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マンションと大規模修繕(5)~住民の高齢化と2回目大規模修繕時の年齢構成
金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子
1.マンションには2つの老いがある
国土交通省の平成30年度「マンション総合調査」によると、マンション居住者の永住意識は高まっており、62.8%が「永住するつもりである」と回答した。また、建物経年が古いほど、マンション所有者に占める世帯主の年齢が70歳以上の住戸の割合が高く、築10年未満で5.1%、築10年以上20年未満で12.4%、築20年以上30年未満で21.9%、築30年以上40年未満で37.6%、築40年以上で47.2%となった(図表1)。マンションの築年が経過すれば、マンション所有者も高齢化する。高齢化は全てのマンションに共通する問題である。
2.現在、新築のマンションはどの程度高齢化していくのか
(1) 新築時点の所有者の年齢
国土交通省「令和4年 住宅市場動向調査」1によると、2022年度の新築マンション購入者の年齢は平均44.8歳、年代別の内訳は30歳未満の人が7.3%、30代が35.4%、40代が24.3%、50代が12.2%、60歳以上が18.1%、無回答が2.8% 、平均は44.8歳であった。2010年度は若年層が比較的多かったが、2014年頃から安定推移しており(図表2)、2022年度の割合を採用する。
(2) 売却された住戸を購入した新たな所有者(中古マンションの購入者)の年齢
前述(1)の調査によると、2022年度の中古マンションの購入者の年齢は平均47.4歳、年代別の内訳は30歳未満の人が6.3%、30代が28.2%、40代が29.6%、50代16.9%、60歳以上が16.9%、無回答が2.0%、平均は46.3歳であった2。2013年頃から比較的安定して推移している(図表3)。こちらも最新の2022年度の数値を採用する。
東日本不動産流通機構によると、中古マンションの成約物件の築年数は年々長期化傾向にあり 、2023年平均は23.8年である。つまり、平均的なマンション住民の入れ替え時期は24年程度と考えられる。
(4) 売却される一部の住戸の割合
各年の首都圏中古マンション成約件数を分子、同年から24年前の首都圏新築マンションの発売戸数を分母とし、首都圏のマンションの入替率を概算する。2023年は21.4%(前年から▲4.9%)、過去20年平均は29.4%、過去10年平均は28.5%、直近5年平均は23.2%となった(図表4)。ただし中古マンションの在庫は増加しており3、入替率は低下傾向である。将来の入れ替え率は現在よりも低くなると予想され、20%程度が妥当と考える。
(5) 2回目の大規模修繕時の所有者の年齢構成の予想
大規模修繕は12年毎に推奨され、2回目は築24年頃である。マンション住民の入替時期(取引が成立した中古マンションの築年数)も平均的に築24年である。一方、大規模修繕工事は実施より2、3年前から話し合いを始める必要がある。マンション購入時の年齢構成は10歳単位のため、きりよく築20年目に所有者が新築時から20%が入れ替わった状態で4年後の大規模修繕工事の話し合うと想定し、その際のマンション所有者年齢構成を考える。
すると、マンション所有者の年齢、年代別の内訳は30歳未満の人が1.3%、30代が5.8%、40代が12.0%、50代が32.6%、60代が23.4%、70代が10.0%、80歳以上が14.9%、平均は約61歳となった(図表5)。2回目の大規模修繕時には60代以上の人が半分程度という試算になる。
1 調査対象マンションの地域別構成比は、北海道が5.3%、東北が10.7%、関東が26.1%(うち東京圏は21.4%)、北陸・中部が17.7%、近畿が17.2%(うち京阪神圏は13.2%)、中国・四国が12.9%、九州・沖縄が8.2%
2 計算には、標記のうち無回答はないものとして全体を100%に修正した割合を用いる。
3 渡邊布味子『首都圏中古マンション市場の動向(2023年11月)~お手頃価格の中古マンションを見つけるのは困難に』(ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート、2023年12月21日)
3.所有者の高齢化が進む前に、大規模修繕実施の合意形成を
多額の費用が掛かる大規模修繕は、そのマンションを長く使い続ける予定の人のほうが、購入当初は費用を支出する動機を持ちやすい。しかし、24年目の大規模修繕2回目の時期になればなんとかなると考えて議論を先送りすると、実際の工事時期には実施そのものが現状維持を希望する一部の高齢の所有者によって、大規模修繕計画等が反対されてしまうかもしれない。
マンションは一つのコミュニティであり、住民同士の対立が続けば住みやすさは損なわれる。そうなる前、マンションの築年が浅い時期から、住民間の合意形成を容易にする環境を作り、大規模修繕実施への意識を高めことは重要である。可能であれば、事前に大規模修繕工事の発注・業者選定のルールを決めておくと、よりスムーズに合意形成が進むのではないだろうか。
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03-3512-1853
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
(2024年01月19日「基礎研レター」)
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