2023年09月01日

デリスキングの行方-EUの政策と中国との関係はどう変わりつつあるのか?-(前編)

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
 
  • 本稿は、G7広島サミットで主要7カ国が合意した中国に対する共通の方針であるデリスキング(リスク軽減)への理解を深めることを目的とする。
     
  • 「前編」では、G7の合意内容を確認した上で、EUを中心とする最近の政策の動きと、デリスキングの目標達成を巡るリスクについて整理する。
     
  • デリスキングは、経済的に大きな犠牲を払うことになるデカップリングに発展しないよう、経済安全保障上、機微な技術に対象を絞り、同盟国・同志国と連携し、グローバル化の恩恵を享受しつつ、相互依存関係が原因となるリスクを削減する戦略と言い換えることもできよう。
     
  • 経済面でのデリスキングの政策は、基本的に補助金等を活用して戦略産業を強化する産業政策と技術の流出により安全保障上のリスクが高まることを防ぐための規制の組み合わせであり、同盟国・同志国との政策協調とパートナーの拡大によって効果を高めることでできる。
     
  • デリスキングの目標達成を巡っては、EU固有のリスクのほか、同盟国・同志国間の政策協調に関わるリスク、中国からの対抗措置による影響拡大のリスク、対象範囲拡大のリスク、供給網を再編しても中国依存のリスクは減らず、コストが上昇するリスクがある。
     
  • 統計データなどに基づく中国と西側との関係変化については「後編」で稿を改めて論じる。


■目次

1――はじめに
2――デリスキングとは何か?
  1|G7の合意
  2|EUの政策
3――デリスキングの目標達成を巡るリスク
  1|EU固有のリスク
  2|同盟国・同志国間の政策協調に関わるリスク
  3|中国からの対抗措置による影響拡大のリスク
  4|対象範囲拡大のリスク
  5|供給網再編でも中国依存度は減らず、コストが上昇するリスク

(2023年09月01日「基礎研レポート」)

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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