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- 新型コロナ5類移行後の消費者行動(2)働き方編-在宅勤務低頻度層で出社が増えるが、ビジネスチャットの毎日利用は2割へ
2023年07月20日
3|地域別の状況~近畿や関東などの在宅勤務低頻度層で出社増加、大企業でビジネスチャット導入多い
地域別に見ると(北海道と四国はサンプル数が少ないために参考値)、「勤務先への出社」については、「週5回以上」の高頻度層は、九州地方を除く全ての地域で増えており、もともと高頻度層が比較的少ない東北地方(2022年6月78.3%→2023年6月87.8%で+9.5%pt)や関東地方(同62.3%→同71.1%で+8.8%pt)、近畿地方(同75.3%→同82.0%で+6.7%pt)で目立つ(図表3(a))。
また、出社の増加に伴って「対面会議・打合せ」については、全ての地域で「週1~2回」以上が増えており、特に近畿地方(同20.1%→同29.9%で+9.8%pt)や関東地方(同27.1%→同36.6%で+9.5%pt)では約1割増えている(図表3(b))。
一方、出社が増えることで「在宅勤務などによるテレワーク」については、九州地方(同29.2%→同33.9%で+4.7%pt)を除く全ての地域で減っており、近畿地方(同39.6%→同28.0%で▲11.6%pt)や東北地方(同32.6%→同22.0%で▲10.7%pt)、中部地方(同34.3%→同24.1%で▲10.2%pt)では1割以上減っているほか、もともと利用率が比較的高い関東地方(同47.5%→同41.2%で▲6.3%pt)でも減っている(図表3(c))。また、九州地方以外の全ての地域では「月3回以下」の低頻度層も減っており、特に在宅勤務が減っている地域で目立つ(「月3回以下」が東北地方は同21.7%→同9.8%で11.9%pt、近畿地方は同22.7%→同12.0%で▲10.7%pt、中部地方は同20.9%→同11.7%で▲9.2%pt、関東地方は同17.7%→同13.6%で▲4.1%pt)。よって、近畿地方や関東地方などの在宅勤務低頻度層を中心に出社や対面での会議が増えている様子がうかがえる。
「オンライン会議・打合せ」については、在宅勤務が唯一増えている九州地方(同51.4%→同59.7%で+8.3%pt)を除くと減っている地域が多く、特に「勤務先への出社」で高頻度層が増えている東北地方(同45.7%→同36.6%で▲9.1%pt)のほか、中国地方(同45.1%→同35.5%で▲9.6%pt)で目立つ(図表3(d))。なお、中国地方では「週5回」以上の高頻度層が約1割減っている(同15.7%→同6.5%で▲9.2%pt)。
一方、「ビジネスチャットの利用」については、九州地方(同41.7%→同53.2%で+11.5%pt)のほか、近畿地方(同33.1%→同42.7%で+9.6%pt)では増えているが、もともと利用率が比較的高い関東地方では変わらない(図表3(e))。また、中部地方(同45.9%→同37.2%で▲8.7%pt)などでは減っている。また、「週3~4回」以上は九州地方(同13.9%→同27.5%で+13.6%pt)や東北地方(同10.9%→同17.0%で+6.1%pt)、近畿地方(同13.0%→同18.7%で+5.7%pt)、関東地方(同29.6%→同34.9%で+5.3%pt)で増えている。
地域別に見ると(北海道と四国はサンプル数が少ないために参考値)、「勤務先への出社」については、「週5回以上」の高頻度層は、九州地方を除く全ての地域で増えており、もともと高頻度層が比較的少ない東北地方(2022年6月78.3%→2023年6月87.8%で+9.5%pt)や関東地方(同62.3%→同71.1%で+8.8%pt)、近畿地方(同75.3%→同82.0%で+6.7%pt)で目立つ(図表3(a))。
また、出社の増加に伴って「対面会議・打合せ」については、全ての地域で「週1~2回」以上が増えており、特に近畿地方(同20.1%→同29.9%で+9.8%pt)や関東地方(同27.1%→同36.6%で+9.5%pt)では約1割増えている(図表3(b))。
一方、出社が増えることで「在宅勤務などによるテレワーク」については、九州地方(同29.2%→同33.9%で+4.7%pt)を除く全ての地域で減っており、近畿地方(同39.6%→同28.0%で▲11.6%pt)や東北地方(同32.6%→同22.0%で▲10.7%pt)、中部地方(同34.3%→同24.1%で▲10.2%pt)では1割以上減っているほか、もともと利用率が比較的高い関東地方(同47.5%→同41.2%で▲6.3%pt)でも減っている(図表3(c))。また、九州地方以外の全ての地域では「月3回以下」の低頻度層も減っており、特に在宅勤務が減っている地域で目立つ(「月3回以下」が東北地方は同21.7%→同9.8%で11.9%pt、近畿地方は同22.7%→同12.0%で▲10.7%pt、中部地方は同20.9%→同11.7%で▲9.2%pt、関東地方は同17.7%→同13.6%で▲4.1%pt)。よって、近畿地方や関東地方などの在宅勤務低頻度層を中心に出社や対面での会議が増えている様子がうかがえる。
「オンライン会議・打合せ」については、在宅勤務が唯一増えている九州地方(同51.4%→同59.7%で+8.3%pt)を除くと減っている地域が多く、特に「勤務先への出社」で高頻度層が増えている東北地方(同45.7%→同36.6%で▲9.1%pt)のほか、中国地方(同45.1%→同35.5%で▲9.6%pt)で目立つ(図表3(d))。なお、中国地方では「週5回」以上の高頻度層が約1割減っている(同15.7%→同6.5%で▲9.2%pt)。
一方、「ビジネスチャットの利用」については、九州地方(同41.7%→同53.2%で+11.5%pt)のほか、近畿地方(同33.1%→同42.7%で+9.6%pt)では増えているが、もともと利用率が比較的高い関東地方では変わらない(図表3(e))。また、中部地方(同45.9%→同37.2%で▲8.7%pt)などでは減っている。また、「週3~4回」以上は九州地方(同13.9%→同27.5%で+13.6%pt)や東北地方(同10.9%→同17.0%で+6.1%pt)、近畿地方(同13.0%→同18.7%で+5.7%pt)、関東地方(同29.6%→同34.9%で+5.3%pt)で増えている。
以上より、5類移行後、正規雇用者では、近畿地方や関東地方などの在宅勤務低頻度層を中心に出社や対面での会議が増えているようだ。一方、ビジネスチャットなどのデジタルツールは、在宅勤務の減少とともに利用が減る地域(中部地方など)も増える地域(近畿地方など)も、利用頻度が高まっている地域(関東地方など)もあるが、デジタルツールの導入に積極的な大企業の拠点が多い関東地方では頻度の高まりが、近畿地方では利用増加傾向があるとは言えそうだ3。なお、唯一、九州地方では在宅勤務がやや増え、デジタルツールの利用も増えていたが、本稿で用いたデータによる深堀りは難しいため、機会があれば今後の課題としたい。
3 2023年6月調査では従業員規模についてのデータは得ていないが、2022年6月調査では従業員規模(公務員を除く)が大きいほどビジネスチャットの利用率は高い(全体44.6%、1,000人以上59.8%、100~1,000人45.2%、100人未満34.1%)。また、1,000人以上(全体28.1%)は関東地方35.2%、中部地方27.6%、近畿地方26.3%、九州地方23.6%の順に多い。
3 2023年6月調査では従業員規模についてのデータは得ていないが、2022年6月調査では従業員規模(公務員を除く)が大きいほどビジネスチャットの利用率は高い(全体44.6%、1,000人以上59.8%、100~1,000人45.2%、100人未満34.1%)。また、1,000人以上(全体28.1%)は関東地方35.2%、中部地方27.6%、近畿地方26.3%、九州地方23.6%の順に多い。
3――おわりに~労働力不足が続く中、AI活用も視野に入れつつ、まずは基本的な作業のデジタル化を
本稿ではニッセイ基礎研究所の調査を用いて、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられて以降の働き方の変化について捉えた。コロナ禍の3年余りの中で事業内容や組織文化に基づいて出社と在宅勤務(リアルとデジタル)のバランスを模索し、すでに5類移行前に適切なバランスに落ち着いていた組織も多かったためか、著しい変化が生じたわけではない。しかし、やはり行動制限が解除されたことで、これまで在宅勤務率が比較的高かった若者や大都市圏を中心に正規雇用者では在宅勤務が減り、出社の頻度が高まる傾向が見られた。一方、ビジネスチャットなどのデジタルツールの利用は出社が増えても必ずしも減っておらず、高年齢層で利用が増えるとともに、毎日利用する高頻度層が増える傾向も見られた。出社が増えても働き方が元に戻ったわけではなく、生産性向上への貢献が期待される取り組みは引き続き少しずつ進展しているようだ。
日本では少子高齢化の進行で構造的に労働力不足の状況が続くため、先端技術を活用した業務の自動化や効率化を進めていく必要がある。一方で最近では生成AIの飛躍的な進化で、仕事を奪われる懸念やプライバシー侵害などの脅威面に注目が集まりがちであり、事実、現状では判断が難しい部分もある。一方で、未だ基本的な作業のデジタル化の段階で課題を抱える組織も少なくない。まずは、世の中に既にあるデジタルツールを活用し、生産性向上に向けた努力が必要だ。
日本では少子高齢化の進行で構造的に労働力不足の状況が続くため、先端技術を活用した業務の自動化や効率化を進めていく必要がある。一方で最近では生成AIの飛躍的な進化で、仕事を奪われる懸念やプライバシー侵害などの脅威面に注目が集まりがちであり、事実、現状では判断が難しい部分もある。一方で、未だ基本的な作業のデジタル化の段階で課題を抱える組織も少なくない。まずは、世の中に既にあるデジタルツールを活用し、生産性向上に向けた努力が必要だ。
(2023年07月20日「基礎研レポート」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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