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- ECB政策理事会-利上げ幅は縮小したがタカ派的内容が目立つ
2023年05月08日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- ユーロ圏の銀行部門は、前回の会合前に発生した金融市場の緊張にもかかわらず、強靭である
- 我々の政策金利の引き上げは、無リスク金利、企業や家計、銀行の資金調達環境に強力に伝達されている
- 企業や家計向けの貸出伸び率は、借入金利の上昇、信用供給の厳格化、需要の低下により弱まっている
- 最新の銀行貸出動調査は、銀行が前回の調査で予想していたよりも信用基準が総じて厳格化しており、また今後、さらに弱まるかもしれないことを示唆している
- 貸出の弱さを受け、通貨伸び率は引き続き減少している
(結論)
- (声明文冒頭に記載の利上げと、金融政策スタンスへの再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 0.25%ポイントの利上げにペースを落とした根拠は何か
- 反応関数である、最新の経済・金融データに照らしたインフレ見通し、基調インフレ率の動向、金融政策の伝達の強さの基準をもとにデータを検証した
- インフレ見通しは、前回のベースライン見通しにほぼ一致している
- 基調インフレ率は依然として高い
- 銀行貸出調査によれば、金融政策は金融面には波及しているが、次の実体面への波及は確信が持てない
- これらを考慮すると、より標準的な利上げに戻ることが合理的であるが、カバーする領域はまだあり、我々は止まってはいない
- まだ終わっていない米国の地銀危機について。ユーロ圏への波及をどの程度懸念しているか
- (デギンドス氏)苦境にある米国銀行にはいくつかの特徴がある
- 中規模、地域的、シェアの集中と特異な事業モデル、金利リスクに対して無防備であること
- 欧州の銀行にはこうした状況はあてはまらないと見られる
- しかし、自己満足している暇はなく、急速に取り付けが起こり、銀行が空になることは驚きと言える
- デジタルバンキングやソーシャルネットワークが新しい状況をもたらしている
- これは近い将来、需要になると見られるため、監督・規制当局として、我々は新しい枠組みを念頭に置く必要がある
- より大幅な利上げや、将来の利上げへの明確な言及を主張した人はいたか。「カバーすべき領域」という示唆は、冬に使われた「安定したペース」で「数回の利上げ」という冬の表現ほど明確ではない
- 「さらにカバーすべき領域」について、我々はまだ旅の中間地点なのか、それとも最後の直線に差し掛かっているのか
- 何人かのメンバーは0.50%ポイントが適切とし、他のメンバーは0.25%ポイントが適切とした
- ゼロ%が適切とした意見はなかった
- しかし、討議後、みなさんの前にある決定には一般的で強い意見の一致がある
- 我々は旅の途中であり、立ち止まってはいない
- 「十分に制限的」についてもう少し詳しく教えて欲しい。IMFは先日、ターミナルレートが3.75%という見解を示した。多くのエコノミストもそのように考えている。現在のインフレ見通しを考えると、「十分に制限的」に入るのか
- 引き締め過ぎて逆行することについて。そのようなシナリオが政策の失敗と解釈されることを心配しているか
- 「十分に制限的」である魔法の数字はない
- その答えは、そこに到達した時に分かると思う
- 利上げの実体経済への伝達が見られておらず、完全な循環になっていない
- 制限的な領域であることに疑問はないが、まだ十分に制限的ではない
- ECBの債券ポートフォリオ縮小の加速について。APPの償還再投資停止は、APPを最終的にゼロにすることを意味しているのか
- まず、今回は「予定」の決定であり、それをした場合でも少なくとも今後15年はかかると見られる
- APPは時間をかけて段階的に、平均的には月250億ユーロずつ再投資されずに縮小される
- なお、償還再投資がない場合に、パリ協定に則した投資をどのように実施するかは未決定である
- 今回の0.50%ポイントから0.25%ポイントへの変更を説得するために、バランスシートの縮小ペースの加速の見返りを与える妥協の取引があったのか
- 取引ではない
- 市場の吸収力を前提に、この決定が合理的であり、現時点では正当であるというのが一般的な見解だった
- 銀行貸出調査について、銀行貸出の目標や信用厳格化の限界、あるいは注視している指標があるか
- クレディスイスの破綻に関連して、金融イベントがもたらす結果を計測する必要があると述べていたが、どのような指標を見ているのか。これは銀行危機と言えるのか。銀行システムに何が起きているという見解を持っているのか
- 我々の目標は1つだけで、中期的な2%目標のみである
- UBSとクレディスイスの合併が金融危機の兆候であるという結論を出すことは、まったくないだろう
- しかし、学びはあり、私はルールを持つことの価値を学んだと思う
- 債権者の序列を迅速に明らかにできたことは重要であり、破綻状況において超過債務を誰が負担するかを正確に知ることは、助けになる
- (デギンドス氏)我々が見ている指標は幅広く、例えば、株価、銀行債のスプレッド、預金の変化がある
- こうした指標に見られる緊張や、金融市場の潜在的なストレスについて欧州銀行は米国銀行より明らかに優れていると結論付けている
- データ依存と、さらに行動するという誓いを両立させる方法を説明して欲しい。フォワードガイダンスなきフォワードガイダンスのように少し矛盾しているのではないか
- データ依存はフォワードガイダンスではない
- 我々が、よりカバーすべき領域があると信じている、と述べているのは、本日時点での判断であり、フォワードガイダンスを用いず、非常に明確に言う事ができるし、データ依存である
- これからも金融政策の反応関数の3つの基準を利用しながら会合ごとに(meeting-by-meeting basis)決定を行うつもりである
- コアインフレ率について、コアインフレ率を注視することに疑いはないが、ECBの目標はあなたが先ほど述べたように中期的にヘッドラインインフレで2%である。過去、コアインフレ率はヘッドラインインフレ率の良い先行指標ではなかったのに、なぜコアインフレ率を強調するのか説明して欲しい
- 複数のインフレ指標を見て、インフレ動向がどのようになりそうなのかを理解しようとしている
- 我々の目標はヘッドライン率であり、戦略見直しで合意し、人々にとって重要なものである
- 食料品のインフレについて最悪期を過ぎたかどうか、多くの人が関心を持っている。そのような印象はあるか
- 「もちろんこれからも下がり続ける」と言えれば良いのだが(それはできず)、下がったことが観測されたのみである
- 商品価格が低下したのは事実であり、最終消費者まで波及することを願っている
- FRBが利上げを止めても、ECBが利上げを続けるというのがあなたのベースラインシナリオなのか
- 米国経済がどのように展開しても、その規模や金融市場の深さに鑑みれば、世界に波及する
- しかし、我々は目標があり、旅の途中であり、目標現在時点でカバーすべき領域がある
- 今後数週間、数か月においてFRBがどのような決定を下しても、もちろん様々な変数を考慮しつつ、目標に集中するつもりである
- 例えば為替に影響が及ぶなど波及効果は考慮するが、FRBに依存することはない
- QTやTLTRO満期が金融政策姿勢に加える引き締め効果の見積もりはあるか、何ポイントの利上げに相当するのか
- APPの縮小の引き締め効果について、数値をコミットしたくないが、あまり大きなインパクトはないと言えば十分だろう
- 厳密な数値を提供することはできるが、それほど大きくない
- あなたは旅が続いており、止まっていないと繰り返している。フィンランド、リトアニア、スペインではより高い金利に多くの家計が苦しみ、支出を削減しなければならない。利上げの際にどのようにこれらを考慮するのか
- 我々は、フィンランドからポルトガル、バルト三国からスペインまで変動金利での契約を保有する家計がおり、我々が決定した利上げの結果、返済のために苦しんでいることを認識している
- 一部の国では特別な措置や対策を実施し、いくつかの金融機関は返済猶予や延期を提供している
- 私は現時点で、どの時点の利下げもコミットすることはしない
- 来週の日本でのG7会合について。欧州の立場からこの会合で何を話題として提供する予定なのか
- 欧州の同僚とともに新しい総裁とともに新しい方向に向かっている日本から学びたいと考えている
- 私が就任した際に開始した戦略見直しから得た学びを彼と共有できたらうれしい
- カナダ、日本、米国の同僚に、欧州が引き続き強靭性を発揮し、協力して運営する力があることを引き続き証明するつもりであると説明したい
- 量的引き締めについて、QTについてよりカバーすべき領域があるのか、それともAPPの償還再投資の終了がQTの終了なのか理解したい。例えば、PEPPにも着手するのか、あるいは債券売却を行うのか、それが、QTが金融引き締めの手段としてどれだけ重要なのかを理解する助けになる
- QTについては、7月1日に実施する予定は、APPの償還再投資に関連したもののみである
- PEPPの再投資については24年まで何もしないというフォワードガイダンスがある
- TLTROについて、欧州の銀行システムが頑健で強靭であり、米国の銀行危機が終わったとしてもなお、TLTROは変な時期に終わる。6月の5000億ユーロの返済をやり過ごせるか心配しているか
- TLTROに関しては何の驚きもない
- 銀行に返済の加速、前倒しの機会を提供したことで、1兆ユーロを超える残高が発生するという崖効果(cliff effect)を避けられたと考えている
- 驚きではなく、期日が到来して返済が実施される
- 中央銀行が流動性供給を行うのは通常の仕事で、我々は常設ファシリティを有しており、それが再び利用されても驚かない
- 過去に何か起きた際に実証してきたように、新しい発明をすることもできる
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(2023年05月08日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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