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2025年10月02日

プレコンセプションケア 自治体の炎上事例から学ぶリスク管理-科学的エビデンスと推奨モデルは区別し、性と健康の自己決定権を侵害しない内容構成が必要-

生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任 乾 愛

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■要旨

本稿では、自治体の批判・炎上事例から自治体のリスク管理の視点を示した。

秋田県の事例からは、(1)卵子の劣化を通し、女性の妊孕性の限界だけに焦点を当てていること、(2)女性の妊孕性の限界について、「危険性」という言葉を用いて、若い年齢で産むことを推奨する表現となっていること、(3)多様性が尊重される現代において、男性の草食化を揶揄し、肉食化を促していることなどの問題点が示された。

熊本県の事例では、卵巣予備機能検査を県職員の20歳代の未婚女性のうち希望する者に限定した点が問題視され、女性の妊孕性評価だけが際立ってしまう形となった。

これらの事例から学ぶべき点は、生物学的な既知の事実と少子化対策としての推奨モデルをきちんと区別した上で強要しているかのような表現にならないよう留意すること、性と健康の自己決定権に踏み入る表現とならないよう留意することである。

プレコンセプションケアに関する情報発信では、次世代の子どもたちの健康に影響を与えることや、将来の自分自身の人生の選択肢に影響を与えること強調した上で、現状の自分自身の健康状態に目を向ける必要性を訴えてもらいたい。


■目次

1――はじめに
2――日本のプレコンセプションケアに対する批判・炎上事例
  1|秋田県のプレコン冊子
  2|熊本県の卵巣予備機能検査
  3|その他自治体の情報発信内容
3――自治体のリスク管理の視点

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月02日「基礎研レター」)

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生活研究部   研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター 兼任

乾 愛 (いぬい めぐみ)

研究・専門分野
母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

経歴
  • 【職歴】
    2012年 東大阪市入庁(保健師)
    2018年 大阪市立大学大学院 看護学研究科 公衆衛生看護学専攻 前期博士課程修了(看護学修士)
    2019年 ニッセイ基礎研究所 入社

    ・大阪市立大学(現:大阪公立大学)研究員(2019年~)
    ・東京医科歯科大学(現:東京科学大学)非常勤講師(2023年~)
    ・文京区子ども子育て会議委員(2024年~)

    【資格】
    看護師・保健師・養護教諭一種・第一種衛生管理者

    【加入団体等】
    日本公衆衛生学会・日本公衆衛生看護学会・日本疫学会

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