2023年05月15日

英国GDP(2023年1-3月期)-前期比0.1%、小幅だがプラス成長を維持

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:小幅ながら前期比プラスを維持

5月12日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2023年1-3月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は0.1%、予想1(0.1%)と一致し、前期(0.1%)と一致した(図表1)
前年同期比は0.2%、予想(0.2%)と一致し、前期(0.6%)から減速した

【月次実質GDP(1-3月)】
前月比は1月0.5%、2月0.0%、3月▲0.3%となり、3月は予想(0.0%)を下回りマイナスとなった。

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:サービス業を中心にストライキが成長率の重しに

英国の23年1-3月期の実質成長率は前期比0.1%(年率換算0.5%)となり、10-12月期と同じプラスの成長率(前期比0.1%)を維持した。22年7-9月期(前期比▲0.1%)はマイナス成長だったが、2四半期連続のプラス成長となった。ただし、23年1-3月期の実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて▲0.5%となり、他の欧州各国と比較して回復が遅れている(図表2)。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPで単月の状況を見ると、1月は前月比0.5%、2月は同0.0%、3月は同▲0.3%とここ3か月では月を追うごとに成長率が下がっている(図表3)。

部門ごとの動向を見ると、生産部門はコロナ禍後に急回復したのち緩やかに低下、昨年8月以降は横ばいで推移している。サービス部門は22年以降、一進一帯の動きが続いている。一方で建設部門は緩やかな改善が続いている。
より細かい産業別の動向を確認すると(図表4)、1-3月期は農林水産部門が前期比0.1%、生産部門が同0.1%、建設部門が同0.7%、サービス部門が同0.1%となった。より細かい産業では、鉱業(前期比▲5.0%)、輸送サービス(▲1.0)政府サービス(▲0.7%)、教育サービス(▲0.7%)といった産業の落ち込みが目立った。このうち、サービス業はストライキによる生産減の影響も受けている。一方、事務サービス(1.3%)、情報・通信(1.2%)、製造業(0.5%)が高めの伸び率を記録、成長をけん引した。
(図表4)業種別のGDP前期比伸び率とコロナ禍前水準
成長率を需要項目別に確認すると、1-3月期は個人消費が前期比0.1%(10-12月期0.2%)、政府消費が▲2.5%(前期0.5%)、投資が1.3%(前期0.3%)、輸出が▲8.1%(前期▲1.4%)、輸入が▲7.2%(前期▲0.2%)となった。純輸出の前期比寄与度は▲0.22%ポイント(前期▲0.38%ポイント)だった。高インフレによる個人消費の伸び悩みが見られるほか、ストライキの影響もあり、政府消費が大幅に落ち込んでいる。一方、投資については高金利を受けて住宅投資は落ち込んでいるものの、設備投資等が下支えする結果となった。
(図表5)英国のGDPとデフレータ伸び率 名目GDPは1-3月期の前期比で1.0%(10-12月期は2.0%)、前年同期比で6.6%(前期7.9%)、デフレータは前期比0.9%(前期1.9%)、前年同期比6.3%(前期7.3%)となり、小幅だがデフレータが減速した(図表5)。また、名目GDPを所得別に見ると、税・補助金が前期比▲21.7%(前期▲10.9%)と急減、雇用者報酬は0.6%(前期1.6%)と微増、営業余剰が同10.8%(前期8.5%)と増加した。前期に続き、財政措置(税・補助金の減少)によって民間所得が維持され、特に営業余剰が押し上げられている構図となっている。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年05月15日「経済・金融フラッシュ」)

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