2024年02月19日

改正ベトナム保険事業法(8)-財産保険・ダメージ保険(その2)

保険研究部 専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長 松澤 登

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■要旨

今回は2023年改正ベトナム保険事業法(以下、保険事業法)の8回目である。財産保険契約・ダメージ保険契約(信用保険など)についての2回目である。
 
保険事業法では支払われる保険金額は事故発生時の時価であることを規定する。被保険者は損害の発生や損害の拡大を防止する努力義務があるが、その費用は保険企業等が負担することとされている。保険給付としては保険金の支払、対象物件の修理のほか、代替物の提供も認められている。
 
損害の査定は保険企業等が行い、その費用は保険企業等が負担する。査定について保険契約者等と合意できない場合は独立評価者が裁定を行う。
 
保険事故の発生にあたって、被保険者が第三者に損害賠償請求権を有する場合に、保険企業等が保険金を支払ったときには、保険企業等に被保険者は損害賠償請求権を譲渡しなければならない。
 
被保険者は保険事故を惹起しないため、安全に関する法規を遵守する必要がある。保険会社は遵守状況を確認し、事故発生予防措置を適用するように推奨や要求することができる。保険企業等は、被保険者が安全措置の適用を怠った場合には保険契約を解除することができる。
 
保険事故発生時に被保険者は対象物件を放棄してはならず、損害の防止、最小化に必要な措置を取らなければならない。

■目次

1――はじめに
2――財産保険契約・ダメージ保険契約の補償範囲・方法・査定(51条~53条)
  1|財産保険契約・ダメージ保険契約の補償範囲(51条)
  2|財産保険契約・ダメージ保険契約の補償方法(52条)
  3|損害の査定(53条)
3――請求権代位(54条)
4――安全規則の遵守および被害の限定(55条・56条)
  1|安全規則の遵守(55条)
  2|保険対象物件放棄の禁止(56条)
5――おわりに
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保険研究部   専務取締役 研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

経歴
  • 【職歴】
     1985年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
     2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
     2018年4月 取締役保険研究部研究理事
     2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
     2024年4月より現職

    【加入団体等】
     東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
     東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
     大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
     金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
     日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等

    【著書】
     『はじめて学ぶ少額短期保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2024年02月

     『Q&Aで読み解く保険業法』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2022年07月

     『はじめて学ぶ生命保険』
      出版社:保険毎日新聞社
      発行年月:2021年05月

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【改正ベトナム保険事業法(8)-財産保険・ダメージ保険(その2)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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