2023年08月14日

英国GDP(2023年4-6月期)-単月ベースでようやくコロナ禍前を上回る

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比プラス成長は維持

8月11日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2023年4-6月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は0.2%、予想1(0.0%)を上回り、前期(0.1%)から加速した(図表1)
前年同期比は0.4%、予想(0.2%)を上回り、前期(0.2%)から加速した

【月次実質GDP(4-6月)】
前月比は4月0.2%、5月▲0.1%、6月0.5%となり、6月は予想(0.2%)を上回るプラス成長を記録した。

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:単月ではようやくコロナ禍前水準を上回る

英国の23年4-6月期の実質成長率は前期比0.2%(年率換算0.8%)となり、1-3月期(前期比0.1%、年率換算0.6%)から成長が加速した。22年7-9月期(前期比▲0.1%、年率換算▲0.4%)に小幅なマイナス成長を記録した後はプラス成長が続いている。ただし、23年4-6月期の実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて▲0.2%と、依然としてコロナ禍前水準を下回っており、他の欧州各国と比較しても回復が遅れている(図表2)。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPで単月の状況を見ると、4月は前月比0.2%、5月は同▲0.1%、6月は同0.5%2となった。最近は一進一退が続いていたが、6月は生産部門が成長をけん引し、やや高めの成長率を記録した(図表3)。6月単月ではコロナ禍後のピークを更新、コロナ禍前の水準(ピークは20年1月)も上回った。
4-6月期の成長率を部門ごとに見ると、農林水産部門が前期比0.2%、生産部門が同0.7%、建設部門が同0.3%、サービス部門が同0.1%となった(図表4)。より細かい産業分類では、鉱業(前期比▲4.3%)、水道(▲1.8)、輸送(▲1.0%)、専門サービス(▲1.0%)といった産業で落ち込みが目立つ。一方、芸術・娯楽(2.3%)、製造業(1.6%)、住居・飲食(1.6%)が高めの伸び率を記録し、成長をけん引した。ONSは製造業では原材料価格の伸び率鈍化、住居・飲食では天候に恵まれたことを伸び率の押し上げ要因として指摘している。
(図表4)
(図表5)英国のGDPとデフレータ伸び率 4-6月期の成長率を需要項目別に確認すると、個人消費が前期比0.6%(前期▲0.0%)、政府消費が3.1%(前期▲1.8%)、投資が▲0.0%(前期2.4%)、輸出が▲2.5%(前期▲6.9%)、輸入が1.0%(前期▲3.8%)となり、消費が強かった。純輸出の前期比寄与度は▲1.14%ポイント(前期▲1.04%ポイント)だった。

名目GDPは4-6月期の前期比で2.3%(1-3月期は1.2%)、前年同期比で7.1%(前期3.7%)、デフレータは前期比2.1%(前期1.0%)、前年同期比6.7%(前期6.5%)となった(図表5)。輸入物価の減速がデフレータの加速として反映されている。

名目GDPを所得別に見ると、税・補助金が前期比22.2%(前期▲13.9%)と急増(エネルギー価格保証制度での補助金額が減少)、雇用者報酬が1.9%(前期1.4%)と増加するなか、営業余剰は同▲5.5%(前期5.1%)とマイナスに転じた。政府支援の減少と人件費の上昇を企業が負担し、収益が減少するという構図となっていることが分かる。
 
2 ONSは5月8日がチャールズ国王の戴冠式に伴って祝日となったため、生産部門や建設部門において5月成長率の下振れ、6月成長率の上振れ要因となる点指摘している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年08月14日「経済・金融フラッシュ」)

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