2023年11月30日

メディケイドとCHIP:米国の医療セーフティネット-コロナ後の通常運営で加入者は減少中-

保険研究部 主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任 磯部 広貴

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■要旨
 
  1. 他の先進諸国とは異なり、米国の公的医療保険は高齢者と障害者のためのメディケアと低所得者のためのメディケイドに限定され、他は民間医療保険に委ねられている。
     
  2. 1965年にメディケアとメディケイドが誕生する前も国民皆保険導入の動きはあったものの、米国医師会などの反対で実現に至らず、その間に民間医療保険が普及したことが背景にある。
     
  3. 低所得者のためのメディケイドの導入は各州の任意であり、1972年頃までには全米の制度になったと評してよい。
     
  4. さらに1997年にはメディケイドの加入資格を得るほど貧しくはない家庭の児童(18歳以下)に医療保険を提供すべくCHIP(Children's Health Insurance Program)が導入された。
     
  5. 無保険者の減少に向け2010年に法案が成立したオバマケアでは、メディケイドの加入資格拡張が定められたものの連邦最高裁で違憲判決を受け、現時点でも加入資格拡張が実現していない州が11ある。
     
  6. メディケイド/CHIPの運営には連邦政府から各州に財政支援が行われる一方で、各州の裁量が広く認められている。低所得者への福祉として各州の運営が問われている。
     
  7. 新型コロナウィルス感染拡大時の加入資格審査凍結は本年3月で終了し、各州は通常運営に回帰した。この結果、既に1,000万人超がメディケイド/CHIPから脱退し、また、その7割強が事務手続きの理由と報じられている。
     
  8. とはいえ米国民の2割超がメディケイド/CHIPという「公助」によって一定の医療保障を受けている。さらに米国では寄付や慈善事業といった「互助」が大きいことも加味すれば、必ずしも自己責任ばかりではなく、医療セーフティネットは意外としっかりしていると考えてよいのではないだろうか。


■目次

1――はじめに
2――公的制度の挫折と民間医療保険の普及
  1)米国労働立法協会のモデル州法案(1915年)は採用されず
  2)社会保障法(1935年)から脱落
  3)トルーマン国民皆保険案の霧消(1952年)
3――社会保障法改正によるメディケイド導入
4――CHIP(州児童医療保険プログラム)導入
  1)クリントン改革の頓挫
  2)CHIPの導入
5――オバマケアと違憲判決を受けてのメディケイド拡張
  1)無保険者減少策の一環としてのメディケイド
  2)連邦最高裁による違憲判決
6――現時点におけるメディケイドとCHIPの概要
  1)メディケイド
  2)CHIP
  3)州別運営の例
  4)医療機関による診療の実効性
7――コロナ後の加入者減少
  1)コロナ時の加入者増大
  2)通常運営への回帰
8――おわりに
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保険研究部   主任研究員・気候変動リサーチセンター兼任

磯部 広貴 (いそべ ひろたか)

研究・専門分野
内外生命保険会社経営・制度(販売チャネルなど)

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