2025年02月26日

不動産投資市場動向(2024年)~グローバルプレゼンスが向上する日本市場。2024年の取引額は世界金融危機後の最高額に

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

2024年の国内不動産取引額は前年比+20%増加し、世界金融危機後で最高額となった。セクター別では、オフィスが占率30%と最も大きく、次いで、産業施設が同25%となった。産業施設やホテルの取引額は大幅増加し、データセンターなどの新セクターへの投資も拡大している。一方、建築費高騰により開発用地の取得は敬遠される傾向がある。
 
投資主体別では、外国資本が前年比+40%となったが、大型投資2件が過半を占め、これらの取引を除くと外国資本の購入額は前年比で▲35%減少しており、本格的な回復に至っていない。外国資本の投資は、産業施設(占率53%)、ホテル(同18%)の順に多く、これらのセクターには生成AI市場やインバウンド需要の拡大を背景に高い成長期待が寄せられている。
 
また、世界の不動産取引額は2024年上期をボトムとして最悪期を脱したとみられるが、市場の停滞感は依然として拭えず、不動産取引の本格回復には時間を要すると考えられる。欧米の不動産向け融資は、引き続き厳しい状況にあり、機関投資家の不動産投資戦略では利益獲得を狙ってデット投資への関心が高まっていた。しかし、最近ではバリューアッド、コア、コア・プラスといった不動産投資本来の伝統的な投資戦略へ回帰しており、今後の投資市場の回復を後押しする可能性もありそうだ。
 
国内市場の好調を背景に、日本の各都市のプレゼンスが向上している。アジア太平洋地域の都市別投資額ランキングでは、東京が3年連続で第1位となり、千葉が第7位、大阪が第10位にランクインし、東京以外の主要都市も投資先としての魅力を増している。

今後、日銀の追加利上げの影響が懸念されるが、依然として低い金利水準や高いイールドスプレッド、安定した賃貸市況、高い流動性といった良好な投資環境を背景に、国内資本の購買意欲は堅調だ。また、グローバル投資家の注目度も高いことから、利上げの影響は限定的ではないだろうか。今後は国内外の資金の動向などにも留意しながら、不動産取引市場を注視する必要がありそうだ。

■目次

国内の不動産取引動向(2024年)
世界の不動産取引動向(2024年下半期)
プレゼンスが向上する日本の不動産投資市場。今後は金利動向を注視

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年02月26日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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