2022年12月09日

首都圏住宅市場(マンション・戸建て)の動向~価格高水準も、取引戸数が減速、在庫は増加

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

国土交通省の不動産価格指数によると、首都圏は、マンションが最高水準を継続し、戸建ても上昇した。しかし、住宅市況については価格水準だけではなく、取引件数も加味して判断するのが適当である。
 
新築マンションの2021年以降の売れ行きの伸びは一服したものの、国内市場は新築需要が強く、例年最も売れ行きの良い12月にさらに持ち直しが期待されるため、新築マンション市場では高水準の価格が継続すると思われる。
 
中古マンション成約件数は前年同月比で減少となった。コロナ禍のテレワークの広がりなどから、住宅需要は郊外へと広がることを期待する向きもあったが、東京都区部の強さが際立っており、郊外の売れ行きが鈍っている。
 
また持家の新設住宅着工戸数は著しく減少した。マンション用地の取引価格の高騰から、周辺の住宅地価格が上昇している。このため、持家が購入希望者の予算外となった場合が相当数あるとみられる。
 
一方、新築分譲戸建ての新設住宅着工戸数は2021年5月以降増加傾向で、2022年10月も前年同月比でのプラスとなった。価格水準の高い新築マンションや持家からこぼれた需要を背景に多くの住戸が売れることを期待して、供給者が着工戸数を増加させたとみられる。
 
しかし、新築分譲戸建てと中古マンションの在庫戸数は急速に増加しており、実需を超えた価格と戸数で供給された可能性がある。特に新築分譲戸建ての在庫戸数の増加が続いた場合には、売却価格の見直しや減額キャンペーンなど、今までにない販売方法に変化する可能性がある。「住宅は購入したいが、どうしても買いたいという住宅に出会えていない」という人は、しばらく様子見という選択肢もありうる時期ではないだろうか。

■目次

・首都圏のマンション・戸建て価格は上昇も、伸びが鈍化
・中古マンションと持家の取引量が急減速している
・在庫戸数も増加している
・中古マンション、新築分譲戸建ての購入希望者は様子見してもよい
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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