2024年07月29日

米個人所得・消費支出(24年6月)-コアPCE価格指数(前月比)は前月から小幅上昇も市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想を下回る一方、個人消費は市場予想に一致

7月26日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%)と+0.5%から小幅下方修正された前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.3%(前月改定値:+0.4%)と+0.2%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+0.3%に一致した。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.2%(前月改定値:+0.4%)と+0.3%から小幅上方修正された前月、市場予想の+0.3%を下回った(図表5)。貯蓄率1は3.4%(前月:3.5%)と前月から▲0.1%ポイント低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月:横這い)と前月を小幅に上回った一方、市場予想(+0.1%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月:+0.1%)とこちらも前月から小幅上昇、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.5%(前月:+2.6%)と前月から低下、市場予想(+2.5%)に一致した。コア指数は+2.6%(前月:+2.6%)とこちらも前月から横這い、低下を見込んだ市場予想(+2.5%)を上回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:消費が堅調を維持する一方、物価上昇圧力の緩和が持続

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)の名目ベースは24年4月が+0.2%と3月の+0.7%から大幅低下したものの、5月が+0.2%ポイント上方修正されたほか、6月も+0.3%と堅調な伸びを維持した(図表1)。

これに対して可処分所得(前月比)は24年2月以降、個人消費の伸びを下回る状況が続いており、6月の貯蓄率は3.4%と22年12月以来の水準に低下した。このため、24年初から消費者は貯蓄を取り崩して消費する傾向が続いており、労働市場の減速感が強まっている中で今後は足元の堅調な個人消費を維持するのは困難となろう。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数の前月比は総合指数、物価の基調を示すコア指数ともに前月から小幅上昇したものの、依然として小幅な伸びに留まっている。とくに、コア指数は23年10-12月期の前期比年率+2.0%から24年1-3月期に+3.7%へ大幅上昇するなど物価上昇圧力の高まりが懸念されていたが、4-6月期には+2.9%に低下しており、4月以降物価上昇圧力の緩和傾向が続いていることを確認した。この結果、当月の統計は個人消費が堅調を維持する中でインフレが低下するソフトランディングシナリオに沿った結果と言えよう。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが鈍化

6月の個人所得(前月比)では、賃金・給与が+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。6月の雇用統計で失業率が4.1%と21年11月以来の水準に上昇するなど労働市場は減速感が強まっており、賃金上昇圧力が緩和している可能性を示唆している。一方、移転所得が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びを維持したものの、利息配当収入が+0.1%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化したほか、自営業者所得が▲0.1%(前月:+0.1%)とこちらは前月からマイナスに転じた。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、6月の名目が+0.2%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は+0.1%(前月:+0.3%)とこちらも前月から伸びが鈍化した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連の落ち込みで耐久財消費が減少

6月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.4%(前月:+0.4%)と前月並みの伸びを維持した一方、財消費が+0.1%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費は、耐久財が▲0.2%(前月:+1.5%)と前月からマイナスに転じた一方、非耐久財が+0.2%(前月:▲横這い)とこちらは前月からプラスに転じた。

耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+1.3%(前月:+1.3%)と前月並みの伸びを維持したほか、家具・家電が+1.0%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した。一方、自動車・自動車部品が▲3.2%(前月:+2.7%)と前月から大幅なマイナスに転じて耐久財消費全体を押し下げた。

非耐久財では衣料・靴が+0.8%(前月:+0.9%)と前月から小幅に伸びが鈍化したものの、ガソリン・エネルギーが▲2.5%(前月:▲3.5%)とマイナス幅が縮小したほか、食料・飲料が+0.4%(前月:▲0.1%)とプラスに転じて非耐久財消費全体を押し上げた。

サービス消費は、輸送サービスが▲0.2%(前月:+1.4%)と前月からマイナスに転じたほか、医療サービスが+0.2%(前月:+0.7%)、外食・宿泊が横這い(前月:+0.3%)、娯楽サービスが+0.1%(前月:+0.3%)と伸びが鈍化した。一方、住宅・公共料金が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びを維持したほか、金融サービスが+0.7%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じるなどマチマチの結果となった。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格(前月比)は2ヵ月連続のマイナス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.1%(前月:▲2.1%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.1%(前月:+0.1%)とこちらは小幅ながら2ヵ月連続でプラスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+2.0%(前月:+4.8%)と4ヵ月連続でプラスとなったものの、前月からプラス幅が縮小した(図表7)。食料品価格指数は+1.4%(前月:+1.3%)と前月から小幅に伸びが加速したほか、84ヵ月連続でプラスとなった。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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(2024年07月29日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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