2021年02月05日

今年変更される固定資産税はどうなるのか-公的評価の動向と、不服申立制度について

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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■要旨

国税庁は、大阪市内の3区域の相続税路線価について補正を行うことを公表した。しかし、企業や個人でも多くの人には相続税はあまり関係がなく、固定資産税のほうが気になるのではないだろうか。
 
2021年は、3年に一度の固定資産税路線価の評価替えの年度である。直近の公的鑑定評価の価格は、多くの地点で下落傾向で、特にインバウンド需要を当てにしていた都市型商業地の下落圧力は強い。このままいけば、相続税路線価については、3区域に加えて、大阪市内と名古屋市内の計7区域に対しても、補正が行われる可能性が高いだろう。では、固定資産税路線価に対しても、補正されるのだろうか。
 
固定資産税路線価は、3年間の変動を反映するが、今まで上昇してきた区域のほとんどは、2018年から2019年の末までの2年分の上昇に比べれば、まだ現在の下落は緩やかで、これを相殺するには至らないであろう。
 
また、過去の価格上昇幅が大きく、「本来の課税標準額」までの調整が終わっていなければ、本来の固定資産税より低い税額から上方への調整が続き、路線価が下がっても税額は下がらない。
 
不動産業界では増税を見越して、与党に対して税額の据え置き要望をあげている。2021年度については、前年度の税額に据え置く特別な措置を講ずることとなったが、2022年以降の固定資産税ついては現状では未定であるが、昨年と同等以上の税額を払うことになる可能性を残している。
 
増税に納得できない場合は、固定資産税に不服を申し立てる制度を検討することになろう。不服申立制度もあるが、その認容率は決して高くはない。
 
固定資産税の増額は、不動産の収益性をさらに低下させる要因となる。増税額が大きい不動産は市場の評価も低くなり、投資効率の良い不動産とそうでない不動産の選別がさらに進むことになるのではないだろうか。

■目次

1. はじめに
2. 都道府県地価調査と地価LOOKレポートの動向
3. 固定資産税路線価と固定資産税はどうなるのか
4. 固定資産税の増額に納得できない場合は
5. おわりに
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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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