2023年04月28日

確定拠出年金やNISAでは何に投資したら良いのか【2023年3月版】-国内債券型、国内株式型、外国株式型等でパフォーマンスを比較してみた

金融研究部 研究員 熊 紫云

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4――若い人は短期的な値動きをあまり気にせず、積極的にリターンが高い資産に投資すべきである

残りの投資期間が長い若い人が考えるべきこと
前述した通り、長期投資ではリターンは複利効果で累積的に大きくなっていくが、年率リターンは一定値に収束していく傾向がある。

過去のデータからも、投資期間が一番長い日本バブル崩壊直前から、金融商品ごとの2021年末までと2023年3月末までの年率リターンは、長期間の投資に、たった15か月のデータが加わるだけなので、ほぼ変わらなかった(図表4)。

一方、金融商品の年率リターンの差がたとえ数パーセントでも、投資期間が長くなれば最終積立金額はかなりの差となってしまう。各金融商品の年率リターンを比較すると、外国株式型が9%、国内債券型が2%と、年率リターンの差が7%とそれほど差がないと思うかもしれない。しかし、最終積立金額を見ると、外国株式型と国内債券型の最終積立金額に3,838万円もの差が生じている(図表7)。
 
従って、長期積立投資等で長期保有のメリットを十分享受できる残りの投資期間が長い若い人は、短期的なリターンの変動であるリスクに対して不安に思うかもしれないが、さほど怖がる必要性は小さい。短期的なリスクを恐れず、積極的に高いリターンが期待できる金融商品を選択する方が得策であると思う。
【図表7】最終積立金額(日本バブル崩壊直前~2023年3月末)
残りの投資期間が短い人が考えるべきこと
投資期間が長くなればなるほど年率リターンのばらつきが小さくなるという話をしてきたが、金額ベースで考える場合の資産残高のばらつきは、積み上げてきた資産残高が大きくなるほど、短期的なリスクによる資産残高への影響は大きくなってくる。

具体的なイメージで説明すると、日本バブル崩壊直前の1989年末の時に30歳だった人が外国株式型へ月々2万円積立投資を開始したとすると、2021年12月末に、そろそろ老後資金の取崩時期を向かえる62歳になっており、資産額が4,761万円とかなり成功裏に資産残高を積み上げることができている。
【図表8】最終積立金額(日本バブル崩壊直前から外国株式型へ投資する場合)
しかし、2022年から2023年3月までは激動の時期で、株価等が乱高下したため、2022年12月末と2023年3月末とでは、たった3か月の違いで、資産額は400万円以上も違う結果となった(図表8)。このように、老後資金取り崩しまでの残りの投資期間が短くなると、短期的なリスクが高い外国株式型のリスクにさらされることになる。また、長期的に積み上げてきた資産額が大きくなっていることもあり、金額的な変動も大きくなる。日々、明日起こるかもしれない大規模な金融ショックや株価暴落のリスクにもさらされていることになるので、ある程度満足できる資産額を積み上げているのであれば、外国株式型などリスクの高いポートフォリオから元本確保型等リスクの低いポートフォリオに移行すべきだと思う3
 
3 投資期間が短くなる場合の投資行動については基礎研レポート「老後のための2,000万円をどうやって確保するか」(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72144?site=nli)をご参照ください

5――結論

5――結論

確定拠出年金やNISAでは、残りの投資期間が長い若い人は、短期的なリターンの変動をあまり気にせず、外国株式などの高いリターンが期待できる資産により多く配分する方が得策だと考えている。毎月定額を積立投資する「ドルコスト平均法」は投資する資産が最終的に値上がりして、高いリターンとなるのであれば、短期的な値動きを味方にすることができるので、なおさらである。

但し、株式インデックスに長期間に亘って積立投資する場合も注意すべき点はある。株価暴落とかのニュースが流れて、資産残高が大きく下落しても、慌てて元本確保型などに入れ替え、損失を確定すべきではないということである。そのまま外国株式型などの積立投資を継続し、気長に株価の回復を待つことが大切であると思う。
 
もちろん、年齢が上がり、資産を取崩さなければならない時期までの残りの投資期間が短い場合は、株価が暴落した場合などに株価が回復するまで待てなくなる可能性が高くなる。このように、残りの投資期間が短くなると、短期的なリスクを抑える重要性が増えるので、リスクが高い金融商品を少しずつ、もしくは一部や全額を一括でバランス型や元本確保型に移行するなど、リスクの低いポートフォリオに移行した方が良い。
 
なお、最適なポートフォリオは投資期間が異なっても同じ、リスクの時間分散効果はないので投資期間が長くても株式等のリスクの高い資産の割合を大きくすべきではないという考え方もある。しかし、今回紹介している金融危機直前からの積立投資における過去の実績を見ると、たまたま結果がそうなっているだけという可能性はあるものの、個人の長期の資産形成においては、投資期間が長い場合、短期的なリスクが高くても、長期的に高いリターンが期待できる外国株式インデックスなどに積立投資した方が良いように思える。
 
自分の現在の収入および将来の収入見込み、年齢、健康状態、その他の財産状況等を踏まえて、現在の確定拠出年金やNISA等の資産配分状況を確認して、適切な資産配分かどうかを確認することをお勧めしたい。投資はあくまで自己責任だが、今回のレポートの内容が多少なりともお役に立てば幸いである。

【本レポートでの計算におけるデータ等について】
本レポートでの米国株式型、外国株式型、国内株式型、国内債券型は下記のインデックスを参照しており、低リスク型、中リスク型と高リスク型はバランス型投資信託の資産配分固定型の代表配分例を参考に、付表の配分として計算している。
付表:各金融商品の資産配分図
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2023年04月28日「基礎研レポート」)

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