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- IMF世界経済見通し-見通しの修正は小幅だが、リスクは下方に傾く
2023年04月12日
1.内容の概要:23年・24年ともに小幅な下方修正
2.内容の詳細:金融部門のぜい弱性顕在化でリスクは下方に傾く
IMFは、今回の見通しを「不安定な回復(A Rocky Recovery)」と題して作成した1。
世界経済成長率(ベースライン)は、今年23年と来年24年が若干下方修正された(23年2.9(改訂前)→2.8%(改訂後)、24年3.1→3.0%)。また、インフレ率は23年・24年ともに上方修正されている(23年6.6→7.0%、24年4.3→4.9%)。
IMFは、23年初めはインフレ鎮静化と成長安定という軟着陸に成功する兆しが一時的に見られたが、インフレの高止まりと金融部門の混乱でこの兆しは消えつつあると評価している。また、成長率は中期的に3.0%で落ち着くと予想されているが、これは数十年ぶりの低水準であるとしている。インフレ率については、一次産品下落を背景に総合指数は鈍化するものの、労働市場のひっ迫は続いており、基調的なインフレ率の鈍化ペースはより遅く、大半の場合、インフレ率が目標水準に戻るのは25年以降になると見られる、と指摘している。なお、ベースライン見通しでは、金融部門のひっ迫が拡大しないことを前提にしており、インフレ率に関しては賃金・物価の上昇スパイラルが定着する兆しはないと分析している。
世界経済成長率(ベースライン)は、今年23年と来年24年が若干下方修正された(23年2.9(改訂前)→2.8%(改訂後)、24年3.1→3.0%)。また、インフレ率は23年・24年ともに上方修正されている(23年6.6→7.0%、24年4.3→4.9%)。
IMFは、23年初めはインフレ鎮静化と成長安定という軟着陸に成功する兆しが一時的に見られたが、インフレの高止まりと金融部門の混乱でこの兆しは消えつつあると評価している。また、成長率は中期的に3.0%で落ち着くと予想されているが、これは数十年ぶりの低水準であるとしている。インフレ率については、一次産品下落を背景に総合指数は鈍化するものの、労働市場のひっ迫は続いており、基調的なインフレ率の鈍化ペースはより遅く、大半の場合、インフレ率が目標水準に戻るのは25年以降になると見られる、と指摘している。なお、ベースライン見通しでは、金融部門のひっ迫が拡大しないことを前提にしており、インフレ率に関しては賃金・物価の上昇スパイラルが定着する兆しはないと分析している。
IMFは、今回の見通しでリスクは下方に偏っていると評価している。
具体的には、下振れリスクとして「世界的な金融環境のひっ迫の深刻化」(信用創造減少とその波及効果)「債務の積み上がりによる金融引き締めの影響増」(債務返済コストの上昇)「インフレの長期化」(労働市場のひっ迫による賃金の予想を上回る伸び)「新興国・途上国における政府債務問題」「中国の成長鈍化」(不動産市場の低迷など)「ウクライナでの戦争激化」(ガス需給や穀物供給懸念など)「分断による多国間協力の阻害」(経済のブロック化に伴う貿易・労働・資本移動への障壁)を挙げている。
一方、上振れリスクとして、「過剰貯蓄と労働市場ひっ迫による需要押し上げ」(ただし、インフレ対応は複雑化)「供給制約緩和と求人率減少による景気の軟着陸」(失業率上昇の回避)を挙げている。
IMFはこうした下方リスク、特に世界的な金融環境のひっ迫が深刻化するリスクに関連して、(上記の「妥当な代替シナリオ」とは別に、より悲観的な)リスクシナリオを提示している。
具体的には「①信用収縮」「②株価下落」「③ドル資産への逃避」「④景況感低下」が発生した場合のGDPとインフレ率への影響を試算しており、すべての影響を合計すると、世界のGDP水準はベースラインと比較して23年に1.8%低下すると見積もられている(図表5)。なお、この下方シナリオではインフレ率は世界全体で0.9%押し下げられ、政策金利もベースラインより低くなる。
また、これとは別の方法を用いて成長率とインフレ率の見通しの不確実性を試算しており、深刻な信用危機や複合危機が起こり得る2%以下の成長率まで減速する可能性が25%と、平時の倍の確率になっており(図表6)、同様の手法でインフレ率の不確実性は短期的に上方に傾いていることを指摘している。
具体的には、下振れリスクとして「世界的な金融環境のひっ迫の深刻化」(信用創造減少とその波及効果)「債務の積み上がりによる金融引き締めの影響増」(債務返済コストの上昇)「インフレの長期化」(労働市場のひっ迫による賃金の予想を上回る伸び)「新興国・途上国における政府債務問題」「中国の成長鈍化」(不動産市場の低迷など)「ウクライナでの戦争激化」(ガス需給や穀物供給懸念など)「分断による多国間協力の阻害」(経済のブロック化に伴う貿易・労働・資本移動への障壁)を挙げている。
一方、上振れリスクとして、「過剰貯蓄と労働市場ひっ迫による需要押し上げ」(ただし、インフレ対応は複雑化)「供給制約緩和と求人率減少による景気の軟着陸」(失業率上昇の回避)を挙げている。
IMFはこうした下方リスク、特に世界的な金融環境のひっ迫が深刻化するリスクに関連して、(上記の「妥当な代替シナリオ」とは別に、より悲観的な)リスクシナリオを提示している。
具体的には「①信用収縮」「②株価下落」「③ドル資産への逃避」「④景況感低下」が発生した場合のGDPとインフレ率への影響を試算しており、すべての影響を合計すると、世界のGDP水準はベースラインと比較して23年に1.8%低下すると見積もられている(図表5)。なお、この下方シナリオではインフレ率は世界全体で0.9%押し下げられ、政策金利もベースラインより低くなる。
また、これとは別の方法を用いて成長率とインフレ率の見通しの不確実性を試算しており、深刻な信用危機や複合危機が起こり得る2%以下の成長率まで減速する可能性が25%と、平時の倍の確率になっており(図表6)、同様の手法でインフレ率の不確実性は短期的に上方に傾いていることを指摘している。
最後に、今回の見通しでは特集として化石燃料の生産が減少した場合の経済への影響を分析している。
具体的には資源ブームが、資源国の為替相場上昇を通じて製造業の発展を妨げ、制度の質を低下させることがある(「資源の呪い」「オランダ病」)が、その逆のショックが生じた場合の影響について調査されている。
結果としては、化石燃料の生産減少は資源国のGDPを押し下げるとともに、特に、中小の製造業は為替相場の下落によるプラスの効果以上のマイナス効果を受ける事、制度の質については改善することはなく、資源ブームのショックとは非対称な影響が生じる事が指摘されている。
1 同日に「世界経済の回復は続くが、道のりは険しいものに(Global Economic Recovery Endures but the Road Is Getting Rocky)」との題名のブログも公表している。
具体的には資源ブームが、資源国の為替相場上昇を通じて製造業の発展を妨げ、制度の質を低下させることがある(「資源の呪い」「オランダ病」)が、その逆のショックが生じた場合の影響について調査されている。
結果としては、化石燃料の生産減少は資源国のGDPを押し下げるとともに、特に、中小の製造業は為替相場の下落によるプラスの効果以上のマイナス効果を受ける事、制度の質については改善することはなく、資源ブームのショックとは非対称な影響が生じる事が指摘されている。
1 同日に「世界経済の回復は続くが、道のりは険しいものに(Global Economic Recovery Endures but the Road Is Getting Rocky)」との題名のブログも公表している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年04月12日「経済・金融フラッシュ」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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