
仙台のオフィス成約賃料は、空室率が安定的に推移することに伴い、現行水準で概ね横ばいで推移し、2023 年の賃料を100 とした場合、2024 年は「100」、2028 年は「100」となる見通しである。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年08月02日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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