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- 身近に潜む子どもの事故(2)-2021年米国における「不慮の事故(傷害)」での死亡数は22万人超、夏季にリスク増大、1歳-24歳で死因順位第1位-
身近に潜む子どもの事故(2)-2021年米国における「不慮の事故(傷害)」での死亡数は22万人超、夏季にリスク増大、1歳-24歳で死因順位第1位-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛
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1――はじめに
そこで、前稿(第1稿)では1、保護者や子どもを取り巻く大人たちに事故予防の重要性を認識してもらうことを目的に、厚生労働省の人口動態統計データを用いて子どもの事故の特徴を捉え概観した。
その結果、「不慮の事故」による死亡者数は大幅な減少が認められるものの、子どもの死因別順位では、0歳から19歳の年齢層全てにおいて「不慮の事故」が4位以内に入ることが明らかになった。
本稿では、CDCが公表する傷病レポートのデータから、2020年米国の家庭における不慮の事故の特徴を概観する。
尚、第3稿では、ICD-10の疾病分類で整理した、家庭における不慮の事故の詳細を日米比較し、その結果明らかとなった特徴を示す予定である。
1 乾 愛 基礎研レポート「身近に潜む子どもの事故(1)」(2023年6月6日)
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75033?site=nli
2――CDCの統計データから捉える、米国の不慮の事故の特徴
まず、CDCが公表している米国における死亡者数の統計データの中から、死因が「不慮の事故」である死亡者数のみのデータを抽出し図表1-1へ示し、2018年から2021年までの月別死亡者数を図表1-2へ示した。
その結果、「不慮の事故」を死因とする死亡者数は、2018年に167,127人であったのに対し、年々増加の一途をたどり、2021年には224,935人へ増加していることが分かる。
また、2018年から2021年の月別の不慮の事故による死亡者数をみると、2月頃には死亡者数が少なく、7月頃をピークに不慮の事故による死亡者数が増大する図形を示すことが明らかとなった。
不慮の事故による月別の死亡者数のデータは、日本の人口動態統計では公表されていないが、日本の統計データの特徴からも、行動範囲が拡大する年齢において死亡者数の増加が懸念されることから、米国においても、社会活動や行動が活発となる(学生は学年間休暇時期にあたる)時期と不慮の事故による死亡リスクとの関連性が推察される結果となっている。
次に、CDCの傷病関連の統計レポートから、年齢階級別、死因別順位に関する統計データを抽出し、図表2-1へ示した。(上述の2021年の詳細データが反映されていなかったことから2020年データを用いた。)
その結果、2020年の米国における死因第1位は心疾患(Heart Disease)で1年間の死亡者数は、12,798,072人(39.1%)と分かった。第2位の死因は、悪性新生物(Malignant Neoplasms)で1年間の死亡者数は、11,541,940人(35.3%)、第3位の死因は、脳血管疾患(Cerebrovascular)で1年間の死亡者数は、2,849,575人(8.7%)、第4位の死因は、慢性的な低血圧及び呼吸器疾患(Chronic Low. Respiratory Disease)で、1年間の死亡者数は、2,817,859人(8.6%)、第5位の死因が、不慮の事故となり、1年間の死亡者数は、2,693,182人(8.2%)であることが明らかとなった。
一方で、日本の死因第3位には、米国では認められない老衰が死因の第3位に挙げられていることから、日本の高齢社会特有の死因として構造の違いが認められる。
次に、子どもの年齢階級が含まれる0歳以上、15歳-24歳の年齢階級にデータを絞り、図表2-2へ示した。
不慮の事故の死因順位に焦点を当てると(青マーカー)、0歳では死因の第5位、1歳から4歳では第1位、5歳から9歳でも第1位、10歳から14歳でも第1位、15歳から24歳でも第1位を占めていることが明らかとなった。
この特徴は、日本の0歳から19歳の年齢階級別死因順位が全てトップ4に入っていた傾向と合致する。
年齢階級区分が日本のデータと一致していないため単純に比較することはできないが、米国でも、0歳以外、1歳以降の子どもの年齢が含まれる階級において、不慮の事故(傷病)が死因順位の上位にランクインする傾向が認められるのである。
文化や環境が異なることを考慮すると、人間としての発達段階が不慮の事故の発生リスクに影響を及ぼしている可能性が否定できないことが示唆されている。
3――まとめ
その結果、米国の「不慮の事故」を死因とする死亡者数は、2018年に167,127人であったのに対し、年々増加の一途をたどり、2021年には224,935人へ増加していた。米国では月別の死亡者数が7月の夏季にピークを迎え増大し、2月に減少傾向が認められることから、社会活動や行動範囲の拡大と不慮の事故との関連性が示唆される結果となった。
また、2020年の米国における死因順位の第5位に不慮の事故が位置しており、1年間の死亡者数は、2,693,182人(8.2%)にのぼり、日米に共通して、疾患を除いた死因として唯一、不慮の事故(傷病)が死因順位の上位を占めることが明らかとなった。
さらに、子どもの年齢層を含む0歳から24歳までの不慮の事故による死亡順位を整理すると、0歳では第5位、1歳-24歳までの年齢階級の全てにおいて死因の第1位を占めていることが明らかとなった。
これらの結果は、日本の子どもの年齢階級における死因順位とも合致しており、文化や環境が異なることを考慮しても、子どもが含まれる年齢層において不慮の事故による死亡リスクが、他の年齢階級よりも高く、特徴的であることが示唆されている。
(2023年06月08日「基礎研レポート」)
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03-3512-1847
- 【職歴】
2012年 東大阪市入庁(保健師)
2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
2019年 ニッセイ基礎研究所 入社
・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)
【資格】
看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者
【加入団体等】
日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会
乾 愛のレポート
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