2023年06月15日

貿易統計23年5月-供給制約の緩和を背景に自動車輸出が回復

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1.貿易赤字(季節調整値)の縮小が続く

財務省が6月15日に公表した貿易統計によると、23年5月の貿易収支は▲13,725億円の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲13,523億円、当社予想は▲16,474億円)通りの結果となった。輸出が前年比0.6%(4月:同2.6%)と伸びが鈍化したが、輸入が前年比▲9.9%(4月:同▲2.3%)と減少幅が大きく拡大したため、貿易収支は前年に比べ9,935億円の改善となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲6.4%(4月:同▲6.0%)、輸出価格が前年比7.5%(4月:同9.2%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲5.2%(4月:同▲0.3%)、輸入価格が前年比▲5.0%(4月:同▲2.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲7,778億円と22ヵ月連続の赤字となったが、4月の▲10,355億円から赤字幅が縮小した。輸出が前月比▲3.1%の減少となったが、輸入の減少幅(同▲5.6%)がそれを上回った。貿易赤字(季節調整値)はピーク時(22年8月の▲22,874億円)の約3分の1まで縮小した。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 23年5月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=86.5ドル(当研究所による試算値)と、4月の83.5ドルから若干上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台前半で推移しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は、6月には80ドル程度まで下落することが見込まれる。

原油価格の下落に伴う輸入金額の減少を主因とした貿易赤字の縮小傾向はしばらく続く可能性が高い。

2.供給制約の緩和を背景に自動車輸出が回復

23年5月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲4.2%(4月:同▲5.6%)、EU向けが前年比0.3%(4月:同▲2.5%)、アジア向けが前年比▲12.5%(4月:同▲12.7%)、うち中国向けが前年比▲10.3%(4月:同▲10.0%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 23年5月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲1.6%(4月:同4.3%)、EU向けが前月比▲2.9%(4月:同5.4%)、アジア向けが前月比0.3%(4月:同▲1.9%)、うち中国向けが前月比3.0%(4月:同1.7%)、全体では前月比▲3.0%(4月:同2.8%)となった。23年4、5月の平均を23年1-3月期と比較すると、アジア向けは▲0.5%低いが、米国向けが3.7%、EU向けが3.0%、中国向けが7.4%、全体では1.4%高くなっている。
自動車生産と自動車輸出の推移 IT関連輸出の低迷は続いているが、供給制約の緩和を受けて自動車輸出が回復している。自動車輸出台数(当研究所による季節調整値)は23年2月から4ヵ月連続で増加し、コロナ禍前の水準を回復した。

先行きの輸出は、ゼロコロナ政策終了後の景気回復を受けた中国向けの持ち直しが続く一方、累積的な金融引き締めの影響で景気減速が続く欧米向けが伸び悩むことから、全体としては緩やかな持ち直しにとどまることが見込まれる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年06月15日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【貿易統計23年5月-供給制約の緩和を背景に自動車輸出が回復】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

貿易統計23年5月-供給制約の緩和を背景に自動車輸出が回復のレポート Topへ