英国雇用関連統計（23年3月）－失業率は微増だが、雇用環境は依然底堅い　|ニッセイ基礎研究所

1．結果の概要：失業率はやや上昇したが、名目賃金伸び率は高止まり

4月18日、英国国家統計局（ＯＮＳ）は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった。

【3月】
・失業保険申請件数¹は前月（149.92万件）から2.82万件増の152.74万件となった（図表1）。
・申請件数の雇用者数に対する割合は3.9％となり、前月（同3.8％）からやや増加した
・給与所得者数²は前月（2968.79万人）から3.1万人増の2999.93万人となった。
増減数は前月（+3.9万人）から減少し、市場予想³（+4.8万人）も下回った。

【2月（22年12-23年2月の3か月平均）】
・失業率は3.8％で前月（3.7％）からやや上昇、市場予想（3.7％）を上回った（図表1）。
・就業者は3295.0万人で3か月前の3278.1万人から16.9万人の増加となった。
増減数は前月（6.5万人）から増加し、市場予想（5.0万人）も上回った。
・週平均賃金は、前年同期比5.9％で前月（5.9％）から横ばい、市場予想（5.1％）を上回った（図表2）。

¹ 求職者手当（ＪＳＡ：Jobseekerʼs Allowance）、国民保険給付（National Insurance credits）を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット（ＵＣ）を受給している者の推計数の合算。なお、ＵＣはＪＳＡより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ＯＮＳは失業保険等申請件数について公式統計とはしておらず実験統計という位置付けで公表している。ただし、公表日の前月のデータを入手できるため、速報性の高さという利点がある。
² 歳入関税庁（ＨＲＭＣ）の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85％のデータから推計（22年7月から推計方法変更）。
³ bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2．結果の詳細：名目賃金は足もと公的部門の伸び率加速が顕著

まず、3月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数は23年1-3月の平均で110.5万件となり22年3-5月平均（130.6万件）をピークに減少傾向が続いており（図表3）、産業別にも引き続き幅広い業種で求人が減少している。ただし、減少ペースはやや緩やかになっている。単月求人数は3月に106.8万件となり、4か月連続で100万件台となった⁴。

給与所得者データでは、3月の給与所得者数は製造業や建設業、卸・小売業が前月比でマイナスとなる一方、事務・支援や居住・飲食、医療サービス増加し、全体でも増加した（図表4）。3月の月あたり給与額（中央値）は前年同月比6.3％で2月（7.4％）から伸び率が鈍化した。

2月までのデータ（労働力調査）を確認すると、失業率は3.8％と微増した。就業者も増加したが、非労働力人口がそれ以上に減少し、失業者が増加した。労働参加率は63.5％まで上昇し、コロナ禍後のピークを更新した。非労働力人口の減少は年齢別には16-24才の若年層、理由別には「学生のため」とした人での減少が目立つ。

労働時間は、31.9時間（前年同期差±0.0時間）、フルタイム労働者で36.6時間（同±0.0時間）となった。週当たり総労働時間はコロナ禍前ピーク（19年8-10月）から0.5％低い水準となり、フルタイム労働者の労働時間もコロナ禍後のピーク水準まで回復した（前掲図表2）。

賃金は、名目賃金が22年12-23年2月の前年同期比で5.9％、実質賃金は▲3.0％でいずれも横ばいで推移している（前掲図表2）。なお、定期賃金に限っても前年同期比6.6％と高水準であり、昨年末以降は公的部門の賃金上昇率が急加速している（図表5）。

2月の労働損失日数は、処遇改善を求めたストライキにより34.7万日と高水準が続いている。特に件数ベースでは600件を超えた（図表6）。相対的に公的部門でのストライキが多いが2月は民間部門も労働損失日数は10.8万日（全体の31％）と1月（0.8万日）から増加した。

⁴ 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。

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