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2024年04月12日
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(リスク評価)
(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 成長率に対するリスクは引き続き下方に傾いている
- 金融政策の効果が予想以上に強く生じれば成長率が低下する可能性がある
- 世界経済のさらなる低迷や世界貿易の更なる減速もまた成長率の重しになり得る
- ロシアの正当化されないウクライナとの戦争、および中東での悲劇的な紛争は地政学的リスクの主要要因である
- これは企業や家計の将来への景況感を低下させ、また世界的な貿易が混乱することで、成長率がさらに鈍化するかもしれない
- インフレ率の低下が予想よりも迅速に進み、実質所得の上昇が予想以上に支出を増加させること、世界経済が予想以上に強く成長することが成長率を押し上げる可能性がある
- インフレ率の上方リスクには、特に中東における地政学的緊張の高まりがエネルギー価格や運送費用を短期的に上昇させ、世界貿易を混乱させることが含まれる
- インフレ率はまた、賃金が予想以上に上昇し、利益率がより強固になることで押し上げられる可能性がある
- 対照的に、インフレ率は金融政策が予想以上に需要を低下させること、もしくは、予想外に世界経済が悪化することで低下する可能性がある
(金融・通貨環境)
- 市場金利は3月の会合以降、総じて安定しており、広範な資金調達環境は制限的な状況が継続している
- 企業向け貸出金利は、1月の5.2%から2月には5.1%までやや低下した
- 住宅ローン金利は1月の3.9%から2月には3.8%となった
- 最新の企業貸出調査によれば、24年1-3月期は、依然として高い借入金利とそれに関連して投資計画が削減されることが、貸出需要の減少をもたらしている
- 貸出信用基準は引き続き厳しく、企業向け貸出はやや厳格化、住宅ローンはやや軟化した
- こうした背景から、信用動向は引き続き弱い
- 銀行の企業向け貸出は前年比で1月の0.2%から若干加速し、2月には0.4%となった
- 家計向け貸出伸び率は2月には前年比0.3%で変化がなく、M3で計測される広義通貨は2月には0.4%のわずかな成長となった
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- あなたは、制限が緩和されるには自信を強める必要があると言った、また特定の政策金利経路は事前に確約しないとも言った。次回6月の会合までに自信があなたの言う水準まで到達すると考えているか。また、今日すでにその時が来たと考える同僚がいたのか知りたい。
- 6月にはより多くのデータと多くの情報、新しい予測を知ることができ、予測はそれが完成するまでに公表された情報が反映される
- データに依存している
- 全ての情報、データ、予測を見て、インフレ率が持続的に目標に戻るのか、その結果として十分に自信が強まったのかを判断する
- 4月の限定されたデータを基に十分に自信が強まったと考えるメンバーも数人(a few)いたが、大多数の総裁が考える、6月のより多くのデータを得てから自信を強めることが望ましいとの意見で合意した
- ユーロ圏のために政策を決定すると言うだろうことは承知しているが、この24時間ほどのサプライズだった米国のインフレ率の上振れデータとその反応を受け、ECBの将来の政策金利経路に関する考えは変わったか
- 私はデータ依存であり、FRB依存ではないと述べてきた
- これらの数字はFRBからではなくCPIからであり、6月に公表される予測に組み込まれる予定である
- 米国は大きな市場であり、経済規模も大きく、主要な金融センターであるため、すべての事実は予測に反映される
- FRBに関して、FRBが利下げをしなかった場合、ユーロドルの為替相場にも影響が見られるだろう。ユーロ相場がパリティ以下に低下することにどの程度懸念しており、またインフレに対してはどう見ているか
- 他の中央銀行が何をしようとして、何をしようとしていないのか推測するつもりはない
- 物価安定への影響、輸入インフレやその他に関するインフレへの影響といったことは考慮され、注視され、また予測に組み込まれる
- 我々は為替相場を目標にしておらず、為替についてのコメントはしない
- 政策手段であるバランスシートを現在の計画よりも早く削減しようという議論をしたか
- (バランスシートに関して)現在の計画以上の議論はしなかった
- インフレ率は21-22年に上昇して世界的な現象になったが、ECBは当初、ユーロ圏にはそれほど広がらない、ユーロ圏のインフレ率が米国ほどには上昇しないと予想してきた。今回は異なり、インフレ率のさらなる低下に抵抗する米国は違うとする理由は何か
- 6月に条件が満たされるという自信について、1か月前のECBウォッチャー会議で講演したときから弱まったか、そうではないか
- 講演で述べたことはすべてではないかもしれないが、大部分は今でもあてはまると考えている
- ユーロ圏のインフレ率の性質は米国のインフレ率の性質とは異なる
- 主因が異なり、財政政策が異なり、米国の消費者の消費が異なり、投資が異なるため、2つのインフレ率が同じであるとの仮定を用いて結論を出すことはできない
- 我々は、自身の管轄するユーロ圏に焦点を当てなければならず、海外経済で起きたことを考慮はするものの、ユーロ圏で起きることが米国で起きることの鏡とは仮定しない
- 大西洋両岸の乖離について。予想される金融政策の乖離が現実になった場合、ECBは米国のより制限的な金融環境からの波及効果によってより金融緩和をしなければならないのか、それとも為替市場がユーロ圏のインフレ率の潜在的な上昇圧力となるため、少ない緩和となるのか
- 緩和が多いのか少ないのか、データを入手して分析するまでは、いずれの経路も事前に確約することはできない
- エネルギー市場について。ここ数週間で原油価格がおよそ10%上昇した。これはどの程度の懸念であるのか、6月の利下げから脱線する可能性もあるか
- ここ数週間、数か月で展開されるエネルギー価格の変動は、比較対象の基準としてふるまう
- これまでのインフレ率の低下は直線的ではなく、25年半ばに向けインフレ率が目標値まで現在の水準前後で変動するだろう
- エネルギー価格はこの観点から重要となる
- ECBが特定の金利経路を確約しないことについて。経路の時期、例えば制限的な時期から過去で述べたような正常化の時期といったことを期待することができるのか
- 特定の時期に縛られることはない
- 方向性はかなり明確だが、特定の経路を事前に確約することはなく、データ次第である
- TPIについて。いくつかの国が過剰財政赤字手続き(excessive deficit procedures)の対象になる可能性があるため、市場に小さな緊張が生じ始めているかもしれない。TPIの適格性の第一基準に過剰財政赤字手続きが言及されているが、この事象のTPIへの影響はどの程度か
- 非常に明確な公表文が示されている
- 過剰財政赤字手続きは我々が適格性を評価する上での4つの要素のうちの1つであり、その特定部分で示されている代替条件であり、理事会により考慮される
- 予算政策について。ドイツはすでに予算政策を制限的にしており、イタリアやフランスもまた公的赤字が予想よりも拡大していたので、制限的にしなければならない。こうした制限的な政策はECBの将来の利下げを加速させるかもしれない要因になるのか
- 財政面については、金融政策声明に含まれている、政府は引き続きディスインフレ過程が持続的に進行するようエネルギー関連支援策を終了させるべきである、とのコメントに限定したい
- 今朝の理事会ではヴァルディス・ドンブロウスキス氏が同席するという特権に恵まれ、修正された経済統治枠組みの欧州議会での採決が今期末までに行われるだろうことを確認した
- 政府がその枠組みの中で運営されることが期待され、かつ金融政策の観点からも指針となる原則で助けになることから、良いニュースである
- サービスインフレはかなり粘着的である。過去5か月ほぼ横ばいであり、基調的な勢い(momentum)は現在加速している。ECBはサービスインフレが4%付近にとどまったとしても6月の利下げを理論的に行えるのか
- 速やかに、インフレ率が持続的な2%目標に戻るために必要な決定を下すにあたって、すべてが2%に戻るまで待つつもりはない
- いくつかの項目がやや高い状況になるだろうことは避けられない
- 我々はすべてを見て判断し、その判断に基づいて自信が十分かを決定する
- インフレを取り巻くリスクバランスに関する理事会の議論について少し教えて欲しい。あなたの同僚の何人かはリスクバランスがより均衡していると提案している。あなたはどのような立場か
- インフレに関するリスクについて熱心な総裁が1・2名いることは承知しているが、我々はインフレに関しては、常にそうした評価を避けようとしてきた
- 歴史的に我々は、上方なのか下方なのか概ね均衡しているのかは、経済活動に関して決定しており、インフレ率に関してではない
- 原則として、リスクを上向かせる要素と下向かせる要素を特定することを好んでいる
- 不確実性の水準を見ると、インフレとの関係において、これは正しいアプローチだろう
- 原油価格についての追加質問。今後のインフレ率に関連して、どの程度の上昇懸念があるのか
- 我々は主に先物価格を基に評価を行っている
- また、先物価格がどのように動くのかも見ている
- あなたが言及した銀行貸出調査について。そこから主に何が得られるか。企業からの需要が減っているか、住宅ローンや消費者ローンはやや持ち直しているのか
- 銀行貸出調査は有益だが、あくまでのサーベイ調査である
- ハードデータとしては顧客向けの金利や貸出残高もある
- 銀行貸出調査だけを見れば、銀行が企業向け貸出需要はやや低下し、家計向けはやや高いことを期待していることが見て取れる
- 貸出残高を見れば企業向け貸出残高は大きくはないが持ち直し、家計向けも前月から横ばいではあるが、やや持ち直している
- 法人向け貸出と家計向け貸出の双方で借り手に提示される金利はやや低下している
- もし現在のインフレ率が需要ショックではなく供給ショックから生じている場合、再び3%を超えるかもしれない場合、インフレ率のどの程度の変動が許容されるか。先ほど言及したように前回のインフレ急上昇は供給ショックから始まった
- 重要なのはデータであり、予測である
- 供給ショックに直面した場合、ベースラインに埋め込まれたデコボコからどの程度乖離しているのか見る必要がある
- しかしデコボコはあり、線形ではない
- 公的赤字の幅は私が思い出せる限り、縮小している。制限的な金融政策が大きな緊張を生むことなく実施できたことは喜ばしいか、それとも赤字拡大の動機付けになることを恐れているか
- 勝利していないし祝ってもいないが、インフレ率の低下を観察し、ディスインフレ過程が進行中であり、我々が採用している金融政策が、これまで大きく貢献していることは我々に安心感を与えている
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年04月12日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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