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- 中国、不動産不況下の春節消費~コロナ前の水準に戻るも、根強く残る倹約志向
2024年02月21日
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中国では、2023年にゼロコロナ政策が終了したが、不動産不況の長期化により経済は振るわない状況が続いている。個人消費も例外ではなく、雇用・所得に対する先行き不安などから、家計のマインドは冷え込んでおり、倹約志向が強まっている。例えば、家計の1人当たり可処分所得に対する消費支出の比率により消費性向をみると、23年は22年に比べれば改善したものの、コロナ前の2019年に比べると依然低い水準にとどまっている(図表1)。24年に入り中国経済が好転し、自律的な回復力を取り戻すことができるか否か、個人消費の動向が重要なポイントのひとつとなる。
そうしたなか、2/10~2/17にかけて、毎年10月の国慶節とならぶ長期休暇である春節を迎えた。24年の消費の先行きを占ううえで、春節時の消費動向は参考となるだろう。春節期間終了後に中国の文化・観光部が公表したデータによれば、同期間中の観光客数および観光消費額は、それぞれ4.74億人回、6,300億元となり、過去最高記録となった。また、コロナ前の19年対比でみても、それぞれ19%増、7.7%増であることが併せて公表されており、消費の勢いはコロナ前を取り戻したかのようにみえる。
そうしたなか、2/10~2/17にかけて、毎年10月の国慶節とならぶ長期休暇である春節を迎えた。24年の消費の先行きを占ううえで、春節時の消費動向は参考となるだろう。春節期間終了後に中国の文化・観光部が公表したデータによれば、同期間中の観光客数および観光消費額は、それぞれ4.74億人回、6,300億元となり、過去最高記録となった。また、コロナ前の19年対比でみても、それぞれ19%増、7.7%増であることが併せて公表されており、消費の勢いはコロナ前を取り戻したかのようにみえる。
しかし、実態としてはそこまで力強い回復ではないようだ。図表2は、公表データである観光客数(人回)と観光消費額に加え、これらから試算した観光消費の単価(観光消費額÷観光客数)の3種類のデータがコロナ前の19年対比でどの程度の水準となったか、20年以降の推移をみたものだ。これをみると、観光客数および観光消費額については、23年の春先以降、コロナ前を上回る水準で概ね推移しており、上述の通り24年春節もその傾向が続いていることが分かる。他方、単価については、19年対比で90%にとどまっている。22年の国慶節以降、徐々に改善し、23年の中秋節・国慶節の際には同97.5%とほぼコロナ前の水準に戻ったが、24年に入り再び低下したことになる。振るわない経済状況が倹約志向を長引かせていると考えられ、消費の回復が一筋縄では進みづらいことを示唆している。また、コストパフォーマンス重視の消費、「身の丈」消費がトレンドとなっているようであり1、こうした消費スタイルが若者を中心に定着していく可能性もある。個人消費が構造的に変化するかについても今後注視が必要だ。
1 「双十一“逆行者”:36万人加入“不买组”,年轻人开始反消费」(『财经网』2023年11月1日)、「中国でコスパ消費がヒット」(『日本経済新聞』2023年12月14日)。
1 「双十一“逆行者”:36万人加入“不买组”,年轻人开始反消费」(『财经网』2023年11月1日)、「中国でコスパ消費がヒット」(『日本経済新聞』2023年12月14日)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年02月21日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1787
経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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