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図表でみる世界の出生率-出生率が高い国・地域と低い国・地域、それぞれにどんな特徴があるのか?

三尾 幸吉郎
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- 現在日本の合計特殊出生率は、国連が公表した「World Population Prospects 2024」によると1.217人(2024年)であり、人口を長期的に維持するために必要とされる「人口置換水準」を大幅に下回る状況にある。そして日本の人口は、合計特殊出生率が人口置換水準を下回った後もしばらくは、栄養、衛生、医療などの改善により増加を続けていたが、2010年をピークに減少に転じている。
- 一方、世界平均の合計特殊出生率は、日本と同様にじりじり低下しており、現在は2.248人(2024年)である。但し、人口置換水準を上回る水準にあることなどから、世界全体の人口は引き続き右肩上がりで増えている。経済発展度を示す一人当たりGDPと合計特殊出生率の関係を見ると、両者は「逆相関」に近い関係にある。但し、経済的に豊かな欧米や近隣アジアの場合は、一人当たりGDP以外の要因で合計特殊出生率が決まっている。
- 欧米諸国で合計特殊出生率の高い国は、ルーマニア、フランス、米国など、経済・制度面の対策に加えて、「子だくさん」を肯定的に評価する家族観の国が多い。他方、合計特殊出生率が低い国は、戦時下にあるウクライナ、「マンマ文化」と呼ばれる母親を中心とした家族観を持つイタリアやスペインなどである。かつて「少子化対策の模範」として注目を浴びたスウェーデンなど北欧諸国は一時的に大きく改善したものの、現在は失速している。
- 近隣アジアに注目すると、韓国は0.734 人、台湾は0.863人、中国は1.013人と、いずれも日本より低い。韓国や台湾では経済・制度面での対策を積極化しているものの、「子は少なくても質を高く育てる」といった家族観が合計特殊出生率の改善を阻む要因となっている。中国では長年に渡る一人っ子政策で「子どもは一人で十分」という家族観が定着したことが改善を阻む要因となっており、国連予測では50年後に10億人を割り込む見通し。
- 世界を見渡して出生率が高い国・地域と低い国・地域、それぞれにどんな特徴があるのかをみると、経済・制度面の少子化対策に加えて「子だくさん」を肯定的に評価する家族観を持つ国・地域の合計特殊出生率は相対的に高く、経済・制度面の少子化対策をしていても「女性は家庭で子育てを担うもの」との家族観が根強い国・地域は相対的に低い。このように出生率の高低を決める要因は、経済発展度や経済・制度面の少子化対策に加えて、文化面の影響も大きいと言えそうである。
■目次
1――低迷する日本の出生率
2――世界の出生率~少子化に悩む国・地域を中心に
1|世界の出生率(概観)
2|日本より出生率の高い国が多い欧米
3|日本より出生率の低い国・地域が多い近隣アジア
3――おわりに
(2025年10月01日「基礎研レター」)
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