2023年11月30日

わが国のサードプレイスオフィス市場の現況 -2023年-(1)~東京23区での集積が進む一方、主要政令指定都市以外の割合も4割に達する

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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(3)-3 法人登記サービスの有無
サードプレイスオフィスは、スタートアップ企業やフリーランスによる利用も多い。こうした背景から単なるスペース貸しだけでなく、一定の起業・就業支援を志向し、サードプレイスオフィスの住所を法人登記できるサービスを提供する拠点も多い。

全国のサードプレイスオフィスで、法人登記サービスを提供する拠点は57%であった。主要政令指定都市においては、「名古屋市(76%)」が最も高く、次いで「東京都心5区(74%)」、「福岡市(66%)」が高かった(図表-12)。
図表-12 法人登記サービスの有無
総務省統計局「経済センサス‐活動調査」をもとに算出した「事業所の開業率」を確認すると、主要政令指定都市において、「東京都心5区(9.1%)」が最も高く、次いで、「福岡市(7.1%)」が高い。事業所の開業率が高く、スターアップ企業の利用ニーズの高い都市において、サードプレイスオフィスでの法人登記サービスの提供が進んでいる模様だ。
図表-13 事業所の開業率(主要政令指定都市)
(3)-4 ドリンクサービスの有無
大阪府枚方市「コワーキングスペース・シェアオフィス等に関するアンケート調査」によれば、ワーキングスペース・シェアオフィスに求める設備・サービスについて、「無料Wi-Fi(90%)」との回答が最も多く、次いで「プリンター・スキャナ(60%)」、「ドリンクサービス(47%)」が多かった(図表-14)。サードプレイスオフィスを利用する企業において、通信環境やOA機器とともに、従業員満足度に寄与するドリンクサービスに対するニーズは高いようだ。
図表-14 ワーキングスペース・シェアオフィスに求める設備・サービス
全国のサードプレイスオフィスで、ドリンクサービスを提供する拠点は63%であった。また、主要政令指定都市において、「さいたま市(90%)」が最も高く、次いで「千葉市(84%)」、「京都市(79%)」が高い(図表-15)。

都道府県別にみると、70%を超える都道府県は埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、鳥取県と都市圏に多い(参考図表-3)。サードプレイスオフィスが集積し、競合施設が多い地域においては、顧客満足度を高める取り組みの一環として、ドリンクサービスが一般的になっている模様だ。
図表-15 ドリンクサービスの有無
次回のレポートでは、コロナ禍を経たサードブレイスオフィス利用の方向性に関する考察や、テレワーク人口の分布とサードプレイスオフィスの拠点展開との比較分析等を行った上で、今後のオフィス市場に及ぼす影響等について考えたい。

 
参考図表-1 サードプレイスオフィスの立地(都道府県別)
参考図表-2 ドロップインサービスの有無(都道府県別) [単位:%]
参考図表-3 個室の有無(都道府県別) [単位:%]
参考図表-4 法人登記サービスの有無(都道府県別) [単位:%]
参考図表-5  ドリンクサービスの有無(都道府県別) [単位:%]
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

(2023年11月30日「不動産投資レポート」)

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