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晩年に関する不安~老後とその先の不安には「近居」が“程よい距離感”

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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子どもの同居等状況や、価値観、終活をすることと、9つの項目に対する不安度合いの関係をみるために、不安度合い5(5~1点)を被説明変数とし、性、年齢、未既婚、就学を終えた子どもの同居等状況、「親の面倒は子どもが見るべきである(5~1点)」という考え方、「終活をしている(ダミー)」を説明変数として、重回帰分析を行った。経済的ゆとり(5~1点)、時間的ゆとり(5~1点)、主観的健康感(4~1点)は調整変数として投入した。推計結果を図表4に示す。
子どもの同居等状況についてみると、就学を終えた子がいない場合に比べて遠居と近居で「家族に介護してもらえない」「相続が円滑に行われない」「望むような葬儀が行われない」の不安が、近居ではそれに加えて「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」「 「家」が途絶えてしまう」の不安がマイナスになっていた。子どもがいることで、介護をしてもらえる可能性があるほか、相続や葬儀について、自分の希望を伝えることができるため、不安が軽減している可能性が考えられる。遠居と近居の違いとして、近居は、「死後に自分の入るお墓を守る人がいなくなる」不安と「「家」が途絶えてしまう」の不安が軽減されている可能性があった。遠居では、親の家にはもう戻ってこない可能性が考えられる中で、近居の場合は、普段からの交流が活発であることが想像でき、「家」やお墓についての親の考えを遠居より伝えている可能性がある。
同居は、「自分の介護で家族に負担をかける」がプラスとなっていた。子が同居している場合、親が要介護状態になると同居する子の負担が増える可能性が高く、それが親の大きな不安になっている。同居は近居と比べてさらに日常から親の考えをわかっていやすいと思われるが、今回のデータでは、同居の場合はそういった不安軽減の様子は見られなかった。同居をしている中には、子どもが未婚であったり、子どもの収入が安定していない等の背景をもつ可能性があるため、親の負担軽減より子の負担増加の影響が大きく影響している可能性がある。また、同居している子が未婚である場合は、将来的に結婚等で家を出る可能性があることから、同居によって不安が減る人ばかりではない可能性が考えられた。
「終活」を行っている人では、「要介護状態になったとき自分の尊厳が無視される」「望まない延命措置を受ける」「自分の介護で家族に負担をかける」の不安が高い。終末期に希望する医療等に関して日頃から関心をもっていると考えられる。
5 アンケートでは6段階で尋ねているが、回帰分析では、不安である/やや不安である/どちらともいえない・該当しない/あまり不安でない/不安でない、の5段階に集約した。
2――晩年に関する不安軽減のためにできること
子どもがいない場合と比べて、同居している子がいる場合は、親が要介護状態になったときの家族の負担増加に対する不安が大きく、親の晩年における各種不安において、不安に感じる度合いに軽減は見られなかった。遠居・近居では介護をしてもらえる点や相続が円滑に行われる点、望むような葬儀が行われる点で不安が低くなっており、子どもがいることによって不安が軽減されている可能性があった。さらに近居では家やお墓を守る点でも不安が軽減されていた。親にとって、「近居」が晩年に関する不安軽減の面では程よい距離感と言えそうだ。
子が遠居である場合、家やお墓についての考えを子どもと積極的に共有する等の工夫で、晩年における不安を軽減させることができる可能性がある。また、同居である場合は、親が要介護状態になった場合にはどのように対処するか、どういったサービスが利用できそうか、早めに子どもと相談しておくことで、将来的に親も子も不安を軽減できる可能性がある。
家やお墓を守ることは、若い世代でも気がかりである様子がうかがえた。子どもが若い頃から、親の死後の諸課題についての考え方を共有することで、将来的に、親自身も子どもも不安を軽減できる可能性が考えられた。
(2024年03月29日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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