2024年02月01日

宿泊旅行統計調査2023年12月~全国旅行支援の効果剥落で日本人延べ宿泊者数は停滞~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.延べ宿泊者数は4ヵ月連続でコロナ禍前を上回る

観光庁が1月31日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2023年12月の延べ宿泊者数は5,149万人泊(11月:5,292万人泊)となった。前年同月比は9.4%(11月:同15.5%)、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、9.3%(11月:同6.6%)と、4ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2023年12月の日本人延べ宿泊者数は3,935万人泊(11月:4,103万人泊)となり、前年同月比は▲4.5%(11月:▲2.3%)と3ヵ月連続でマイナスとなったが、2019年同月比は3.7%(11月:同1.1%)とコロナ禍前の水準を3ヵ月連続で上回った。

2023年12月の外国人延べ宿泊者数は1,214万人泊(11月:1,189万人泊)となり、2019年同月比は32.2%(11月:同31.1%)と6ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

2023年12月の客室稼働率は全体で57.9%(11月:同63.4%)、2019年同月差▲0.8%(11月:同▲2.2%)と、コロナ禍前の水準を下回っているが、マイナス幅は縮小した。

宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館は35.3%、2019年同月差0.3%(11月:同0.2%)、リゾートホテルは52.5%、2019年同月差▲0.1%(11月:同▲2.1%)、ビジネスホテルは69.6%、2019年同月差▲2.0%(11月:同▲3.2%)、シティホテルは71.4%、2019年同月差▲4.6%(11月:同▲6.8%)、簡易宿所は22.5%、2019年同月差▲7.9%(11月:同▲6.6%)であった。2019年同月差は旅館で3ヵ月連続のプラスとなったが、それ以外のタイプの宿泊施設ではマイナス圏での推移が続いた。
延べ宿泊者数の推移(2019年同月比)/客室稼働率の推移

2.日本人延べ宿泊者数は回復が足踏み

日本人延べ宿泊者数の推移(前年比) 2022年10月に開始された全国旅行支援は、すでにほとんどの自治体で終了している。現時点(1月31日)で2024年2月に旅行需要喚起策を実施する自治体は、福島県(福島県「来て。」割キャンペーン1)と岐阜県(ぎふ旅コイン2)と三重県(平日ゆったりみえ旅キャンペーン3)のみとなった。

全国旅行支援の需要喚起効果が剥落し、日本人延べ宿泊者数は2019年比では3ヵ月連続でプラスとなったが、前年比では3ヵ月連続のマイナスとなっている。物価高による実質所得の低下とホテル代の高騰を背景に、日本人旅行者数は停滞している。日本人延べ宿泊者数の先行きは、コロナ禍前と同程度で推移を続けるだろう。
 
1 一人当たり税込8000円以上の宿泊代を3000円割引。クーポンの配布はない。2月29日まで
2 条件を満たす人にクーポンを配布。2月29日まで
3 平日宿泊する人に対してクーポンを配布。2月29日まで

3.外国人延べ宿泊者数は引き続き増加する見通し

外国人宿泊者数のうち、国別が分かる従業者数10人以上の施設でみると、2023年12月の中国人延べ宿泊者数は2019年比▲38.5%(11月:同▲48.8%)とマイナス幅は縮小したが、韓国(同302.84%)、香港(同1.5%)、台湾(同38.8%)、アメリカ(同65.2%)など他の国・地域と比較すると回復が遅い状況が続いている。中国では、日中間の航空便数の回復が遅れていることや不動産市場の低迷による景気下押しの影響などから回復スピードが鈍いままとなっている。

一方、外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)の2019年比は2023年12月に全体が24.4%(11月:同22.1%)と4ヵ月連続のプラスとなり、中国を除くと同48.6%(11月:同49.5%)と8ヵ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。

外国人延べ宿泊者数の先行きは、中国人宿泊者数の回復にはまだ時間がかかる公算が大きいが、コロナ禍前に比べて為替レートが円安の水準にあることが追い風となって増加を続けるだろう。
国籍別外国人延べ宿泊者数/中国を除いた外国人延べ宿泊者数
 
4 2019年7~12月は日韓関係悪化のため訪日韓国人が大幅に減少していた
 
 

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

(2024年02月01日「経済・金融フラッシュ」)

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