コラム
2020年11月20日

はじめての不動産投資(1)-売却する場合のことを考えてから買おう

金融研究部 准主任研究員   渡邊 布味子

このレポートの関連カテゴリ

不動産市場・不動産市況 などの記事に関心のあるあなたへ

btn-mag-b.png
基礎研 Report Head Lineではそんなあなたにおすすめのメルマガ配信中!
各種レポート配信をメールでお知らせするので読み逃しを防ぎます!

ご登録はこちら

twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

文字サイズ

コロナ禍は実体経済に深刻な影響を与え続けており、経済を刺激するため各国中央銀行は金融緩和政策を継続している。低金利で融資を得やすい現在、長期的に安定収益が見込めると言われている不動産投資に興味を持っている人は多いのではないだろうか。

しかし、不動産投資は、株式などの他の投資に比べて一般的に投資額が多額であり、価格の査定、法律、税務・会計、建築関連知識など、様々な知識が必要である。にもかかわらず、これらが体系的に述べられることは案外少なく、インターネットで検索してみても、断片的な情報が多い。知識の会得には、例えば宅地建物取引士の取得が考えられるが、受験までする必要性を感じる人ばかりではないだろう。
 
また、投資は不動産に限らず、原則としてすべて自己責任で、プロであっても想定外の損失を被ったりすることがある。しかし、対価なしに損失の補填をしてくれる善意の第三者はまずいないし、知識が乏しいまま第三者に勧められた物件を購入しても、思ったような利益はなかなか得られないことがある。不動産投資で、よく分からないまま安易に投資を決めてしまい、後々後悔するような大きな損失を出してしまうことも良く聞く話である。

一方で、ある程度の不動産投資の知識があれば、投資の際に、後々後悔したり、騙されたりすることを減らすことができると思われる。そこで、この連載では、今まで不動産投資をしたことのない人や経験の浅い人を対象に、不動産へ投資するにあたって知っておいたほうが良い知識、いわば入門編の知識を分かりやすくまとめていきたいと思う。
 
さて、今回のテーマは「売却する場合のことを考えてから買おう」である。不動産投資において売却する場合のことを考えることを「出口戦略」といい、業界では非常に重要視されている。「出口」とは、不動産業者の使う用語で、一般的に「入手した不動産を、将来において売却すること」を指す。つまり、「将来の売却価格を想定する」ことが大切なのである。不動産をいくらで買えばいいのかと、買値の正しさが気になる人にとっては、「将来の売却価格を想定する」、という考え方には違和感があるかもしれない。しかし、プロはまず、現在想定される収入や費用を踏まえて、今後の利益や将来の売却価格を査定する。なぜ、こうすることが必要なのかを簡単に説明したい。
 
不動産は、店でいつでも買える食品や日用品などとは異なり、個別性が極めて高い。従って、1つの売り希望物件に対して、複数の買い希望者が集まることが多い。また、その結果、オークションのように競争が働いて値段が吊り上がることも珍しくない。集まった希望者の中で目的の不動産を買うことができるのは、基本的に最も高い価格を提示した1人だけであり、その他の希望者は物件を買いたくても買うことができない。
 
もし、どうしても買いたいのであれば、1番になるためにとにかく高い値段を売り主に提示すればよい。しかし、そんなことをすれば利益は出なくなる。ではどこまでなら高い値段をつけても安全なのか、それを知るためには、将来の売却価格等を基準にして買う際の価格を線引きすることが有効だ。つまり、「将来の売却価格」から「売却に必要な費用」と「累計の利益」を差し引いて、「買い希望価格」を決定するのである。
 
このようにして適切に算出された「買い希望価格」であれば損失が出る可能性は低くなると考えられる。また、もし「買い希望価格」を多少上回らないと買うことができない場合でも、上回る大きさによって、それが許容できるかどうかを判断することができる。
 
ただし、「出口戦略」のシナリオ通りにその不動産を売却できるかどうか、その目論見をプロでも外してしまうことは少なくない。しかし、不動産投資は、適切な数値を前提において予想する方が、感覚に頼って投資したり、第三者が勧めるがままに投資する場合よりも損失が少なくなることが多いと思われる。

理由は簡単で、不動産は投資した後に、清掃や修繕などの当然かかる必要なコストを削減したり、将来の売却価格を大きく上回る購入時の高値買いによる損失を取り戻すことは非常に難しいからである。従って、買う前に、当然かかる必要コストや収益を適切に予測しておけば、多少コストが増加したり、収入が減少しても利益の減少や損失の拡大を一定程度に留めることができる可能性が高くなるのである。
 
特に、投資を検討する物件が、新築で小規模など、個人向けである場合は、「出口戦略」をよく考えてほしい。物件によっては、利益を獲得する余地が少なく、プロでも扱いが難しいので「個人投資家に高値で売るための商品」の場合がある。だからこそ、そうした業者は手間暇かけて熱心に個人投資家に購入を勧めるのだと思われる。それほど良い物件であれば、その業者が保有すれば良いはずである。
 
いずれにしても、「出口戦略」なしに不動産投資はするべきではない。また、「出口戦略」がきちんとあると、値付け競争で競り負けて「買えない」こともあるだろうが、あせって買う必要はないと思う。

次回は「出口戦略」において重要な「将来の売却価格」のイメージを持つために、簡易的に収益還元法を説明してみたい。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
twitter Facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 Pocketで後で読む

このレポートの関連カテゴリ

金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

(2020年11月20日「研究員の眼」)

アクセスランキング

レポート紹介

【はじめての不動産投資(1)-売却する場合のことを考えてから買おう】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

はじめての不動産投資(1)-売却する場合のことを考えてから買おうのレポート Topへ