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- メディケイドとCHIP:米国の医療セーフティネット-コロナ後の通常運営で加入者は減少中-
メディケイドとCHIP:米国の医療セーフティネット-コロナ後の通常運営で加入者は減少中-

保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴
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- 他の先進諸国とは異なり、米国の公的医療保険は高齢者と障害者のためのメディケアと低所得者のためのメディケイドに限定され、他は民間医療保険に委ねられている。
- 1965年にメディケアとメディケイドが誕生する前も国民皆保険導入の動きはあったものの、米国医師会などの反対で実現に至らず、その間に民間医療保険が普及したことが背景にある。
- 低所得者のためのメディケイドの導入は各州の任意であり、1972年頃までには全米の制度になったと評してよい。
- さらに1997年にはメディケイドの加入資格を得るほど貧しくはない家庭の児童(18歳以下)に医療保険を提供すべくCHIP(Children's Health Insurance Program)が導入された。
- 無保険者の減少に向け2010年に法案が成立したオバマケアでは、メディケイドの加入資格拡張が定められたものの連邦最高裁で違憲判決を受け、現時点でも加入資格拡張が実現していない州が11ある。
- メディケイド/CHIPの運営には連邦政府から各州に財政支援が行われる一方で、各州の裁量が広く認められている。低所得者への福祉として各州の運営が問われている。
- 新型コロナウィルス感染拡大時の加入資格審査凍結は本年3月で終了し、各州は通常運営に回帰した。この結果、既に1,000万人超がメディケイド/CHIPから脱退し、また、その7割強が事務手続きの理由と報じられている。
- とはいえ米国民の2割超がメディケイド/CHIPという「公助」によって一定の医療保障を受けている。さらに米国では寄付や慈善事業といった「互助」が大きいことも加味すれば、必ずしも自己責任ばかりではなく、医療セーフティネットは意外としっかりしていると考えてよいのではないだろうか。
■目次
1――はじめに
2――公的制度の挫折と民間医療保険の普及
1)米国労働立法協会のモデル州法案(1915年)は採用されず
2)社会保障法(1935年)から脱落
3)トルーマン国民皆保険案の霧消(1952年)
3――社会保障法改正によるメディケイド導入
4――CHIP(州児童医療保険プログラム)導入
1)クリントン改革の頓挫
2)CHIPの導入
5――オバマケアと違憲判決を受けてのメディケイド拡張
1)無保険者減少策の一環としてのメディケイド
2)連邦最高裁による違憲判決
6――現時点におけるメディケイドとCHIPの概要
1)メディケイド
2)CHIP
3)州別運営の例
4)医療機関による診療の実効性
7――コロナ後の加入者減少
1)コロナ時の加入者増大
2)通常運営への回帰
8――おわりに
(2023年11月30日「基礎研レポート」)

03-3512-1789
- 【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。
【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版
磯部 広貴のレポート
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