2024年01月16日

2024-2025年も成長が見込まれる米国個人生命保険販売-2024年、2025年ともに5%成長予想-2023年は前年並みか若干プラス予想-

保険研究部 上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長 有村 寛

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1――米国個人生命保険2023年第3Qの新契約販売業績の概況

米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるLIMRAが発表したデータ1によれば、2023年第3Q時点の個人生命保険販売は、新契約保険料は対前年ほぼ同水準となるとともに(上半期は対前年マイナス)、新契約高、新契約件数はともに引き続き増加しており、全体として拡大ペースが鮮明になってきたといえよう。

(図表1)は、新契約保険料(=販売された新契約の保険料を、一時払保険料は10分の1して年換算した数値2)、新契約高(=販売された新契約の死亡保険金額の合計額)、新契約件数(=販売された契約の件数)、という3つの指標で見た個人生命保険販売業績である3
【図表1】 米国 個人生命保険販売業績
(図表2)は、2022年以降の新契約販売実績について、四半期毎に見たものである。
【図表2】 米国 個人生命保険販売業績【四半期毎】 
米国個人生命保険販売は、記録的な伸びとなった2021年以降、2022年後半は減速傾向を示していたが、2023年に入り再び増加傾向に転じていることがわかる。LIMRAでは、「好調な経済とインフレの鎮静化により生命保険に対する需要が増加」しており、「2023年の新契約保険料は、過去最高となった2022年と同水準かやや上回るだろう」としている4
 
1 LIMRA「U.S. Retail Individual Life Insurance Sales Survey-Summary Report」(3rd QUARTER 2023)。
2 前掲注釈1のLIMRA調査結果ではAnnualized Premiumと表記されており、「新契約年換算保険料」と記載すべきところとも考えられるが、わかりやすさの観点より、ここでは「新契約保険料」としている。
3 なお、LIMRAによれば、上記データの米国生保市場のカバー率は、新契約保険料で85%、新契約高で90%、新契約件数で60%である。
4 LIMRA ニュースリリース「LIMRA: Individual Life Insurance Sales Rise 4% in Third Quarter 2023」(2023年12月12日)。

2――LIMRA、2024-2025年はそれぞれ5%成長と予想

2――LIMRA、2024-2025年はそれぞれ5%成長と予想

また、LIMRAでは、2023年12月13日付で米国における2024-2025年の個人生命保険販売(新契約保険料)について、商品別に予想を公表した5。それによれば、経済状況を背景に全商品合計では、2024年、2025年ともに5%成長を予想している。
【図表3】 2024-2025年 増加率予測(商品別、新契約保険料)
これまで述べてきたとおり、米国の個人生命保険は2023年に入り、再び拡大基調にあるものと考えられるが、「今後1年で生命保険への加入意向を持つ人」の割合は過去最高水準に達しているとの調査結果もある6中では、ニーズは十分に取り込めていない、との見方もある7

一方、2024-2025年の業績について、インフレ圧力等を背景にそれぞれ1.8%、2.4%に留まるとの見方8や、米国経済は2024年に入ると減速する、との見通し9もあり、今後の米国個人生命保険販売はどうなっていくのか、注目されるところである。状況については引き続き、注視して参りたい。
 
5 LIMRA ニュースリリース 「LIMRA: U.S. Retail Life Insurance Sales Projected to Improve in 2024 and 2025」(2023年12月13日)。
sup>6 LIMRAニュースリリース「New Study Shows Interest in Life Insurance at All-Time High in 2023」(2023年4月24日)によれば、「今後1年で生命保険への加入の意向を持っている人は、過去最高の39%に達した、中でもZ世代(1997-2012年生まれ)とミレニアル世代(1981-1996年生まれ)は、それぞれ44%、50%とさらに高い」、とされている。
7 LIMRAニュースリリース「Three Misconceptions May Deter Americans from Getting the Life Insurance They Need」(2023年9月5日)。なお、当ニュースリリースでは、「保険加入の意図」を「保険加入へのアクション」に変えるためには「保険に対する誤解を解く」ことが必要、とされている。
8 Fitch Solutions 「United States Insurance Report」2023年10月25日。
9 ニッセイ基礎研究所 窪谷浩「米国経済の見通し-24年にかけて景気減速も景気後退は回避される見通し」『Weekly エコノミスト・レター』(2023年12月11日)。
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保険研究部   上席研究員 兼 気候変動リサーチセンター 気候変動調査部長

有村 寛 (ありむら ひろし)

研究・専門分野
保険商品・制度

経歴
  • 【職歴】
    1989年 日本生命入社
    1990年 ニッセイ基礎研究所 総合研究部
    1995年以降、日本生命にて商品開発部、法人営業企画部(商品開発担当)、米国日本生命(出向)、企業保険数理室、ジャパン・アフィニティ・マーケティング(出向)、企業年金G等を経て、2021年 ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月より現職

(2024年01月16日「保険・年金フォーカス」)

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