2024年05月29日

中国経済の見通し-政策頼みの景気回復。不動産リスクは残存、貿易摩擦も新たな火種に

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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■要旨
 
  1. 中国の2024年1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.3%と、前期(23年10~12月期)の+5.2%から伸びが小幅に加速した。季節調整後の前期比も+1.6%(年率換算+6.6%)と、前期(同+1.0%)から加速している。3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で掲げた今年の成長率目標である「+5%前後」に対して、比較的好調な出だしとなった。もっとも、改善の主因は外需であり、4月も内需は依然力強さを欠く状況にある。
     
  2. 需要動向をみると、消費については、雇用・所得の先行きに対するマインドは一段の悪化に歯止めがかかる兆しがみえるものの、4月も個人消費の勢いは弱い。他方、政府消費は4月に持ち直した。投資については、4月も製造業投資の堅調が続く一方、インフラ投資が減速した。また、不動産開発投資は減少幅が小幅に拡大した。輸出については、3月に一時悪化したが、4月には再び改善している。
     
  3. 産業動向をみると、1~3月期には製造業主導の改善がみられたが、4月も同様の傾向が続いているようだ。鉱工業生産は、3月に一時減速した後、4月には輸送機械や情報通信機械を中心に再び改善した。サービス業生産については、4月にかけて減速が続いている。ゼロコロナ終了後のペントアップ需要がみられた前年要因のほか、国家統計局は労働節休暇期間の前年とのずれによる影響を挙げている。
     
  4. 経済政策の動向をみると、財政政策に関して、インフラ投資は相対的に高い伸びを維持しているものの、浮き沈みがみられ、4月には減速した。金融政策に関しては、24年2月の預金準備率引き下げやLPR(5年)の低下など緩和が継続されている。(図表-15)。もっとも、需要不足の継続などを背景に、社会融資総量の伸びが減速している。4月30日に開催された中央政治局会議では、不動産政策に関して、地方国有企業による在庫住宅の買い取りを行うなど新たな方針が示された。
     
  5. 今後については、足もとの実績等を踏まえ、24年の成長率を前回(+4.6%)から+4.8%へと上方修正したが、25年にかけて段階的に減速するとの見通しに変わりはない。公共投資の下支えのほか、政策支援による製造業の堅調が当面続くだろう。もっとも、不動産追加対策の効果は限定的で、不動産市場正常化には依然時間がかかる見込みだ。25年には不動産市場の低迷に出口がみえてくるが、不動産開発投資は引き続き抑制されるだろう。また、製造業の活動が調整局面に転じると予想されるほか、インフラ投資も減速が続くとみている。不動産や地方債務など国内起点のリスクは従来よりもやや後退したが、依然予断を許さない。また、欧米諸国との摩擦により、外需が不安定化するリスクは従来に比べて高まっている。


■目次

1.中国経済の概況
2.需要の動向
3.産業の動向
4.経済政策
5.中国経済の見通し
  1|メインシナリオ
  2|リスク要因

(2024年05月29日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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