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2025年04月03日
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2024年の国内ホテル市場は、訪日外国人の宿泊需要と外国資本によるホテル投資が牽引し、活況を呈した1年となった。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2024年の延べ宿泊者数は前年比5.3%増加し、コロナ禍前(2019年)の水準を9.1%上回った。このうち、日本人宿泊者数は前年比▲2.6%とやや低調であったが、外国人宿泊者数は+38.9%と大幅に伸び、全体に占める外国人の割合は2019年の19%から2024年には25%に拡大した。また、2024年のインバウンド消費額は8.1兆円(2019年比+69.1%)と過去最高を更新し、訪日外客数は3,687万人(同+15.6%)、1人当たり旅行支出額は22.7万円(同+43.3%)に増加した。2019年と比較すると、訪日人数の多い韓国や台湾などアジア諸国の支出単価が大きく上昇したほか、もともと支出単価の高かった欧米諸国からの訪日客数が増加し、インバウンド消費全体を押し上げている。JTBによると、2025年の訪日外客数は4,020万人となる見通しであり、引き続き宿泊需要と消費額の拡大が期待される。
一方、アジア太平洋地域全体でみると、コロナ禍からのインバウンド客数の回復が遅れている(図表1)。国連世界観光機関(UN Tourism)によると、2024年のインバウンド客数(速報値)はアジア太平洋地域全体が2019年比▲12.9%、オセアニアが▲17.2%、東北アジアが▲14.2%、東南アジアが▲12.1%、南アジアが▲7.8%であった。円安や経済低迷の影響で日本や中国からの旅行者数が減少しており、アジア太平洋地域のなかで日本の回復スピードが際立っていると言える。
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2024年の延べ宿泊者数は前年比5.3%増加し、コロナ禍前(2019年)の水準を9.1%上回った。このうち、日本人宿泊者数は前年比▲2.6%とやや低調であったが、外国人宿泊者数は+38.9%と大幅に伸び、全体に占める外国人の割合は2019年の19%から2024年には25%に拡大した。また、2024年のインバウンド消費額は8.1兆円(2019年比+69.1%)と過去最高を更新し、訪日外客数は3,687万人(同+15.6%)、1人当たり旅行支出額は22.7万円(同+43.3%)に増加した。2019年と比較すると、訪日人数の多い韓国や台湾などアジア諸国の支出単価が大きく上昇したほか、もともと支出単価の高かった欧米諸国からの訪日客数が増加し、インバウンド消費全体を押し上げている。JTBによると、2025年の訪日外客数は4,020万人となる見通しであり、引き続き宿泊需要と消費額の拡大が期待される。
一方、アジア太平洋地域全体でみると、コロナ禍からのインバウンド客数の回復が遅れている(図表1)。国連世界観光機関(UN Tourism)によると、2024年のインバウンド客数(速報値)はアジア太平洋地域全体が2019年比▲12.9%、オセアニアが▲17.2%、東北アジアが▲14.2%、東南アジアが▲12.1%、南アジアが▲7.8%であった。円安や経済低迷の影響で日本や中国からの旅行者数が減少しており、アジア太平洋地域のなかで日本の回復スピードが際立っていると言える。
アジア太平洋地域で不動産投資を検討する外国資本にとって、日本の観光市場の成長力は魅力的である。2024年の不動産取引市場における外国資本の割合は31%であったのに対して、ホテルセクターでは47%に達した。投資対象は大型リゾートホテルからバジェット型ホテルのポートフォリオ取引まで多岐にわたり、投資家層も政府系ファンドや北米系・アジア系の民間企業など多様である。また、近年では外資ブランドへの転換を前提とした取引事例が増えているほか、ホテルオペレーター自らが日本市場への進出やバリューアップ投資に積極的であり、2025年は複数のハイエンドラグジュアリーブランドの初出店が予定されている。
英国の調査会社ユーロモニターインターナショナルが発表した「2025年に訪れたい世界の都市100選」では、東京はパリ、マドリードに次いで第3位に選出され、日本からは合計で5都市がランクインした。今後も訪日外国人の増加が見込まれる中、日本のホテル市場は投資対象としての魅力が高まるとともに、ホテル運営の面でも一層の成熟が期待される。
ただし、このように好調に推移する国内ホテル市場だが、懸念もある。不動産市況全体に影響する世界的な政治対立や地政学リスク、為替など金融市場の動向などはもちろん、ホテル投資特有のリスクである、観光客急増に伴う地域住民への影響やオーバーツーリズムへの対策動向などにも十分注意したい。
英国の調査会社ユーロモニターインターナショナルが発表した「2025年に訪れたい世界の都市100選」では、東京はパリ、マドリードに次いで第3位に選出され、日本からは合計で5都市がランクインした。今後も訪日外国人の増加が見込まれる中、日本のホテル市場は投資対象としての魅力が高まるとともに、ホテル運営の面でも一層の成熟が期待される。
ただし、このように好調に推移する国内ホテル市場だが、懸念もある。不動産市況全体に影響する世界的な政治対立や地政学リスク、為替など金融市場の動向などはもちろん、ホテル投資特有のリスクである、観光客急増に伴う地域住民への影響やオーバーツーリズムへの対策動向などにも十分注意したい。
(2025年04月03日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
渡邊 布味子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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