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- インドネシア経済:23年1-3月期の成長率は前年同期比+5.03%~輸出鈍化も消費が堅調、6期連続の5%成長に
2023年05月08日
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インドネシアの2023年1-3月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.03%増(前期:同5.01%増)と小幅に上昇、また市場予想2(同+4.97%)を上回る結果となった。
1-3月期の実質GDPを需要項目別に見ると、輸出の好調と堅調な消費が成長の牽引役となった(図表1)。
民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比4.54%増(前期:同4.48%増)と小幅に上昇した。費目別に見ると、引き続き輸送・通信(同7.84%増)とホテル・レストラン(同5.88%増)が堅調に拡大した一方、食料・飲料(同3.46%増)や住宅設備(同2.77%増)、保健・教育(同2.58%増)が伸び悩んだ。
政府消費は前年同期比3.99%増(前期:同4.77%減)となり、5四半期ぶりに増加した。
総固定資本形成は前年同期比2.11%増(前期:同3.33%増)と鈍化した。過去2年間、二桁成長が続いた機械・設備投資(同4.62%増)が鈍化したほか、建設投資(同0.11%増)が停滞した。
純輸出は成長率寄与度が+2.10%ポイント(前期:+2.17%ポイント)となり、大幅なプラス寄与となった。まず財・サービス輸出は前年同期比11.68%増と、大幅な伸びが続いたものの、前期の同14.93%増から鈍化した。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同60.36%増)は大幅な伸びが続いたが、財輸出(同9.26%増)は増勢が鈍化した。また財・サービス輸入も同2.77%増(前期:同6.25%増)と鈍化し、輸出を下回る伸びとなった。
供給項目別に見ると、引き続き第三次産業の拡大が成長の牽引役となった(図表2)。
第三次産業は前年同期比6.08%増(前期:同6.95%増)と鈍化したものの、堅調に拡大した。内訳を見ると、ホテル・レストラン(同11.55%増)や運輸・倉庫(同15.93%増)の二桁成長が続き、その他サービス(同8.90%増)や情報・通信(同7.19%増)、ビジネスサービス(同6.37%増)も堅調に拡大した。また構成割合の大きい卸売・小売(同4.89%増)は底堅い成長が続いたが、教育サービス(同1.02%増)や行政・国防(同2.09%増)、金融・不動産(同2.77%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比3.42%増(前期:同4.66%増)と鈍化した。内訳を見ると、全体の2割を占める製造業(同4.43%増)と鉱業(同4.92%増)は堅調な伸びを維持したが、建設業(同0.32%増)と電気・ガス・水供給業(同2.67%増)が伸び悩んだ。
第一次産業は前年同期比0.34%増(前期:同4.51%増)と低下した。
1 2023年5月5日、インドネシア統計局(BPS)が2023年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
第三次産業は前年同期比6.08%増(前期:同6.95%増)と鈍化したものの、堅調に拡大した。内訳を見ると、ホテル・レストラン(同11.55%増)や運輸・倉庫(同15.93%増)の二桁成長が続き、その他サービス(同8.90%増)や情報・通信(同7.19%増)、ビジネスサービス(同6.37%増)も堅調に拡大した。また構成割合の大きい卸売・小売(同4.89%増)は底堅い成長が続いたが、教育サービス(同1.02%増)や行政・国防(同2.09%増)、金融・不動産(同2.77%増)は伸び悩んだ。
第二次産業は前年同期比3.42%増(前期:同4.66%増)と鈍化した。内訳を見ると、全体の2割を占める製造業(同4.43%増)と鉱業(同4.92%増)は堅調な伸びを維持したが、建設業(同0.32%増)と電気・ガス・水供給業(同2.67%増)が伸び悩んだ。
第一次産業は前年同期比0.34%増(前期:同4.51%増)と低下した。
1 2023年5月5日、インドネシア統計局(BPS)が2023年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査
1-3月期GDPの評価と先行きのポイント
インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の正常化により2022年の成長率が前年比+5.31%(2021年:同3.70%増)と上昇するなど景気回復が続いている。今回発表されたGDP統計では、2023年1-3月期の実質GDP成長率(前年同期比+5.03%)が6四半期連続で5%を上回る成長となり、順調な成長が続いていることが明らかとなった。
1-3月期は財・サービス輸出(同+11.68%)が二桁成長となり、引き続き景気の牽引役となった。特にサービス輸出(同+60.36%)はインバウンド需要の回復により大幅な増加が続いている。インドネシアでは昨年3月以降、入国規制が大きく緩和されており、今年3月の外国人旅行者数は81万人(コロナ禍前の60%の水準)まで回復している(図表3)。また財貨輸出(前年同期比+9.26%)は増勢が鈍化したものの、好調を維持した。国際商品市況は昨年頭打ちした後も高止まりしており、資源輸出国であるインドネシアの交易条件は改善、貿易を通じて海外からの所得流入が進み、内需の下支えとなっている。
GDPの半分以上を占める民間消費(同+4.54%)は昨年の一連の行動制限の緩和によりコロナ前の生活に近づいていくなか旅行関連支出が拡大するなど底堅く推移している。また23月2月の失業率は5.45%となり、22年8月の5.86%から低下しており、雇用所得環境の改善が消費の拡大に繋がったとみられる。もっとも、民間消費は5%程度だったコロナ禍前の成長ペースには達しておらず、高インフレと中銀の金融引き締めは民間消費の重石となっているものとみられる。
このほか、投資(前年同期比+2.11%)は機械・設備投資が減速して過去2年間で最も低い伸びとなった。
このように1-3月期は投資と財貨輸出が鈍化した一方、観光業の回復や雇用環境の改善に伴う民間消費の拡大に支えられて5%の成長率を保った。しかし、今後はこれまで景気の牽引役であった輸出が米国の景気後退リスクの高まりや商品市況の調整、中国の豪州産石炭の禁輸解除といった外部環境の悪化により減速するものと予想され、景気の押し上げ効果は弱まるとみられる。
一方、内需は民間消費の堅調な拡大が予想される。観光業の回復や雇用環境の改善による家計支出の増加が続くほか、足元ではインフレ率が落ち着き始めており(図表4)、消費者マインドも上昇傾向にある。さらに来年2月には大統領選挙を控えており、今年後半には選挙関連支出によるGDPの押し上げが見込まれる。金融政策は今年2月以降インフレのピークアウトを受けて利上げサイクルが停止しており、今後景気減速リスクが高まる局面では金融緩和を実施して景気の下支えを図る展開も予想される。以上より、インドネシア経済は輸出が減速する見通しながらも内需にけん引されて底堅い成長を維持するだろう。
1-3月期は財・サービス輸出(同+11.68%)が二桁成長となり、引き続き景気の牽引役となった。特にサービス輸出(同+60.36%)はインバウンド需要の回復により大幅な増加が続いている。インドネシアでは昨年3月以降、入国規制が大きく緩和されており、今年3月の外国人旅行者数は81万人(コロナ禍前の60%の水準)まで回復している(図表3)。また財貨輸出(前年同期比+9.26%)は増勢が鈍化したものの、好調を維持した。国際商品市況は昨年頭打ちした後も高止まりしており、資源輸出国であるインドネシアの交易条件は改善、貿易を通じて海外からの所得流入が進み、内需の下支えとなっている。
GDPの半分以上を占める民間消費(同+4.54%)は昨年の一連の行動制限の緩和によりコロナ前の生活に近づいていくなか旅行関連支出が拡大するなど底堅く推移している。また23月2月の失業率は5.45%となり、22年8月の5.86%から低下しており、雇用所得環境の改善が消費の拡大に繋がったとみられる。もっとも、民間消費は5%程度だったコロナ禍前の成長ペースには達しておらず、高インフレと中銀の金融引き締めは民間消費の重石となっているものとみられる。
このほか、投資(前年同期比+2.11%)は機械・設備投資が減速して過去2年間で最も低い伸びとなった。
このように1-3月期は投資と財貨輸出が鈍化した一方、観光業の回復や雇用環境の改善に伴う民間消費の拡大に支えられて5%の成長率を保った。しかし、今後はこれまで景気の牽引役であった輸出が米国の景気後退リスクの高まりや商品市況の調整、中国の豪州産石炭の禁輸解除といった外部環境の悪化により減速するものと予想され、景気の押し上げ効果は弱まるとみられる。
一方、内需は民間消費の堅調な拡大が予想される。観光業の回復や雇用環境の改善による家計支出の増加が続くほか、足元ではインフレ率が落ち着き始めており(図表4)、消費者マインドも上昇傾向にある。さらに来年2月には大統領選挙を控えており、今年後半には選挙関連支出によるGDPの押し上げが見込まれる。金融政策は今年2月以降インフレのピークアウトを受けて利上げサイクルが停止しており、今後景気減速リスクが高まる局面では金融緩和を実施して景気の下支えを図る展開も予想される。以上より、インドネシア経済は輸出が減速する見通しながらも内需にけん引されて底堅い成長を維持するだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年05月08日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1780
経歴
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
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