- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- さくらレポート(2023年4月)~海外経済の減速により、輸出が低迷したことで製造業は悪化傾向だが、先行きは改善を見込む~
さくらレポート(2023年4月)~海外経済の減速により、輸出が低迷したことで製造業は悪化傾向だが、先行きは改善を見込む~
経済研究部 安田 拓斗
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.景気の総括判断は、全9地域中、東海で引き上げ、7地域で据え置き、東北で引き下げ
2.業況判断は地域ごとにばらつきが見られるが、先行きへの警戒感は強い
「地域別業況判断DI(全産業)」をみると、全9地域のうち4地域で改善、2地域で横ばい、3地域で悪化となった。全国では▲1ポイントの悪化となった。前回調査からの改善幅をみると、東北が+4ポイントと大きく、次いで北海道、四国が+2ポイントとなっている。九州・沖縄は+1ポイントと小幅な改善に留まった。東海、近畿は横ばいで、北陸、中国は▲1ポイント、関東甲信越は▲2ポイントとなった。業況判断は地域ごとにばらつきが見られるが、全体的に悪化に向かっている。
先行き(2023年6月)の景況感は、全9地域で悪化を見込んでおり、全国では▲3ポイントの悪化を見込んでいる。今回調査では+2ポイントの改善幅だった北海道だが、先行きの低下幅は▲8ポイントと最も大きくなっている。
全体的に先行きへの警戒感は強い。全国旅行支援の後押しを受けて人出が回復しているが、海外経済の減速、それに伴う輸出の低迷、世界的なインフレ、円安による輸入物価の上昇など景気の下振れリスクは残っていることが要因だ。今後も先行きを楽観視できない状況が続くだろう。
3.製造業の業況判断は悪化傾向だが、先行きは改善を見込む
製造業の業況判断DIは、全9地域のなかで改善した地域はなく、2地域で横ばい、7地域で悪化した。全国では▲6ポイントの悪化となった。海外経済の減速により輸出が低迷していることが全体の業況判断を押し下げている一因だろう。業種別には、石油・石炭製品が全体的に改善した。一方、木材・木製品、鉄鋼は多くの地域で悪化した。今回調査では、業種によりややばらつきはあるものの、全体として悪化に向かっている。
地域別には、改善幅がプラスの地域はなく、北陸、九州・沖縄が前回調査から横ばいになった。北陸では特に石油・石炭製品(+33ポイント)と、非鉄金属(+29ポイント)の改善幅が大きかった。九州・沖縄では特に繊維(+31ポイント)が大きく改善した。一方、北海道は前回調査から▲8ポイントの悪化と最も悪化幅が大きくなった。特に木材・木製品(▲18ポイント)、電気機械(▲15ポイント)の悪化幅が大きかったことが全体を押し下げた。
地域別には、四国で+7ポイントと最も大きな改善を見込んでおり、全国の業況感の先行きを押し上げている。特に紙・パルプ(+22ポイント)、木材・木製品(+18ポイント)で大幅な改善が見込まれている。一方、北海道、北陸では▲8ポイントと最も大きな悪化を見込んでいる。北陸は全体的に悪化する業種が多く、中でも鉄鋼(▲58ポイント)と石油・石炭製品(▲33ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。北海道は木材・木製品(▲36ポイント)と電気機械(▲28ポイント)で大幅な悪化が見込まれている。
なお、日銀短観3月調査では、2023年度の想定為替レート(全規模製造業ベース)が131.74円と、足もとの実勢(134円台)と比べて円高の水準を想定している。為替が現在の水準を維持し続ければ、製造業の景況感は上振れていくだろう。
4.非製造業の業況判断は改善傾向だが、先行きは悪化を見込む
地域別には、北海道、四国で+6ポイントと前回調査からの改善幅が最大となった。北海道では引き続き全国旅行支援の後押しを受けて人出が回復し、宿泊・飲食サービス(+32ポイント)と対個人サービス(+30ポイント)が大幅に改善した。四国においても人出の回復を受けて、小売(+17ポイント)、卸売(+14ポイント)が大きく改善した。近畿は、四国と同様に小売(+14ポイント)が大幅に改善し、前回調査からの改善幅が+4ポイントとなった。一方、東北、北陸は前回調査から▲2ポイントの悪化となった。東北、北陸ともに宿泊・飲食サービスが全体を押し下げた。前回調査では全国旅行支援によって宿泊・飲食サービスが押し上げられ、東北では+49ポイント、北陸では+67ポイントと極めて高かったが、今回調査では東北が▲18ポイント、北陸が▲40ポイントと前回調査の反動を受けて大きく悪化した。
地域別には、北海道、四国で▲8ポイントと大幅な悪化をみこんでおり、全国の業況感の先行きを押し下げている。北海道では、運輸・郵便(+9ポイント)が改善を見込んでいるものの、不動産(▲37ポイント)、宿泊・飲食サービス(▲23ポイント)、物品賃貸(▲15ポイント)などが大幅な悪化を見込んでいる。四国では、不動産・物品賃貸(▲25ポイント)、卸売(▲19ポイント)、建設(▲15ポイント)などが大幅な悪化を見込んでいる。
今回調査では、全体的に非製造業は改善傾向にあるが、先行きは、物価上昇に伴う国内消費の低迷など下振れリスクが残っていることから、悪化を見込んでいる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2023年04月20日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ
経済研究部
安田 拓斗
安田 拓斗のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2025/03/13 | 雇用を支える外国人労働者~受入れ拡大に備え、さらなる環境整備が求められる~ | 安田 拓斗 | 基礎研レポート |
| 2025/03/12 | 企業物価指数2025年2月~国内企業物価は2ヵ月連続で前年比4%台~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/03/03 | 宿泊旅行統計調査2025年1月~早期の春節の影響などから、中国人延べ宿泊者数が急速に回復~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
| 2025/02/13 | 企業物価指数2025年1月~国内企業物価の前年比上昇率は2023年6月以来の4%超~ | 安田 拓斗 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年11月04日
今週のレポート・コラムまとめ【10/28-10/31発行分】 -
2025年10月31日
交流を広げるだけでは届かない-関係人口・二地域居住に求められる「心の安全・安心」と今後の道筋 -
2025年10月31日
ECB政策理事会-3会合連続となる全会一致の据え置き決定 -
2025年10月31日
2025年7-9月期の実質GDP~前期比▲0.7%(年率▲2.7%)を予測~ -
2025年10月31日
保険型投資商品の特徴を理解すること(欧州)-欧州保険協会の解説文書
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【さくらレポート(2023年4月)~海外経済の減速により、輸出が低迷したことで製造業は悪化傾向だが、先行きは改善を見込む~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
さくらレポート(2023年4月)~海外経済の減速により、輸出が低迷したことで製造業は悪化傾向だが、先行きは改善を見込む~のレポート Topへ













