2024年04月18日

「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2023年】(1)~東京23区の新築マンション価格は前年比9%上昇。資産性を重視する傾向が強まり、都心は+13%上昇、タワーマンションは+12%上昇

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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2-2.「エリア別価格指数」の算出
(1) 「エリア別価格指数」(年次)の算出結果
図表-9に、東京23区の「エリア別価格指数(年次)」の算出結果を示した。同指数は、東京23区を、居住世帯等の特徴が異なる4つのエリア(都心7・南西部8・北部9・東部10)に分類したサブインデックスである。

2023年の価格指数(2005年=100)は、都心が「241.5」(前期比+13%)、南西部が「197.7」(同+6%)、東部が「192.8」(同+8%)、北部が「192.1」(同+10%)となり、都心が最大の上昇率を示す結果となった(図表-9)。

リクルート「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、「住まいの購入理由」として、「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから」(36%)との回答が最も多く、次いで、「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」(32%)との回答が多く、同回答の割合は2003年調査の約3倍に拡大している。新築マンションを購入する際に、資産性を重視する傾向が強まっており、都心に所在するマンション価格が大きく上昇した可能性が考えられる11
図表-9 「新築マンション価格指数」(東京23区、都心、南西部、北部、東部)(2005年=100、年次)
 
7 都心:「千代田区」・「中央区」・「港区」・「渋谷区」・「新宿区」・「文京区」
8 南西部:「品川区」・「目黒区」・「大田区」・「世田谷区」・「杉並区」・「中野区」
9 北部:「北区」・「板橋区」・「練馬区」・「豊島区」
10 東部:「江戸川区」・「江東区」・「台東区」・「墨田区」・「荒川区」・「足立区」・「葛飾区」
11 日本経済新聞「マンション再販価値、東京都心突出 高い資産性に人気」2024/3/9
(2) 「エリア別価格指数」(半期)の算出結果
続いて、図表-10に、半期毎の算出結果を示した。

2023年下期の価格指数(2005年上期=100)は、都心「254.8」>東部「205.8」>北部「204.9」>南西部「202.4」となった。
図表-10  「エリア別価格指数」 (2005年上期=100、半期)
2023年の上昇率を上期下期で確認すると(図表-11、参考図表-1,2)、都心は「上期7.7%/下期7.9%」、南西部は「上期1.1%/下期1.6%」となり、上期と下期が同水準の価格上昇であった。これに対して、北部は「上期4.1%/下期8.1%」、東部は「上期2.5%/下期8.4%」となり、下期にかけて価格上昇率が高まる結果となった。
図表-11 「エリア別価格指数」の変動率(2023年・前期比)
2023年の東京23区の転入超過数をエリア別にみると、東部が+18,869人(2019年対比+24%)、北部が+9,091人(同▲31%)、南西部が+13,953人(同▲46%)、都心が+5,678人(同▲65%)、となった(図表-12)。都心と南西部の回復が遅れる一方、北部は約7割の水準、東部はコロナ前の水準を大きく上回った。

読売広告社の調査12によれば、コロナ禍後にマンション購入検討層に「住みたいエリア」を尋ねたところ、「郊外」(52.8%)との回答が「都心」(38.3%)との回答を上回った。

コロナ禍以降、在宅勤務の浸透等に伴いライフスタイルが変化するなか、都心ではマンション価格が既に高騰していることもあり、北部や東部で購入を検討する層が増えている13と推察される。
図表-12 エリア別転入超過数(日本人・東京23区)
 
12 読売広告社「withコロナ住まい調査」
13 朝日新聞「郊外のマンションも値上がり 共用部充実、街の利便性で差別化はかる」2023/5/26
2-3.「タワーマンション価格指数」の算出
(1) 「タワーマンション価格指数」(年次)の算出結果
図表-13に、東京23区の「タワーマンション価格指数(年次)」の算出結果を示した。同指数は対象をタワーマンションに限定したサブインデックスである。

総務省「国勢調査」によれば、東京23区の高層分譲マンションに居住する世帯14は、2005年の約5.5万世帯から2020年の約16.5万世帯へと約3倍に増加した。東京23区では、「タワーマンション15」等の高層分譲マンションに居住する世帯が大きく増えている。
2023年の価格指数(2005年=100)は「250.0」(前年比+12%)と大幅に上昇し、東京23区の上昇率(同9%)を上回った。

タワーマンションは、住戸の多さゆえ合意形成や管理組合運営の難しさ16等が、しばしば指摘されている。一方、前述の通り、資産性を重視する傾向が強まるなか、実需層の購入に加えて、資産性に着目した国内外の投資資金が流入している17。円安の進行に伴い、海外の個人富裕層による購入事例も増加しており18、価格上昇を後押ししている可能性が考えられる。
図表-13   「タワーマンション価格指数」 (2005年=100、年次)
東京23区におけるタワーマンションの新規供給戸数を確認すると、2016年以降、2千戸から4千戸の間で推移しており、2005年(約8千戸)の半数未満に留まっている。また、「タワーマンション」が東京23区全体の供給数に占める割合は、2006年の35%をピークに低下し20%台で推移している(図表-14)。

タワーマンションは良好な需給環境を背景に、価格指数は2005年対比で約2.5倍の水準に上昇となった。
図表-14 タワーマンションの新規供給戸数(東京23区)
 
14 「持ち家」でかつ「15階建て以上の共同住宅」に居住する世帯
15 建築基準法において、高さ60mを超える建築物については、特殊な構造計算が必要とされ、国土交通大臣による認定が必要と定められている。高さ60㎡を超えるのが概ね20階以上であることから、一般的に、20階建て以上のマンションは「超高層マンション」と呼称される 。そこで、本稿では、階建て20階以上のマンションを「タワーマンション」と定義した。
16 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社・大和ライフネクスト株式会社「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」によれば、タワーマンションでは、実際に居住している区分所有者と、賃貸や投資目的で保有する区分所有者との間で管理に対する価値観が異なること等により、大規模修繕工事等の多額の支出などに向けた合意形成が困難となる可能性が指摘されている。
17 三菱地所レジデンスが東京湾岸部のタワーマンション購入者に行ったアンケートによれば、「購入目的」について、「自己居住用」が61.2%、「投資用」が29.5%であった。
18 毎日新聞「中国人富裕層、東京のタワマン爆買い 消えた「予算100億円」の人物」2024/3/24

(2024年04月18日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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