2023年05月19日

マンションと大規模修繕(3)~超高層マンション(タワーマンション)の大規模修繕

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

超高層マンション(タワーマンション)の法律上の定義はないが、一般的には高さ60メートル以上、概ね20階以上のマンションを指し、大規模修繕費用は高額となる。
 
費用が高くなる原因の1つ目は、仮設工事である。仮設工事とは、目的の構造物を建設するために必要となる一時的な施設や設備の設置と除去に関する工事をいう。そのマンションにカスタマイズされたものになることが多く、複合用途で低層階に商業施設がある場合などは、足場の設置に制約が生じる場合がある。
 
2つ目は、外壁塗装・外壁タイル補修工事である。超高層マンションは、高さが高く、上層に行くほど作業には危険が伴う。「超高層マンションの外壁工事に特有の難しさは何か」を施工業者に問うアンケートでは、「安全対策」との回答が大半を占めている。
 
3つ目は、エレベーターである。超高層マンションで設置されるエレベーターは、超高速・大容量エレベーターで、価格も維持費も高い。過去の施工事例は、エレベーターの取替時期である大規模修繕2回目または築30年前後で大規模修繕工事を行った例があまりなく、参考にならない。超高層のオフィス・商業施設などのビルのエレベーター取替工事に近い高額な費用になると考えられる。
 
思いもよらない費用が増えて修繕費用が増大したり、積立金の不足が発生したりする可能性も一般的なマンションよりも高いと考える。現時点では、超高層マンションの大規模修繕工事では、一般的なマンションよりも余裕を持った資金計画を立て、予備の費用を多く積み立てておく必要があると思う。
 
一方で、建設業者の立場になってみれば、工事費用が多額となる超高層マンションの大規模修繕は魅力的な分野である。今後は各社がノウハウの蓄積のために積極的に受注し、新しい技術の導入が進むと考えられる。
 
超高層マンションは数百戸以上の大規模なコミュニティであることが多い。普段から管理組合の運営を前向きな姿勢に保ち、適切な時期に工事計画を策定できるように居住者間の意思疎通を図ることができる土壌を作っておくことが極めて重要となるだろう。

■目次

【超高層マンションとその他のマンションの大規模修繕工事の違い】
【大規模修繕費用が高くなる原因(1):仮設工事】 
【大規模修繕費用が高くなる原因(2):外壁塗装・外壁タイル補修工事】
【大規模修繕費用が高くなる原因(3):エレベーター】
【超高層マンションの大規模修繕工事の成熟期は2030年後半以降か】
【超高層マンションの大規模修繕には一般的なマンションより想像力と計画性が必要】
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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