2023年11月09日

東京オフィス賃料は下落継続。物流市場は大量供給の影響で空室率が上昇-不動産クォータリー・レビュー2023年第3四半期

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は、全ての住居タイプが前年比でプラスとなった。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2023年第2四半期は前年比でシングルタイプが+2.0%、コンパクトタイプが+3.3%、ファミリータイプが+1.3%となった(図表-12)。
図表-12 東京23区のマンション賃料
また、LMC社によると、都心5区のマンション募集賃料(9月末時点、前年比)を区別にみると、渋谷区(+11.1%)、港区(+11.0%)、中央区(+5.9%)、新宿区(+3.0%)、千代田区(▲0.9%)となり、総じて上昇基調が続いている(図表-13)。
図表-13 東京都心5区のマンション賃料(区別)
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業セクターは、百貨店を中心にインバウンド消費が好調で売上が増加している。商業動態統計などによると、2023年7-9月の小売販売額(既存店、前年同期比)は百貨店が+10.0%、コンビニエンスストアが+4.9%、スーパーが+3.8%となった(図表-14)。9月単月では、百貨店が+9.4%(19カ月連続プラス)、コンビニエンスストアが+3.5%(19カ月連続プラス)、スーパーが+2.8%(12カ月連続プラス)となっている。
図表-14 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
ホテル市場は、日本人の宿泊需要に頭打ち感がみられるもののインバウンド需要が牽引し、コロナ禍前の水準を回復している。宿泊旅行統計調査によると、2023年7-9月累計の延べ宿泊者数は2019年と同水準(2019年同期比+0.04%)となり、このうち日本人が▲1.4%、外国人が+6.6%となった(図表-15)。また、STR社によると、9月のホテルRevPARは2019年対比で全国が+13.3%、東京が+14.2%、大阪が+20.6%となった。
図表-15 延べ宿泊者数の推移(2019年同月比、2020年1月~2023年9月)
物流賃貸市場は、首都圏では新規供給の影響を受けて空室率が上昇している。シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2023年9月末)は8.9%(前期比+0.7%)となった(図表-16)。今期は、新規需要が17.1万坪と昨年の四半期平均(12.2万坪)を上回ったものの、新規供給が23.4万坪と引き続き高水準で、空室面積は1年前から倍増し約55万坪となった。近畿圏についても空室率は4.5%(前期比+1.3%)に上昇した。

また、一五不動産情報サービスによると、2023年7月の東京圏の募集賃料は4,520円/月坪(前期比▲1.7%)に下落した。
図表-16 大型マルチテナント型物流施設の空室率

4.J -REIT(不動産投信)市場

4.J -REIT(不動産投信)市場

2023年第3四半期の東証REIT指数(配当除き)は6月末比▲0.1%下落した。業種別指数では、オフィスが+2.5%、住宅が▲2.2%、商業・物流等が▲2.1%となり、オフィスやホテルが上昇する一方、住宅や物流が軟調な動きであった(図表-17)。9月末時点のバリュエーションは、純資産11.7兆円に保有物件の含み益5.4兆円を加えた17.1兆円に対して時価総額は15.8兆円でNAV倍率5は0.93倍、分配金利回りは4.2%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.4%となっている。
J-REITによる第3四半期の物件取得額は2,985億円(前年同期比+186%)、1-9月累計では9,057億円(同+57%)となり、昨年から大幅に増加した。アセットタイプ別では、オフィスビル(32%)・物流施設(27%)・ホテル(20%)・住宅(13%)・商業施設(7%)・底地ほか(1%)となり、インバウンド需要の回復を背景にホテルの取得が大きく伸びた(図表-18)。
図表-18  J-REITによるアセットタイプ別取得割合
今年に入り、Jリート市場と株式市場のパフォーマンス格差が一段と拡大している。年初からの東証REIT指数の下落率は▲1.8%で、コロナ禍の影響を受けた2020年以降では▲13.3%下落し、同期間のTOPIXの上昇(2023年+22.8%、2020年以降+35.0%)を大幅に下回っている(9月末時点)。

コロナ禍以降の(20年~23年)の東証REIT指数の騰落率について、①分配金、②10年金利、③リスクプレミアム(分配金利回り-10年金利)の3つの要因に分解し、それぞれの寄与度を確認すると、①分配金は21年から回復に向かい累計で1%のプラス寄与。③リスクプレミアムは3.6%から3.4%へ縮小し累計で4%のプラス寄与。一方、②10年金利は22年から上昇ピッチを強め累計で▲18%のマイナス寄与となった(図表-19)。こうしてみると、金利上昇がJリート市場に重くのしかかっていることが分かる。

もっとも、金利上昇が即、価格下落につながるわけではない。例えば、米国リート市場は10年金利が年初より0.7%上昇した一方、リスクプレミアムが0.4%縮小し金利上昇の痛みを緩和する効果をもたらしている。また、日本では現状、金利の先高観が強いものの、Jリート市場のリスクプレミアム(3.4%)は米国(▲0.1%)と比べて十分に厚く、ある程度金利上昇への備えができていると言える。引き続き、市場金利とあわせてリスクプレミアムの動向にも注意を払う必要がありそうだ。
図表-19東証REIT指数の寄与度分析(2020年~2023年9月末)
 
5 NAV倍率は、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
 
 

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2023年11月09日「不動産投資レポート」)

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