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- 米FOMC(24年7月)-予想通り、8会合連続で政策金利を据え置き。9月利下げ開始の可能性を示唆
2024年08月01日
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1.金融政策の概要:予想通り、8会合連続政策金利据え置き、9月利下げ開始の可能性を示唆
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が7月30日-31日(現地時間)に開催された。FRBは市場の予想通り、政策金利を8会合連続となる5.25-5.5%で据え置いた。
今回発表された声明文では景気判断部分で足元の経済状況を反映して労働市場に関して小幅に下方修正したほか、インフレに関しても小幅に下方修正した。経済見通し部分では注意を払うリスクとして前回のインフレに加えて労働市場が追加され、従前のインフレ重視から労働市場や景気にも目配せする姿勢が示された。一方、ガイダンス部分の変更はなかった。
今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。
パウエル議長の記者会見では早ければ9月会合で利下げを検討する可能性が示された。
今回発表された声明文では景気判断部分で足元の経済状況を反映して労働市場に関して小幅に下方修正したほか、インフレに関しても小幅に下方修正した。経済見通し部分では注意を払うリスクとして前回のインフレに加えて労働市場が追加され、従前のインフレ重視から労働市場や景気にも目配せする姿勢が示された。一方、ガイダンス部分の変更はなかった。
今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。
パウエル議長の記者会見では早ければ9月会合で利下げを検討する可能性が示された。
2.金融政策の評価:インフレ重視から労働市場や景気をより意識したスタンスに軌道修正
政策金利の据え置きは予想通りであった。また、声明文の景気判断部分に関する変更についても違和感はない。一方、9月利下げの可能性が高まる中、金融政策ガイダンス部分で早期の利下げ開始の可能性を示唆する表現に変更されなかったことは予想外だった。
パウエル議長の記者会見では、労働需給が改善され労働市場の全体的な状況がパンデミック前の状態にほぼ戻ったことが示された。また、労働市場は力強いが過熱していないとし、インフレをもたらすものではないとの見解が示されたほか、労働市場の大幅な落ち込みがあれば対応するとし、金融政策の意思決定に際して従前のインフレ重視から労働市場や景気をより意識したスタンスに軌道修正したことが示された。
一方、インフレに関してはサービスインフレが落ち着いてきていることなど、ここ数カ月のインフレ低下を評価した上でインフレが2%に向けて順調に低下していると確信するには、もっと多くのデータをみる必要があると引続き慎重な姿勢を示した。このため、早ければ9月会合で利下げを検討する可能性が示されたものの、今日の時点で9月利下げを事実上予告するような踏み込んだ発言は控えられた。
当研究所は本日のFOMC会合を受けて、9月のFOMC会合までに発表されるインフレ指標が余程上振れない限り、9月に利下げが開始されると予想する。また、労働市場の減速が明確になってきていることもあって、24年内は12月にも追加の利下げを実施する可能性が高いだろう。
パウエル議長の記者会見では、労働需給が改善され労働市場の全体的な状況がパンデミック前の状態にほぼ戻ったことが示された。また、労働市場は力強いが過熱していないとし、インフレをもたらすものではないとの見解が示されたほか、労働市場の大幅な落ち込みがあれば対応するとし、金融政策の意思決定に際して従前のインフレ重視から労働市場や景気をより意識したスタンスに軌道修正したことが示された。
一方、インフレに関してはサービスインフレが落ち着いてきていることなど、ここ数カ月のインフレ低下を評価した上でインフレが2%に向けて順調に低下していると確信するには、もっと多くのデータをみる必要があると引続き慎重な姿勢を示した。このため、早ければ9月会合で利下げを検討する可能性が示されたものの、今日の時点で9月利下げを事実上予告するような踏み込んだ発言は控えられた。
当研究所は本日のFOMC会合を受けて、9月のFOMC会合までに発表されるインフレ指標が余程上振れない限り、9月に利下げが開始されると予想する。また、労働市場の減速が明確になってきていることもあって、24年内は12月にも追加の利下げを実施する可能性が高いだろう。
3.声明の概要
(金融政策の方針)
(フォワードガイダンス)
(景気判断)
(景気見通し)
- 委員会はFF金利の目標レンジを5.25-5.5%に維持することを決定(変更なし)
- 加えて、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)
(フォワードガイダンス)
- 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
- FF金利の目標レンジの調整を検討する際には、委員会は入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを注意深く評価する(変更なし)
- 委員会はインフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切でないと考えている(変更なし)
- 委員会はインフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
- 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
- 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
- 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)
(景気判断)
- 最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大を続けていることを示唆している(変更なし)
- 雇用の増加は緩やかになり、失業率は上昇したが低水準を維持している(雇用の増加に関して前回の「依然として力強く」”remained strong”から「緩やか」”moderated”に下方修正したほか、失業率に関しても「上昇したが」”moved up but”を追加し下方修正)
- インフレ率はこの1年で緩和したが、依然としてやや高い水準にある(前回から「やや」”somewhat”を追加しインフレの評価を小幅に下方修正)
- ここ数ヵ月は委員会の物価目標2%に向けて幾分進展している(前回から「幾分」”some”を追加し小幅変更)
(景気見通し)
- 委員会は雇用とインフレの目標達成に向けたリスクのバランスは、引き続き改善に向かっていると判断している(前回の「この1年でより良いバランスに移行」”moved toward better balance over the past year”から「バランスは引き続き改善に向かっている」”continue to move into better balance”に表現変更)
- 経済見通しは不透明であり、委員会はデュアルマンデートの両サイドのリスクに高い注意を払っている(高い注意を払う対象として前回がインフレリスクに限定していたのに対して、今回は「デュアルマンデートの両サイドのリスク」”risks to both side of its dual mandate”に表現変更して労働市場も注視していく姿勢を明確化)
4.会見の主なポイント(要旨)
記者会見の主な内容は以下の通り。
- パウエル議長の冒頭発言
- 本日、FOMCは政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定した。我々は需要を供給と一致させ、インフレ圧力を低下させるため、金融政策の制限的なスタンスを維持している。
- 労働市場では需給バランスが改善した。広範な指標は労働市場の状況がパンデミック前夜とほぼ同じ状態に戻ったことを示唆している。
- インフレ率は過去2年間で顕著に低下したが、長期目標である2%をやや上回る水準にある。
- 労働市場が冷え込み、インフレ率が低下するにつれて、雇用とインフレの目標達成に対するリスクはより良いバランスに移行し続けている。我々はデュアルマンデートの両側面におけるリスクに注意を払っている。
- 我々は引き続き会合毎に意思決定を行っていく。経済が堅調に推移しインフレが持続するのであれば、適切な限り、現在のフェデラルファンド金利の目標レンジを維持することができる。労働市場が予想外に弱まったり、インフレ率が予想以上に急速に低下した場合には対応する用意がある。
- 主な質疑応答
- (市場が織り込む9月利下げは妥当だと考えているのか)今後の会合については何も決定していない。委員会のおおまかな感覚は経済が政策金利を引き下げるのに適切な時点に近づいているというものだ。インフレ率が急速に低下している、あるいは予想とほぼ一致している。成長率がそれなりに堅調に推移している。労働市場が現状と一致している、このような状況であれば9月の会合で利下げが行われる可能性があるだろう。
- (労働市場が均衡に戻ったのなら、なぜ引締め的な政策が必要なのか)労働市場はここ数年の過熱状態から正常な状態へと移行している。我々は労働市場の状況を注意深く観察っしている。労働市場の大幅な落ち込みがみられるようであればそれに対応する。
- (ここ数ヵ月の良好なインフレ率の評価)現在の状況は昨年より少し良くなっている。昨年の低下の大部分は持続不可能な速度で財価格が下落したことによる。足元は財価格に加え、住宅や住宅を除いたサービス価格にも進展がみられている。しかしインフレが2%に向けて順調に低下していると確信するには、もっと多くのデータをみる必要がある。
- (失業率がサームルールに抵触するほど上昇していることを心配しているのか、利下げへの影響はどうか)我々は注意深く見守っている。サームルールは認識しているが、何かが必ず起こるとは限らない。歴史は繰り返さない、韻を踏むという言葉は経済に関しても正しい。同じことが繰り返されるとは決して思わない方が良い。逆イールドなど多くのみかけ上のルールが反故にされてきた時代があることを忘れてはならない。
- (9月の利下げが非政治的であり続けることが可能か)我々は何も決定していない。我々は政党や政治家、あるいは政治的な結果を支持したり反対したりするために、我々のツールを使うことは決してない。選挙前、選挙中、選挙後に我々が行うことは、データ、見通し、リスクのバランスに基づくものであり、それ以外のものではない。
- (ハードランディングの可能性について)その可能性は低いだろう。景気が過熱しているとか、急激に弱くなっていると考える理由はない。今のデータにはそれがない。今データにあるのは堅調なペースで成長している経済だ。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年08月01日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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