2023年05月26日

日本の子どもの性被害(1)-児童買春や淫行罪は懲役と罰金の併科あり、居住自治体の青少年保護条例は要チェック!性被害によるPTSDは生涯続く-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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■要旨

本稿では、子どもの性被害に関する定義を関連法令や条例を用いて整理し、子どもの性被害による身体的、精神的影響についてまとめた。

子どもの性被害に関連する法令には、児童買春・児童ポルノ禁止法や児童福祉法が存在しており、規定に違反すると懲役か罰金、もしくはその両方の併科が課される重罪である。

また、子どもの性被害に関する地方自治体の条例として青少年保護(健全育成)条例が存在しており、青少年の夜間外出の制限や性的に刺激する情報の提供を回避する責務を求めることなどは全国で共通するものの、具体的に教育機関で人権教育や性教育を組み込み、性被害者の支援について具体的に明記するなど、各自治体での工夫が認められる条例も存在している。

今一度、居住地域の条例内容を確認することで、自身が不適切な情報提供に加担していないか等を見直す機会にしていただきたい。

さらに、子どもの性被害に関する身体的影響では、性器周りの損傷に留まらず、長期的な言動を観察しケアする必要があること、精神的な影響では、日常生活や成人後の社会生活にも長期的な人生に影響を及ぼし兼ねないストレス障害等が生じる可能性があることを認知して欲しい。

次稿では、本稿で整理した子どもの性被害に関する法令に基づき分類された罪種別の被害児童人数等の実態を分析する予定である。

■目次

1――はじめに
2――関連法令や条例から分かる子どもの性被害とは?
  2-1|児童買春の定義と罰則
  2-2|児童福祉法の淫行罪は重罪、懲役と罰金の併科あり
  2-3|意外と知らない居住地の青少年保護条例
3――子どもの性被害による身体的・精神的影響
  3-1|身体的影響
  3-2|精神的影響
4――まとめ

(2023年05月26日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

経歴
  • 【職歴】
    2012年 東大阪市入庁(保健師)
    2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
    2019年 ニッセイ基礎研究所 入社

    ・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
    ・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
    ・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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