2023年09月01日

ユーロ圏消費者物価(23年8月)-総合指数・コアともに5%台の伸び率が続く

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数、コアともに前年比5.3%

8月31日、欧州委員会統計局(Eurostat)は8月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は5.3%、市場予想1(5.1%)から上振れ、前月(5.3%)と同じだった(図表1)
前月比は0.6%、予想(0.4%)より上振れ、前月(▲0.1%)からプラスに転じた

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は5.3%、予想(5.3%)と一致し、前月(5.5%)から低下した(図表2)
前月比は0.3%、前月(▲0.1%)からプラスに転じた

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:物価減速ペースは依然として不確実性が高い

23年8月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で5.3%となり、7月の5.3%から横ばいで推移した。一方、「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は5.3%とやや低下した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が6月5.5%→7月5.0%→8月4.8%、「サービス」(エネルギーを除く)が6月5.4%→7月5.6%→8月5.5%となり、財インフレは22年7月以来となる4%台まで低下した。サービスインフレも前月よりは低下したが、5%台半ばで依然として高い。前年同月比寄与度は、「財」が1.14%ポイント程度、「サービス」が2.20%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で6月▲5.6%→7月▲6.1%→8月▲3.3%とマイナス幅が縮小した。前月比では3.2%と23年1月以来となる前月比プラスとなり、23年4月時点の水準程度まで戻した。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.48%ポイント程度(7月は▲0.62%ポイント)と見られる(前掲図表1)。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のインフレ率(季節調整値)
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で9.8%(7月10.8%)と5か月連続で大幅に低下した(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は10.4%(7月11.3%)、未加工食品は7.8%(7月9.2%)となり、未加工食品は再び大幅に下落した。飲食料の前年同月比寄与度は2.13%ポイント程度(7月は2.20%ポイント)と見られる。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が3.0%、コアが4.3%、エネルギーを除く財が3.2%、サービスが4.3%、飲食料が4.3%となった。傾向としては減速しているが、今月は下げ渋っている印象がある。先行きの動向(インフレ減速ペース)については依然として不確実性が高い状況と言える。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは10か国で残りの10か国は低下した(図表5)。また、7月はベルギーでECBの物価目標である2%を下回ったが、8月はすべての国が2%を超えている。

前月比では16か国がプラスの伸び率で、4か国はマイナスの伸び率となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年09月01日「経済・金融フラッシュ」)

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