2024年01月31日

新築マンション市場の動向(首都圏・全国2023年12月)~高値更新も、実需は停滞。2024年も供給減の可能性

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

2023年通年の平均価格は過去最高値を更新した。東京23区では、億ションが当たり前になり、年平均でも1億円を突破した。一方、発売戸数は、2023年初に公表された2023年の供給見込みよりも実際の供給が減少した。2024年の供給見込みは2023年発売戸数に2023年の年初予測からの減少分が加算された数値とほぼ同等となっている。
 
暦年では、2022年まではどのエリアでも発売戸数が減少し、発売価格は上昇している。発売価格の上昇をある程度抑えるため、面積を小さくしながら、単価を上昇させている傾向があった。しかし、東京23区の2023年については前年よりも面積の大きいマンションが多く供給され、やや様相が異なる。また東京23区の供給が増加する一方で、他のエリアの供給の減少が目立つ。
 
こうした動きの背景には、実際に住む人の実需需要の減退があるようだ。2023年12月の初月契約率は70%を下回り、ローンを使ってマンションを購入する実需層の需要がデベロッパーの予想よりも少なかった。また2023年通年の初月契約率は4,000万円超1億円以下では70%を下回った。前年比でも低下しており、1億円未満では価格帯が上がるほど需要の減退が大きい。一方で2億円以上の初月契約率は90%を超える。2億円以上のマンションは、現金などでマンション購入資金を1億円以上準備できている、いわゆる富裕層 が購入していることになる。
 
実需層の需要が減退した結果、1棟のマンションを完売させることは以前より難しくなっている。しかし、用地高騰は当面続き、建築費も上がり続けるとみられる。デベロッパーはマンションの販売価格を下げられないかわりに、販売戦略を変えている。デベロッパーが採るこれらの当面の戦略は、絶対数の多い実需層向けの供給戸数を減らす方向と考えられる。2024年の首都圏新築マンション市場の市場規模は、さらに縮むことになりそうだ。

■目次

1.2023年の首都圏新築マンションの価格は前年比上昇
2.高価格帯マンションの供給が増加している
3.単価の高い東京23区の供給が増え、その他エリアの供給は減っている
4.実需層の需要は減退し、市場は分断されている
5.2024年も首都圏新築マンション供給は少ないだろう
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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